東京都発!タイで加速する次世代ビジネスの波

THAIBIZ No.176 2026年8月発行

THAIBIZ No.176 2026年8月発行タイ企業が切り拓く、日本食の新時代

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東京都発!タイで加速する次世代ビジネスの波

公開日 2026.08.10 Sponsored

日系企業のタイ進出が減速傾向にあると言われるなか、東京都の中小企業・スタートアップによるタイ進出相談件数が過去最高を記録している。進出の分野も、自動車や部品メーカーを中心とした製造業から、人工知能(AI)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、フードテック、グリーントランスフォーメーション(GX)、バイオテックなどの次世代ビジネスへと大きく変化している。

なぜ今、東京からタイなのか。企業の進出をタイの最前線で支援してきた東京都中小企業振興公社(Tokyo SME)タイ事務所の取り組みを通じて、タイ市場の新潮流を探る。

過去最高を記録した進出相談件数

東京都中小企業振興公社(Tokyo SME)タイ事務所の清水翔太社長

「日系企業の撤退が増えている」「駐在員が減っている」。タイではそんなネガティブな話題を耳にすることも多くなった。しかし、Tokyo SMEタイ事務所には、異なる景色が広がっている。2025年度の経営相談件数は約430件、ビジネスマッチング件数は約800件と、いずれも過去最高を記録。契約・受注件数は100件以上、金額は1億円を超えるという。

特に注目したいのが、新規相談企業の多さだ。現在、問い合わせ企業の7割以上を、新たにタイ進出を検討する企業が占めているという。「統計データや肌感覚では日系企業が減っているように見えるが、私たちのところには新しい熱量が集まっている」。そう語るのは同所の清水翔太所長だ。今タイを目指しているのはどのような企業なのだろうか。その動向を追うと、タイ市場で起きている変化が見えてくる。

AI、DX、フードテック、GX…進出企業の顔ぶれが変化

かつてタイ進出の主役は、自動車や電機、部品メーカーなどの製造業だった。豊富な労働力を活用した生産拠点の設立や、既存顧客からの要望に伴う海外展開を目的とするケースが多く、日本企業のサプライチェーンがタイで広がっていく時代でもあった。しかし近年、その様相は大きく変化している。同所長によると、この4年間で特に増えているのが、ディープテックをはじめとした「デジタル・自動化」、「環境/バイオ・循環型・グリーン(BCG)」「食品」といった分野だ。従来多かった労働集約型のものづくりやコモディティ商品の相談は減少傾向にあるという。

この潮流を踏まえ、現在同所では「DX・自動化」「環境(GX・BCG)」「食品」の3分野を重点的に支援している。相談企業の中には、大学発スタートアップやディープテック企業も少なくない。なかでも、AIを活用した業務効率化や品質検査システム、省エネ・脱炭素技術、バイオテック、機能性食品やフードテックなど、日本国内でも成長が期待される分野からの相談が増えているという。

なぜ今、東京からタイなのか

この背景には、タイでの社会課題・ニーズの変化がある。生産年齢人口の減少や人件費の上昇、環境対応への要求など、企業を取り巻く課題は年々複雑になっている。製造業では自動化や省人化、AIやIoTを活用したソリューションの需要が高まり、食品分野でも核家族化や単身世帯の増加により、冷凍食品や即席(Ready-to-eat)食品などの市場が拡大しているほか、免疫ケアや腸活、睡眠改善といった健康ニーズも急速に高まっている。

またGX・環境分野では、タイ政府がBCG経済モデルを国家戦略として推進。脱炭素やカーボンニュートラルへの対応が求められる一方、多くの企業は情報収集や対応策の検討段階にあるのが実情だ。

