「自ら足を運ぶ」営業が切り拓く、タイ組織変革支援の最前線

THAIBIZ No.172 2026年4月発行

THAIBIZ No.172 2026年4月発行その人事で会社は変われるか

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「自ら足を運ぶ」営業が切り拓く、タイ組織変革支援の最前線

公開日 2026.04.10

社内公募で海外法人立ち上げに手を挙げ、タイへ赴任したリンクアンドモチベーションタイランドの江間満里奈氏。ネットワークゼロの状態から1年間で名刺1,057枚を積み重ね、「自ら足を運ぶ」営業で信頼関係を築いてきた。顧客の言葉の奥にある願いを言語化し、組織変革へとつなげる。その先に見据えるのは、日系企業の励みとなる成功事例の創出だ。

社内公募でつかんだ海外への挑戦

江間 満里奈氏
コンサルタント
Link and Motivation(Thailand)Co., Ltd.
2019年にリンクアンドモチベーションに新卒入社。グループ会社の人材紹介会社でキャリアアドバイザーを務めた後、採用コ ンサルティング部門を経て、産学官連携の教育プログラム立ち上げなどの新規事業も多数経験。2025年1月よりタイ赴任。新規営業を中心に、タイでの事業展開に関わる業務全般を担当。

Q. リンクアンドモチベーションのタイ法人について教えてください

リンクアンドモチベーションは2000年に創業した組織人事コンサルティング会社です。創業から25周年を迎えた昨年、東南アジア4ヵ国(タイ、ベトナム、フィリピン、シンガポール)に現地法人を同時に設立しました。

現在は、日本国内で培ってきた組織変革や人材開発のノウハウを海外市場でも本格展開していく「第二創業」とも言えるフェーズです。海外進出および4法人同時立ち上げは組織として初の試みであり、日本からは12名が派遣されました。

私はその中の一人で、タイ法人を任されています。創業して早々に採用に力を入れ、1年目で社員数が2倍に拡大しているタイ法人では現在、日系企業を中心に支援しています。タイは製造業を中心に日系企業の進出が進んできましたが、多くの企業では依然として日本人駐在員が経営・マネジメントの中核を担っています。

その結果、駐在員の帰任に伴う経営方針の変更や、中長期的・継続的な人材育成の不足などといった深刻な課題が生じています。当社では、「ローカルスタッフが主体的に組織を運営できる体制づくり」を実現することで、持続可能な事業成長につなげる支援をしています。

自ら足を運び、信頼関係を起点に組織変革支援へ

Q. タイでのビジネスに対する印象は

私のミッションは「タイにおけるマーケット開拓」ですが、タイでのビジネスは人と人との関係性に大きく左右されるため、日本以上に信頼構築のプロセスが重要だと感じます。赴任当初はネットワークも限られていたため、交流会や企業訪問に可能な限り多く参加し、とにかく「自ら足を運ぶ」ことを重視しました。

昨年1年間で名刺交換をした数は1,057枚。訪問企業数も250社ほどにおよびます。打ち合わせの機会があれば、チェンマイ、ラヨーン、チョンブリー、アユタヤなど、どこにでも足を運んでいます。「足で稼ぐことを厭ってはならない」というのが当社のスタイルの一つです。

お客様の困りごとや私たちが力になれることを見つけるために「まずはお客様を訪問する」ことに注力した1年間でしたが、対面での関係構築を重ねる中で徐々に信頼関係が生まれ、継続的な相談につながるケースも増えてきました。

また、現在タイの経済成長が鈍化している中で、「新たな活路を見出すために挑戦したい」という想いを持たれている方が多いとも感じました。そのようなお話を聞くたびに、当社としても個人としても、より力をつけてご支援を広げていきたいと感じます。

Q. タイで活かせる御社の強みを教えてください

これまで蓄積してきた独自のデータベースが大きな強みの一つです。1万社以上を支援してきた実績を基盤に、社員の組織への貢献意欲などを可視化するためのエンゲージメントサーベイを提供しています。日系企業はこれを活用することで、「ローカルスタッフが会社に何を求めているのか」「他社との違いはどこにあるのか」を知ることが可能です。

もう一つの強みは、「調査をして終わり」ではなく、現場のローカルマネジャーが自力で改善できるまで当社のタイ人社員が併走している点です。

具体的には、ローカルマネジャーの皆様が、サーベイの結果を読み解き優先課題を整理して、何から手を付けるべきかを計画し、施策実行できるようになるための伴走支援をしています。日本人経営陣やわれわれが組織を変えるのではなく、ローカルスタッフの皆様が変わるきっかけ・機会をつくることを大切にしています。

Q. 営業を通して意識的に行っていることはありますか

お客様が「こう変えていきたい」「こんな問題に直面している」と口にされたときには必ずその言葉の背景にある願望や思いを意識的に探り、私の中で整理した上で言葉に落とし込んでいます。

例えば、「良い会社にしたい」という言葉の裏には、「社員が成長を実感できる組織にしたい」「挑戦が評価される文化をつくりたい」などさまざまな思いがあります。

そうした言語化されていない願望を引き出し、組織変革の方向性として具体化することを意識しています。以前、お客様のお話を聞いた後に私なりに言語化してお伝えしたところ、「それをうちの会社のスローガンにします」と冗談交じりに言っていただいたことがありました。

組織の問題を解決し、理想に向かっていくためには、まず言葉で「共通認識」を作り出すことが必要なのだと、再確認できた出来事でした。

組織変革の成功事例を創出し、日系企業の励みに

Q. どんな時に仕事のやりがいを感じるか

支援が進むにつれて、お客様との関係性が「外部コンサルタント」から「同じチームの一員」へと変わっていく瞬間があります。組織改革は一朝一夕では進みませんが、ともに議論して実行し改善し、成果を共に喜べる時には大きなやりがいを感じます。自社を大きくしていくこともやりがいの一つです。

当社の1DAYインターンシップに参加し、最終的に入社したタイ人社員が、入社後にインターン主催者側として参加者に伝えたメッセージが強く印象に残っています。

「この会社は、生き生きと前向きに働ける場所。日々の新しい学びが自分の原動力となっています」という彼女の言葉は、企業理念が自社で体現できていることを確認できた機会であり、非常に嬉しく感じました。

江間氏(左)とローカルスタッフ

Q. 今後、挑戦していきたいことは

組織が変わることで事業が変わる—そうした成功事例を創出していくことが目標です。事例が増えることで、在タイ日系企業の励みとなり、変革へと踏み出す勇気につながると考えるからです。

会社や事業は人が動かすものですが、人や組織への投資がどう成果につながるのかは正直、目に見えづらいものだと思います。だからこそ、私たちがお客様とともに実践を積み重ねて好事例を創り、多くの経営者の皆様の背中を押せる存在になっていきたいと考えています。

最終的には、タイの労働市場において、日系企業の人気・ブランド力を改めて高めていきたいです。あわせて、当社もローカルスタッフ主導で事業を推進できる体制づくりにも力を入れていきます。

タイ人社員の存在感を高め、「組織を変えたい時はリンクアンドモチベーションのタイ人社員に相談しよう」と認識していただける状態を、タイに広げていきたいと考えています。

執筆者:三田村 蕗子

>> 連載「在タイ日本人駐在員の挑戦」の記事一覧

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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