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カテゴリー: 対談・インタビュー, バイオ・BCG・農業, 食品・小売・サービス
連載: タイ企業経営者インタビュー
公開日 2026.03.05
タイにおける健康トレンドは以前から存在していたが、特にコロナ禍を経て、人々の健康意識は一層顕著に高まった。オーガニック食品ブランドである「オーカジュー(Ohkajhu)」はそうした絶好のタイミングで立ち上がり、同ブランドを展開するプルックパック・プローラックメーは、2024年10月にタイ証券取引所(SET)へ新規上場(IPO)した。
同社は、無農薬・有機野菜の栽培を行う「川上」、加工やセントラルキッチンを担う「川中」、そしてレストラン運営や配送を司る「川下」までを網羅する、垂直統合型の農業・サービスビジネスの先進的な事例だ。事業の核心にあるのは「オーガニック農業」への揺るぎないこだわりである 。
本稿では、プルックパック・プローラックメー(「母を愛するがゆえに野菜を植える」の意)の創業者兼最高経営責任者(CEO)である、チャラコーン・エーカチャイパッタナクン氏にインタビュー 。日本での学びから始まった創業の原点、PTTオイル・アンド・リテール・ビジネス(PTTOR)との戦略的提携 、地方農業の底上げを図るビジネスモデル、そして今後の持続可能な成長戦略について、詳しく話を聞いた。

目次
チャラコーン氏: 共同設立者であるジラユット・プーワプーンポンとは同じ高校の出身であり、われわれは共に農家の家庭で育ちました。大学卒業後には農業に関するビジネスを共に立ち上げたいという志を抱くようになりました。
2010年当時、われわれは「なぜタイの農家は産品の価格下落という問題に常に直面するのか」という疑問を抱いていました。そのような時、私は日本で研修を受ける機会があり、日本の農家の姿に深い感銘を受けたのです。彼らは農協のような組織を通じて強い団結力を持ち、地域ブランドを確立させていたため、経済的に豊かでした。こうした日本の強みをタイのビジネスに適用しようと考え、堆肥の管理方法など、3年間にわたる試行錯誤を経てデータを蓄積していきました。
創業当初は自家栽培のうち一部の販売のみを計画していましたが、チェンマイ県にある伝統的なタイ様式の家屋をモダンに改装し、2013年にオーカジューのレストラン第1号店を開業することに決めました。キッチンは高床式家屋の下にあるわずか9平方メートルの空間でしたが、われわれはホームメイドのレシピにこだわり、保存料を一切使わず、スープ、ソース、ドレッシングを自社で作っていました。
創業当時、見た目が良く管理も容易なハイドロポニックス※が市場で人気を博していましたが、私が自分の家族に食べさせるのであれば化学薬品を使用した野菜は選ばないと思い、オーガニックにこだわりました。オーガニック農業というコンセプトの根底にあるのは、家族への想いです。このコンセプトを主軸とし、現在、主力ブランドのオーカジュー45店舗を含め、グループ全体で77店舗を運営しています。
※土壌は用いず、培養液で植物を育てる方法。
チャラコーン氏:チェンマイ県で2号店を展開した際、バンコク進出に向けて物流システムやセントラルキッチンの基礎を学びましたが、ローカル店のバンコク進出は非常に大きな挑戦ででした 。大きな転換点となったのは、2021年、PTTORとパートナーシップを組めたことです。パートナーからは資金だけでなく、専門的なマネジメント体制と信頼性の高いデータベースも得ることができました。
PTTORは、運営するガソリンスタンドの利用者数、各エリアの人口密度やカフェ・アマゾンの売上実績などといった詳細な情報を共有してくれました。これらを店舗の立地選定の判断材料にできたことが、迅速かつ正確な多店舗展開を可能にしたと言えるでしょう。
現在はレストラン運営に加え、カフェ・アマゾンでオーカジューの即席食品の販売も行っており、消費者との接点が大幅に増加しました。PTTORとの提携は、われわれが倍々ゲームのようなスピードで成長を遂げるために極めて重要なマイルストーンだったと考えています。
チャラコーン氏: オーカジュー立上げ初期のブランドイメージや認知度は、主に口コミによって広がっていきました。バンコク進出の際も、インターネット上でのレビューがきっかけとなり、大きな話題を呼び、その後、インフルエンサーを活用したコアバリューの伝達も試みました。
例えば、われわれのスムージーは砂糖を一切使用せず、甘みはすべて果肉に由来するものです。このようなコアバリューを消費者に直接体感してもらうことが、ブランド構築の根幹だと考えています。

