中国の大気汚染はピークアウトか、スズキがタイ生産から撤退

中国の大気汚染はピークアウトか、スズキがタイ生産から撤退

公開日 2024.06.10

英エコノミスト誌6月1日号は中国面で、「中国のCO2排出はピークに達したか」というタイトルで現在の中国の経済の現状と課題を端的に表現する興味深い記事を掲載している。副題は「経済成長と二酸化炭素(CO2)排出の切り離しに期待する」というものだ。同記事は「2022年末に中国政府は新型コロナウイルス感染拡大防止策を解除した。それは経済にとっては良かった。工場の操業は再開され、道路に多くの自動車が戻ってきた。ただ、それは気候変動には悪いことだった。2023年の中国のCO2排出量は4.7%増加、過去最高の126億トンになり、世界の排出量の3分の1を超えた」と話を始める。

しかし、今また中国のCO2排出量は減少しつつあるという。「カーボン・ブリーフ」の分析データによると、今年3月には前年同月比3%減と14カ月ぶりに減少に転じ、さらに4月も減少が予想されている。この傾向が続いた場合には、中国のCO2排出量は2023年の水準までは戻らない可能性があり、すでにピークを付けたのだろうと指摘。そして、これは中国の経済成長とCO2排出の直接の連動が緩みつつあることも示唆しており、今年は、排出量が減る中で経済成長を実現するだろうとの見方を示した。

そして、CO2排出減に楽観的になる理由の1つは、不動産部門が中国経済の主要パートではなくなったことで、不動産開発会社が事業を縮小し、CO2排出の多い原材料調達を削減しており、3月のセメント生産量は前年同月比22%減、鉄鋼生産量も8%減になった。一方、他の経済活動では、中国は昨年、風力と太陽光発電を300ギガワット導入するなどクリーン電力を増やしており、CO2排出削減につながっている。さらに、中国人はよりグリーンな手段で旅行するようになり、昨年、世界の電気自動車(EV)販売台数の半分以上を中国が占めたと強調。中国のエネルギーの半分以上はまだ石炭火力だが、楽観的シナリオでは、中国は2030年まで毎年280GWの太陽光発電を新規導入し、風力発電も毎年50~60GW増加することになるだろうとの見通しを示している。

先月、久しぶりに上海を訪問したという知人は、「上海に住んでいた2006年頃、空は常に灰色だった記憶がある。それが今回、空は青く非常にきれいで驚いた。配車アプリで呼んだ車はすべてEVで、走っている車の2台に1台はEVという印象だった」と語ってくれた。


タイ投資委員会(BOI)は、中国の長安汽車(CHANGAN)がタイのEVサプライチェーンを促進するためにタイの地場メーカーから総額36億バーツ分の自動車部品を購入することを明らかにした。6月7日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)などが伝えた。BOIのナリット長官によると長安汽車はタイ企業67社と合意したという。長安汽車は昨年、2025年第1四半期にラヨン工場で、スポーツ用多目的車(SUV)の生産を開始すると発表している。同社はタイで年間10万台のEV生産を目指しており、当初は3万~5万のEVのSUV生産を目指すという。


6月7日付バンコク・ポスト(2面)によると、タイ政府はマレーシアと、タイ南部で姉妹都市(twin-city)計画を推進することで合意した。タイ南部の民族紛争地域の平和を推進するために貿易エリアに転換することを目指すという。プームタム副首相兼商務相によると、両国政府は、①貿易関係の構築②マレーシアでタイ農家も参加するハラル市場を開設③タイ・マレーシアの包括的貿易センターの開設④新型コロナウイルス流行で中断したタイ南部サトゥン県での貿易活動の再開⑤マレーシアの投資促進機関とタイ商務省との連携構築だという。


スズキは6月7日、グローバル生産体制の見直しの一環としてタイの4輪子会社スズキ・モーター・タイランド(SMT)のラヨン県にある工場を2025年末までに閉鎖し、タイ国内生産から撤退すると発表した。工場閉鎖後は東南アジア諸国連合(ASEAN)域内や日本、インドの工場で生産された完成車を輸入し、タイ国内での販売、アフターサービスは継続するとしている。また、カーボンニュートラル目標の達成に向け、「今後もハイブリッド車などの電動車を投入」していくと説明した。スズキはタイ政府が2007年に発表したエコカープロジェクトに応募し、2011年8月にSMTを設立、2012年3月から現地生産を開始していた。ピーク時には輸出を含め年間6万台を生産。2023年度の生産実績は7579台、タイ国内販売実績は1万0807台、輸出は1272台だった。タイでは中国の電気自動車(EV)メーカーの攻勢で日系自動車メーカーが急速にシェアを減らしており、SUBARU(スバル)もタイ工場を閉鎖すると伝えられている。

6月9日付バンコク・ポスト(2面)によると、タイのセター首相は8日、スズキがタイ国内生産から撤退すると発表したことを受けて他の自動車メーカーが生産から撤退することはないと確信しているとの見解を表明した。同首相によると、タイ政府はトヨタ自動車。ホンダ、いすゞ自動車、マツダ、三菱自動車など主要自動車メーカーと会合を持ったとした上で、日本企業による内燃機関(ICE)車の生産の重要性を強調したという。同首相は「シェアが相対的に小さく、その自動車生産規模がタイ国内の需要に合わない可能性がある中で、スズキの決断を尊重する」と説明。「この決断にもかかわらず、スズキは二輪車の生産とタイ国内での部品供給とメンテナンスを行うサービスセンターは維持する」と強調した。

一方、チャチュンサオ県の労働者保護・福祉事務所の幹部は、県内の極めて多くの立場の弱い労働者が将来の失業リスクを抱えているとした上で、労働環境の悪化に対する懸念を示した。同県内の自動車産業は137事業所で3万9321人を雇用しており、EV市場の拡大が、ICE産業の縮小と停滞につながっているとしている。

THAIBIZ編集部

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