一方でこうした変化は、新たなビジネス機会でもある。清水所長は、「タイの社会課題に東京企業のテクノロジーをマッチングさせる、という構図ができつつある」と説明する。タイはASEANの中でもトップクラスの市場規模を持つだけでなく、強固な産業集積やサプライチェーンを有する。製造業から食品、サービス業まで幅広い産業が集積しており、新しい技術やサービスを試しやすい土壌が整っている。市場環境を追い風に、タイは東京企業にとって、自社技術を事業化し、新たな展開可能性を探る場として存在感を高めているのである。

タイ市場の機会を見極め、支援を設計する

同所の特徴は、業界や技術の成熟度に応じて支援のアプローチを使い分けている点にある。例えば食品分野では、タイの大手食品関連企業100社以上とのネットワークを構築しており、「新商品の付加価値を高めたい」「賞味期限を延ばしたい」「環境対応パッケージを導入したい」といった具体的なニーズを500件以上蓄積。それを解決できる東京企業の技術を結び付ける「ニーズ起点型」の支援を行っている(図表1)。

一方、DXやGX分野では事情が異なる。優れた技術を持っていても、タイ市場でどのようなビジネスモデルが求められるのかが見えていないケースが多いためだ。そのため、まずは共同開発先や実証実験(POC)のパートナーを探し、現地企業と連携しながら市場ニーズとの適合性を検証していく。近年は、自社のコア技術をタイ市場にどう適合させるかという「ローカルフィット(いわゆるプロダクト・マーケット・フィット:PMFのこと)」を重視する企業も増えているという。実証実験を通じて課題やニーズを把握し、その結果を踏まえてサービスやビジネスモデルを磨き上げていく。同所は、こうしたプロセスも含めて支援している。

次世代ビジネスの波を事業化へ導くTokyo SMEの力

経営相談累計約3,500件、ビジネスマッチング約6,000件、成約360件。これらの高い実績を支えるのが、企業の挑戦の事業化まで伴走する同所の支援体制である。

① 戦略策定から練り上げる「伴走支援」

自社・外部環境の分析や戦略策定などの「準備段階」から支援。続く「実行段階」では、ターゲットの選定からアポイントの獲得、実際の商談への同席まで行う。さらに商談後も、日タイ双方のスタッフが論点整理や商談の軌道修正等のフォローアップを行い、「成約」へと導く。単なるマッチングだけでなく、企業がタイで実商売の機会を獲得し、最終的に自走するまでをフルサポートするのが最大の強みだ。

② 東京都海外展開支援スキームとの「シームレスな連携」

東京都やTokyo SME本社が提供する多様な支援プログラム(展示会出展支援や助成金、各種ハンズオン支援等)を強力な「入口」とし、タイ事務所が全プログラムからの進出企業を受け止める「出口」として機能。企業が海外進出時に直面する商習慣の違いなどの壁を乗り越えられるよう、現地でのローカライズやパートナー開拓をシームレスに支援する。

③ スタッフがハブとなる「専門家の包括的サポート」

タイ進出における規制やハードルをクリアするため、弁護士や公認会計士、タイ保健省食品・医薬品局(FDA)、環境規制などの専門家に無料で相談できる。同所スタッフが単なる窓口ではなく「頼れるハブ」として機能し、企業と専門家が一体となって一つひとつの課題を解決するための包括的な支援を無料で提供している。

なお、支援対象は食品、DX、GX分野に留まらない。東京都内に本社や事業所を持つ中小企業であれば、あらゆる業種で相談が可能だ。同所内に日々蓄積されるタイ企業の課題やニーズ、市場変化に触れられることも、大きな価値と言える。東京企業とタイ市場による新たな協創が求められる潮流の中で、同所はその事業化を支える最前線を担っている。


(公財)東京都中小企業振興公社 タイ事務所

東京都の中小企業・スタートアップ向けに海外展開支援を行う公的機関。タイ事務所では市場調査から現地企業とのマッチング、各種専門家相談まで幅広い支援を無料で提供している。

Website:https://thai.tokyo-sme.com
E-mail:thai-branch@tokyo-kosha.or.jp
TEL:02-611-2641

THAIBIZ編集部
和島美緒

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