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連載: タイ経済概況 - SBCS
公開日 2026.06.10
初めてタイを旅行で訪れたのは1997年。今から約30年も前のことだが、当時はまだ高架鉄道(BTS)もなかった。本格的にタイに関わり始めたのは大学へ通った2010年からだが、そこから数えても、もう17年になる。

この間の大きな変化として挙げられるのが、バンコクの鉄道網の充実と高層ビルの増加だろう。2010年時点では、BTSスクンビットラインはモーチット駅からオンヌット駅までしか開通しておらず、現在よりもはるかに短かった。その後、段階的に延伸が進み、新駅の開業に伴って周辺には高層オフィスビルやホテル、コンドミニアムが建築されていった。スクンビットライン以外にも新線の開通が相次ぎ、その多くで同様の開発が起こった。
2025年末時点で、首都圏都市鉄道(高架鉄道、地下鉄、モノレール)の総距離も280キロメートル(山手線約8周分)に達し、150メートルを超える高層ビル数の都市ランキングで、バンコクは世界13位に位置付けられている※。
※出所:Council on Tall Buildings and Urban Habitat
ところで、高層ビルのルーフトップバー等、高い場所からバンコクを見下ろすと、高層建築物が線状に連なっているように見える。その理由の一つに建築規制がある。
タイの建築物管理法では第4条において、高さ23メートル以上の(人が居住や利用する)建築物を「高層建築物」と定義している。同法に基づく省令第33号では、高層建築物を建設するためには、前面道路の幅(幅員)が10メートル以上であり、かつ土地が前面道路と接している長さ(接道幅)が12メートル以上あることが求められている(延床面積3万平方メートル未満の場合。3万平方メートル以上の場合は幅員18メートル以上)。
消防車のアクセスや避難経路の確保といった安全面の観点から設けられたものだが、幅員が10メートル以上となると、それなりの大きな通りに限られる。
なお、2023年に最高行政裁判所が「接道幅12メートルの条件を満たしていないため違法建築」という判決を示して大問題になった建物がアソークにある。条件の解釈が曖昧な点もありディベロッパーにとって注意が必要なポイントとなっている。
一方で、道路幅が狭くなるソイの中に入ると7~8階建てのコンドミニアムが多く見られる。これは、前面道路の幅員が不足するため、高層建築物の建設可能な土地としての要件を満たしにくいためだ。この場合、前面道路の幅員が6メートル以上で、かつ安全性やアクセス条件等の一定の基準を満たせば、「高層建築物」に該当しない高さ23メートル未満のコンドミニアム等を開発することができる。1フロアあたりの高さを3メートル程度と考えると、7~8階建てが一般的となる。
こうした制度的背景により、スクンビット通りのような幅員が広い幹線道路沿いに高層ビルが立ち並び、ソイに入ると高さ23メートル未満の建物が増加する。さらに、都市鉄道についても用地確保や構造上の制約から幅員の狭い道路沿いには整備が難しく、大通りに沿って敷設される。その結果、鉄道沿線沿いに高層建築物が集中し、俯瞰すると高層建物が線状に連なる景観が生まれるというわけである。

