
連載: 東京都発!Tokyo SMEが導く次世代タイビジネスの波
公開日 2026.09.10 Sponsored
タイの製造現場では、労働力不足や品質向上へのニーズの高まりから、人工知能(AI)の存在感が増すとともに、日本企業の高度な技術力にも注目が集まっている。今年5月、バンコク駐在員事務所を構えたHutzper Inc.(以下、フツパー)もその好例だ。現場主導型フィジカルAIを武器に、半年足らずで事業を軌道に乗せた背景には、東京都中小企業振興公社(以下、Tokyo SME)タイ事務所の伴走支援がある。同所のサポート体制と、進出のリアルに迫る。
目次
東京企業の海外展開支援を手がけるTokyo SMEタイ事務所は今年度、「食品」「AI・デジタルトランスフォーメーション(DX)」「グリーントランスフォーメーション(GX)」を重点分野に据える。生産人口減少や脱炭素など、タイの社会課題解決に直結するテック企業の進出が増えている流れを見据え、その支援を強化する狙いだ。
特徴的なのは分野ごとに支援のアプローチを変えている点だ。AIやDX、GX分野では、日系企業のコアな技術をソリューション化する実証実験(PoC)のパートナー探しを支援。一方、食品分野では、高付加価値化という現地ニーズに応える日系企業をタイ企業に紹介している。こうした支援の一環として数多くのイベントも主催しており、今年7月にはタイの最新情報を共有する「Tokyo SME Business Week 2026」を開催した。
今年のビジネスウィーク(オンラインセミナー)は従来の実務相談型の内容から、次世代ビジネス動向へテーマを刷新。具体的には先述の重点分野を軸に、①バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済と環境政策、②AI・DXと進出企業の実践知、③タイ人材採用と外資規制の実務、④アグリテック活用をテーマに開催した。開会挨拶で、同所の清水翔太所長は「進出前の企業やスタートアップに向けて、次世代トレンドから日本企業の勝ち筋など、タイビジネスの最新動向を届けたい」と意気込みを語った。
4日間の配信では、前年比約1.8倍となる300名が視聴。同所の斎藤佑樹主事によれば「参加企業の関心の高さがうかがえただけでなく、配信を通じて具体的な経営相談へとステップを進める企業が相次いだ」という。「資源大国タイ×技術立国の日本」という同所のメッセージのもと、2日目に登壇したのが、フツパータイ駐在員事務所の染谷康貴最高経営責任者(CEO)である。
DAY 1|BCG編
タイ投資委員会(BOI) シティー・タンプンテック氏
Green & Blue Planet Solutions Co., Ltd. 梅山 研一氏
DAY 2|DX・AI編
YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd. 吉越 廉朗氏
Hutzper Inc. 染谷 康貴氏
DAY 3|タイ人材採用・法務戦略編
PERSONNEL CONSULTANT MANPOWER (THAILAND) CO., LTD. 小田原 靖氏
One Asia Lawyers (Thailand) Co., Ltd. 千葉 広康氏
DAY 4|アグリ技術編
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター 金森 紀仁氏
東京都立産業技術研究センター バンコク支所 渡辺 茂幸氏
アーカイブ動画はこちらから見れます

フツパーは、製造業向けの外観検査や人員配置、行動分析などのAIを展開する2020年創業のスタートアップだ。「PoCで終わらせない」を信条に、現場主導型のフィジカルAIを主力事業とする。日本国内の顧客250社のうち、約8割を製造業が占める。
同社のタイ進出のきっかけは、2023年にTokyo SMEの支援を受けて出展した展示会「METALEX」での手応えだ。その後、2025年12月に東京証券取引所グロース市場上場を経て、2026年初頭から進出準備を開始。事務所開設前のタイ人スタッフ先行雇用など現地特有のルールもあるなか、同所の専門家のアドバイスを受けながら、オフィス契約や採用面接を行い、開設にこぎつけた。
現地で見えてきたのは想定とは異なる現地のニーズだ。たとえば人員配置AIは、人手不足対策ではなく多人数管理の負担解消として、行動分析AIは、効率化ではなく安全確保としての需要が高い。提案時には「マネジャーだけでなく、現場スタッフも聞きにくる熱量に感動した」と染谷氏は話す。また、通訳を介す商談は通常よりも時間がかかるというが、「タイではKNOW HOW(ノウハウ)よりKNOW WHO(誰を知っているか)が大事」と、顧客との関係構築の重要性を強調する。
こうした商談機会もTokyo SMEタイ事務所の支援によって得られたものだ。今年1月に同所が開催した「日タイ企業交流会」では日系企業34社、6月にタイ国家イノベーション庁(NIA)が開催したスタートアップ・イノベーション関連イベント「SITE」ではタイ企業16社の紹介を受け、「親身なサポートはスタートアップにとって心強い」と同氏は語る。

現在、フツパーはタイに加え、ベトナムやチリの製造業とも取引の幅を広げているが、「最初の拠点であるタイで、しっかりと勝ち筋を見つける段階」と位置づける。今後は現地法人化に向けてタイ投資委員会(BOI)申請を視野に入れており、同所の支援を通じ、専門家やコンサルティング会社から助言を受けている。
さらに、Tokyo SMEが7月に東京で開催した「TOKYO×THAILAND マッチング商談会」にも参加。同氏は「タイの食品企業とのマッチングをサポートしてもらい、食品製造の現場を知ることができた」と、新たな手応えを掴んでいる。
進出前の市場調査から戦略・戦術アドバイス、進出準備、マッチング商談、成約まで、企業が自走できる体制づくりを一貫して支援する。これは日本側とタイ側の両拠点が連携するTokyo SMEならではの強みである。
タイ現地の商習慣を踏まえたローカライズ支援や、弁護士、会計士など専門家への無料相談も実施し、同所開設以来、経営相談は累計3,570件、ビジネスマッチングは6,121件にのぼる。フツパーのように初進出となる企業にとって、このような「伴走者」の存在は頼もしい。
東京都内に事業所を構える中小企業であれば、業種を問わず、すでに海外進出している企業も支援対象となる。日本の「勝てる技術」をタイ市場にフィットさせ、成長を後押しする。同所の支援は、両国のビジネス協業の機会を加速させていく。

(公財)東京都中小企業振興公社 タイ事務所
東京都の中小企業・スタートアップ向けに海外展開支援を行う公的機関。タイ事務所では市場調査から現地企業とのマッチング、各種専門家相談まで幅広い支援を無料で提供している。
Website:https://thai.tokyo-sme.com
E-mail:thai-branch@tokyo-kosha.or.jp
TEL:02-611-2641

THAIBIZ編集部
杉浦亜希子