チャラコーン氏:われわれはかつて視察した日本のJAの仕組みを参考にして、 「オーカード(Oh-Kard)」プロジェクトを開始しました。
オーカードは、川上であるタイの農家と川下である販売拠点を直接結びつけるビジネスモデルです。カイランやラディッシュ、日本きゅうりといった多様な作物を、店舗前に設置した冷蔵庫で直接販売しています。こうした農家と消費者を直結させる仕組みは極めて有効だと確信しており、今後さらに強化していく方針です。この分野において協業に関心のある日本企業があれば、われわれは常に歓迎します。
チャラコーン氏: チェンマイ県の高地に位置するメーチェム郡はタイ国内最大級のキャベツ栽培地ですが、ほぼすべての農家が農薬を使用してるほか、トウモロコシ栽培における野焼きが深刻化しています。野焼きは、微小粒子状物質(PM2.5)の原因となる大気汚染を引き起こしています。
この問題を解決するため、われわれは農家にオーガニック農業への転換を呼びかけました。種子や肥料の提供に加え、価格保証や年間買取枠を定めた覚書(MOU)を締結するなどの支援を行っています。現在、100世帯以上がこの取り組みに参加しています。われわれが使用・販売する野菜の25〜30%がこのプロジェクトに参加した農家からの収穫物であり、残りは自社農園で生産しています。
品質管理(QC)については、専門チームが土壌や収穫物をサンプリングし、残留化学物質の有無を厳格に検査しています。また、PTTORからも、ビニールハウスの構造体や被覆材の整備、収穫物保管庫へのソーラーパネル設置といった支援を受けています。こうした活動や北部における野焼き廃止により、農家の安定的な収入や、人々の生活環境の改善にも取り組んでいます。

チャラコーン氏:日本の視察で特に感銘を受けたのは、水管理システムと省力化技術です。わずか2~3名で大規模な農場を管理できる効率的な手法を学び、そのテクノロジーを自社の農場に適合させるべく研究を重ねてきました。ロボット技術の導入に関しては、省力化を目的としたセミオート(半自動)システムの導入を積極的に進めていいます。従来は種まきに10名の作業員を要していたが、自動播種機や移植用のロボットアームを導入することで、人員を4名にまで削減し、同時にヒューマンエラーの抑制にも成功しました。
さらに、店舗のフロントにPOSシステム(POSレジ)を配備し、バックエンドでは企業資源計画(ERP)を用いてデータを蓄積・分析しています。各店舗の正確な需要予測に基づいた、セントラルキッチンでの生産計画の最適化を実現できました。
スラナリー工科大学などの教育機関と提携し、肥料の使用量を抑えつつ収穫量を増やすための硝酸塩肥料の研究も進めています。これらの取り組みは、テクノロジーを通じてタイの農業をより持続可能かつ効率的なものにするために行っているものです。
チャラコーン氏: われわれは「タイのサラダ王」を目指しています。擁している栽培面積約380ライ(約60.8ヘクタール)を最適化し、テクノロジーを活用することで持続可能な農業を実現し、そして、農産物の価格下落問題を解決することを目標としています。
オーガニック農業は単なる選択肢ではなく、唯一の生き残り策だと考えています。メーチェム郡の事例が示したように、化学薬品は土壌の劣化を招き、タイ農業のイメージを損なうと考えているからです。
栽培面積の最適化については、イノベーションによる効率化を目標に掲げており、ロボットシステムを全面的に導入すれば、同じ面積で生産量を3倍に引き上げ、ユニットコストを削減できると予測しています。こうした技術がタイの農業分野で実用化されれば、農家の生活水準が向上し、都市部と地方の格差是正にも大きく寄与するでしょう。
さらに、今後の事業展開については、引き続き健康製品を主軸に据えていきます。傘下ブランドの JOE WINGS(ジョー・ウィングス)、Oh! Juice(オー・ジュース)、Ohkajhu Wrap & Roll(オーカジュー・ラップ・アンド・ロール)といったブランドは、健康と美味しさを両立させる「Healthy Tasty」という理念のもと、非常に好意的な評価を得ています。主力ブランドのオーカジューを筆頭に、今後も当社のブランドが消費者に健康を届け、タイ農業の持続的な成長も牽引していくことを目指しています。

チャラコーン・エーカチャイパッタナクCEO(Mr. Chalakon Eakchaipatanakul)
株式会社プルックパック・プローラックメー
チェンマイ県出身。元農業従事者。パヤップ大学経営学部マーケティング学科卒業。大学卒業後、高校時代の友人であるジラユット・プーワプーンポン(最高スマート農業責任者/CSAO)と共に、「プルックパック・プローラックメー(『母を愛するがゆえに野菜を植える』の意)」を設立。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / 白井恵里子

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