さて、前面道路の幅員が10メートル以上と広く、高層建築物の開発が可能な都心のまとまった土地は希少性が高く、価格も上昇する傾向にある。最近、ウィッタユ通りのプルンチット駅近くにあるオランダ大使館跡地が4平方メートル(=1ターラン・ワー)あたり350万バーツ(約1,750万円)で販売されるという報道があった。坪単価換算では1,450万円程。日本でも一等商業地と肩を並べる水準である。これはバブルなのか、それとも本当に価値があるのか。その答えは、「その土地が購入価格に見合った利益を生むことができるか」次第だろう。
タイ商務省の発表によると、2026年第1四半期の輸出額は前年同期比+17.6%の961億6,990万米ドル、輸入額が同+32.4%の1,056億4,640万米ドルとなり、貿易収支は94億7,660万米ドルの赤字だった。
農産物・加工品輸出が同▲2.1%となった一方、主要工業製品は同+21.3%(818億7,800万米ドル)、うち自動車・同部品は同+6.2%(106億7,300万米ドル)と大きく伸びた。国・地域別では、首位の米国向けが前年同期比+41.8%(224億2,900万米ドル)。中東向けは同▲13.2%の28億2,000万米ドルに落ち込んだ。同省は、中東情勢不安による生産コスト上昇の影響で、今年通年の輸出額は前年比▲3%〜+8%になるとの見通しを示した。
エクニティ副首相兼財務相率いるタイ政府代表団は、4月13~17日に米ワシントンD.C.で開催された2026年国際通貨基金(IMF)世界銀行春季会合に参加。半導体産業への投資誘致を図るため、米国の半導体関連大手と意見交換を行った。
協議相手は、①すでにタイに30億バーツ超を投資している熱制御チップメーカーのフォノニック社、②世界第5位の半導体受託製造企業であるグローバルファウンドリーズ社、③半導体自動試験装置(ATE)大手のテラダイン社の3社を含む。フォノニック社は、人工知能(AI)向け高性能演算システムの冷却チップを手掛けており、タイを主要生産拠点としている。現在、米国から半導体材料の前工程生産をタイへ移管する準備を進めている。
一方、グローバルファウンドリーズ社に対しては、タイ政府側が半導体前工程(ウェハー製造)工場の新設を呼びかけた。テラダイン社は、タイ国内での調達や委託生産を拡大する方針を示した。また、世界各地で展示会を主催する国際半導体製造装置材料協会(SEMI)とも協議を行った。タイ投資委員会(BOI)は今年3月にSEMIへ加盟しており、世界の半導体企業とのネットワーク強化や、タイでの半導体関連国際展示会「SEMICON」開催の可能性について意見を交わした。
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BOIが3月20日に開催した会議で、エクニティ副首相兼財務相は、投資促進策「タイランド・ファストパス」を通じて重点産業における大型案件の認証を加速させる方針を表明した。現在までに同制度で承認された案件は16件、投資額は1,700億バーツに達している。審査の迅速化に加え、この制度を通じて投資の主な障壁となっている①電力供給および再生可能エネルギーの確保、②工業用地確保、に関する手続きを簡素化する方針も強調した。
具体的には、①では、データセンター等電力多消費型産業向けに安定的な電力供給を実現するため、BOIがエネルギー規制委員会(ERC)と連携する構えだ。一方、②については、工業エリア拡大に向けた都市計画の見直しを図るとともに、用地整備に関するガイドラインを策定し、公有地の用途変更手続きを迅速化するという。なお、半導体や高度電子機器産業では、タイ人雇用の割合に関する規制を緩和する一方、その代替条件として、3年以内にタイ人労働者の人材育成を行うことが義務付けられた。
4月21日、社会保険の歯科治療費給付拡充に関する告示が官報に掲載された。新制度では、親知らずの抜歯費用が従来の年間900バーツの一般歯科治療枠から分離され、治療の難易度に応じて1本当たり1,500~2,500バーツを給付する。また、部分入れ歯・総入れ歯の給付上限額が引き上げられ、入れ歯修理費も新たに給付対象となった。さらに、総入れ歯が装着できない重度症例を対象に、インプラント支持型義歯(オーバーデンチャー)についても新たに給付制度が導入された。
これらの新給付は5月1日から適用されている。対象者は、受診前15ヶ月以内に3ヶ月以上保険料を納付した被保険者で、離職後も最長6ヶ月間は給付を受けることができる。なお、国籍による制限はなく、外国人加入者にも適用される。
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タイ政府は5月5日の閣議で、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格高騰への対応と、エネルギー転換推進のため、財務省に4,000億バーツの借入枠を認める緊急勅令案を承認した。資金使途は、①国民生活の負担軽減や農業従事者、小規模事業者への支援に2,000億バーツ、②化石燃料依存を低減するためのクリーンエネルギーへの転換に2,000億バーツ。借入が全額実行された場合、2027年度末時点の公的債務残高の対国内総生産(GDP)比は約69.9%となり、政府が定める上限の70%に近づく見通し。

SBCS Co., Ltd.
Executive Vice President and Advisor
長谷場 純一郎 氏
奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。
SBCS Co., Ltd
Mail : jhaseba@sbcs.co.th
URL : www.sbcs.co.th
SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。
Website : https://www.sbcs.co.th/


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