日本の食農スタートアップ紹介⑧ 『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート ~AgriTech Bridge 2023より~

日本の食農スタートアップ紹介⑧ 『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート ~AgriTech Bridge 2023より~

公開日 2023.08.22

農林中央金庫などJAグループとタイのカシコン銀行が5月17日に開催した日本の食農スタートアップ企業によるピッチイベント、「AgriTech Bridge 2023」の参加企業紹介の第8回(最終回)は、自社ブランドの缶入り日本酒の国内外への販売を手掛ける「Agnavi(アグナビ)」だ。同社の玄成秀代表取締役のプレゼンテーションを報告する。

コロナ禍で日本酒が売れないという課題

弊社は一合180ミリリットル入りのアルミ缶で日本酒を提供するスタートアップです。「適量」「おしゃれ」「持ち運びが便利」の3点が特徴です。現在、日本国内の100以上の蔵元と協業しており、今回のセッションではタイ国内の流通企業・小売企業、そして、ブランディング企業の方々とつながりたく、登壇させて頂きました。

弊社は2020年に創業し、タイ国内にも6つの工場を持つ東洋製罐グループホールディングス、三菱UFJキャピタル、JR東日本スタートアップの3社から資金調達を行い、今年の4月にはデットファイナンス(債券発行)も含めて累計1.2億円を調達しました。関東工場を1つ持っており、今後、複数工場を展開していく予定です。

私自身は日本で唯一の総合農業大学である東京農業大学を卒業し、PhD(博士号)を取得しました。在学中に「Agripay」をエグジットして、Agnaviは2社目です。もともと農業ITをやろうと思っていました。一方で、東京農業大学の在学生や卒業生の学生で蔵元出身の方も多く、その約6~7割から「コロナ禍において日本酒がなかなか売れなくなっている。どうすれば日本酒の課題が解決できるか」という声が寄せられ、事業を開始しました。私以外でも、もともと農家で農業大学出身など、エネルギッシュでフレッシュ、経験豊富なメンバーが多いの弊社の特徴です。

品質管理難しく輸出は低迷

日本酒は「水」「米(コメ)」「麹」の3つだけでつくられ、ワインと比較すると5倍から10倍の発酵技術が必要な、醸造が非常に難しいアルコールです。そして「杜氏」という存在、そして技術もまた重要です。

日本酒業界では、2つの問題があります。1つは日本酒の消費量が約50年前と比較して77%減少していることです。日本酒はコメを使うので、コメの消費量も大きく減少しています。もう1つの問題が輸出と物流です。日本酒はワインとよく比較されますが、ワインはフランスから1.2兆円ほどの輸出がありますが、日本酒の輸出総額は500億円弱しかありません。日本酒とワイン、何が違うのか。いわゆる、ワインも瓶なので、割れたり、重たかったりという問題がありますが、日本酒は「フレッシュマネジメント」、いわゆる品質管理でも非常に難しいです。

日本酒の抱える課題『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート
日本酒の抱える課題

そこでわれわれは日本酒を缶で提供することで、日本酒の新しい流通ができないかと考えて事業を行っています。現在100近くの蔵元と協業しており、缶で困ったことがあれば弊社に尋ねて頂ければいろいろなレパートリーを提供できます。

CO2を50%削減可能

缶の特徴として、UVカットできることがあります。ビール業界が瓶から缶に移行したのはその品質管理が徹底できるということも大きな要因でした。そして、軽くて持ち運びやすい。物流コストを大きく低減できます。重さを低減でき、リサイクル性が高い缶では、「環境フレンドリー」になります。具体的には、瓶では180mlは416gなのに対して、缶は204gで、缶は瓶の半分ほどの重さで、製造・および生産、物流、リサイクルができ、二酸化炭素(CO2)を約50%低減することができます。

缶の持つCO2削減インパクト『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート
缶への切り替えによるCO2削減インパクト

われわれは2つのブランドを展開しています。「ICHI-GO-CAN(一合缶)」というブランドと、「Canpai(カンパイ)」です。一合は180mlで、日本酒を飲むときの最低単位です。このICHI-GO-CANは、蔵元の代表的なお酒を充填しており、高品質の日本酒が詰められています。ブランドという点では、「日本パッケージコンテスト」や、英誌「MONOCLE」でも日本で唯一受賞しました。100の蔵元と連携する中で、歌舞伎やアニメを含め、蔵元の銘柄を大事にするデザインなど、いろいろなレパートリーで提供しております。

続いて、Canpaiというスタイリッシュで、日本酒を飲んだことがない方に対して入門編となるブランドを展開しています。日本酒を飲んだことがない方は、どれを選べばよいか分からないという問題があります。この日本酒を飲んでいただくことで、日本酒というのはこういうものなのか、ということが分かって頂けるのではないかなと思っています。

日本酒販売額を缶で倍にする

これまで日本酒が広がらなかった要因はボトリングです。東洋製罐グループとの資本業務提携や、自社工場保有で問題を解決し、国内のみならず海外に対して安定的に日本酒を提供できるようなサービスを提供しています。

現在、香港の有名スーパー「シティスーパー」で大きく展開させていただいています。国内ではセブンイレブンでも20種類弱の一合缶を大きく展開しています。さらに今年の1月から本格的に輸出を開始しており、香港、台湾で、そしてタイなど東南アジアなどどんどん広めていきたいと考えています。

アジア圏での販売チャネル『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート
アジア圏での販売チャネル

文化審議会は今年3月に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の候補に、日本酒などこうじ菌を使った日本の「伝統的な酒造りの技術」を再提案すると決めました。2024年に開かれるユネスコ政府間委員会で登録の可否が決まる見通しです。また日本政府の輸出重点項目にも指定される追い風も受けています。日本酒は「國酒」と呼ばれています。トヨタ自動車やJR東日本などとの協業や、「JAアクセラレーター」に採択していただき、オールジャパンで海外に日本酒の素晴らしさを広めていきたいと思っています。

世界のアルコール飲料市場は、約150兆円の内50%が缶となっています。日本酒ではたった3%にしかすぎず、今後の展望として、缶を利用した日本酒の販売額で約1兆円を目指せるのではないかと思っています。ビール業界は缶利用が始まった50年前には1兆円だった市場が現在は3.5兆円になり、そのうち2.5兆円分で缶が利用されています。缶を利用することで、国内のみならず海外の方にも日本酒を知っていただける仕掛けを作り、日本酒市場を現在の約6000億円から1兆円にします。

缶を利用した日本酒のマーケットサイズ『Agnavi』「ICHI-GO-CAN」など缶入り日本酒の輸出を本格スタート
缶を利用した日本酒のマーケットサイズ

TJRI編集部

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