日系大手5社が、タイ理系学生に熱視線 ~AI人材育成講座の成果発表会を開催

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日系大手5社が、タイ理系学生に熱視線 ~AI人材育成講座の成果発表会を開催

公開日 2026.08.24

近年、タイの製造現場や研究開発(R&D)部門ではDXが急速に進む一方、「人工知能(AI)を導入したいが、使いこなせる人材がいない」「AIを活用できる若手人材を採用したい」といった課題を抱える在タイ日系企業も少なくない。 

こうしたなか、日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)事務局は今年7月、AI向けのGPU搭載クラウドサービスを提供するさくらインターネットと連携し、タイの理系トップ校の学生を対象とした「AI人材育成講座」を開講した。AIの基礎技術に加え、製造業の実際の課題への適用をテーマに据えた実践的なプログラムを通じて、現場でAIを活用できる人材を育成する。さらに、こうした人材の日系企業への就職を後押しすることで、日系企業の競争力強化に繋げることも目指している。 

まず初級講座が開かれ、8月1日には、受講学生125人による成果発表会が開催された。日系企業5社から審査員が参加し、学生の提案に直接フィードバックを行うとともに、優秀チームを表彰。タイ理系トップ校の多数の学生と日系企業が交流する貴重な機会となった。

日系企業に関心を持つ理系学生が受講

舞台となったのは、タイを代表する理系大学であるキングモンクット工科大学ラカバン校(KMITL)とカセサート大学。7月25~26日に開催された初級講座では、両大学の理系1~2年生125人が受講した。 

初級講座では、さくらインターネットが提供するGPU搭載クラウドサービスと「Chiral Platform」を活用し、AIを用いて材料の特性を分子レベルで予測・解析する手法を学んだ。講師は、Chiral株式会社取締役COOの梅田耕嗣氏が務めた。 

講座の目的は、大きく分けて二つある。一つは、文字通りAI人材を育てること。もう一つは、こうした人材と日系企業をつなげる機会を創出することだ。AI人材育成講座事務局が講座への参加希望者に対して実施したアンケートでは、約9割が「日系企業への就職に関心がある」と回答している。

8月1日に開催された初級講座の成果発表会には、Nissan Motor (Thailand)(日産モーター)、Hitachi Asia (Thailand)(日立アジア)、Daikin Industries (Thailand) (DIT)、Asahi Kasei Plastics Vietnam(旭化成プラスチックスベトナム)、SOLIZE Corporation (Thailand)(SOLIZE)の5社から審査員が参加した。

午前の部をKMITL、午後の部をカセサート校バンコク校で実施。審査員が学生のプレゼンテーションに対して講評を行うとともに、各校の優秀チームを選出した。

成果発表会の様子

AIを活用したプラスチック素材開発に挑戦

成果発表会では、学生が23チームに分かれ、「身近なプラスチック素材開発×AI」をテーマに、与えられた3つの課題から1つを選択。「Chiral Platform」を活用して材料の特性を予測・解析し、その結果をまとめたレポートをもとに、英語でプレゼンテーションを行った。 

なかには、冒頭の挨拶を日本語で披露する学生も見られ、日本への関心の高さがうかがえる場面もあった。 

<課題>
・車を軽くする高強度プラスチック
・食品を守るガスバリアプラスチック
・電気自動車(EV)電池を守る耐熱プラスチック

各チームは課題設定や分析、解決策のロジック、ストーリー構成などに工夫を凝らし、発表内容は実にバラエティに富んでいた。審査員からも、その完成度の高さを評価する声が聞かれた。

タイの学生の高いポテンシャルが発揮

午前の部・午後の部の各発表会後には、5社の審査員が別室で審査を行い、優秀チームを決定・表彰。 最優秀チームに対しては、「課題設定や素材の強み、導入によるメリットが明確に示されていた。ビジネスとしての実現性まで考慮されており、プレゼンテーションに向けて十分な準備を重ねたことが伝わってきた」などの高評価コメントが贈られた。 

講師を務めた梅田氏は、「驚いたのは、発表した学生全員が材料工学を専攻しているわけではないということだ。専門的な知識がなくても、AIを活用することで完成度の高い比較分析や論理的な考察ができることを示してくれた。改めて、若い世代の大きな可能性を感じた」と講評した。

優勝チームを称えるAMEICC事務局代表の田村真善氏(写真中央)

プレゼンで見えた学生の「リアルな実力」

審査員として参加したDITのR&D部門ゼネラルマネジャーであるサミット・レートウドムサック氏は、参加理由について「自社の事業に関連するテーマだったことに加え、優秀な学生との接点をつくりたいと考えたため」と説明。「空調メーカーとして多様な技術者を求めており、学生に当社の魅力を伝える機会としても期待していた」と、採用面での狙いも明かした。 

また、「通常の採用面接では分からないプレゼンテーション能力や、学生同士が協力して課題に取り組む姿勢、困難に直面した際の対応力など、『リアルな姿』を見ることができた。参加して非常に有意義だった」と成果を振り返った。 

同社は今後、DITへの就職に関心を持つ参加学生を対象に工場見学などを実施する方針で、採用につながる継続的な接点づくりに意欲を示した。

審査員コメントを発表するDITのサミット氏

AI時代、人間に求められる「クリティカル思考」

日立アジアの経営企画室兼エネルギー・産業製品事業部 副ゼネラルマネージャーであるキティチャイ・コントン氏は、「AI時代に人間の強みとなるクリティカル思考(物事を多角的・論理的に考える力)が、今回の発表会では随所に見られたことが印象的だった」と評価した。 

また、ベトナムから参加した旭化成プラスチックスベトナムのゼネラル・ディレクターである田中健夫博士は、「短期間でここまで完成度の高いプレゼンテーションを仕上げたことに脱帽している」と、学生たちの能力の高さを称賛。さらに、「他の審査員の方々とのネットワークを築くことができたのも、思いがけない収穫だった」と、企業側にとっての参加メリットについても語った。

別室で行った審査会の様子

中級講座の成果発表会は10~11月に開催予定、オブザーバー企業も募集

発表会後にAI人材育成講座事務局が実施した学生アンケートでは、審査に参加した全5社への就職に対し、7割以上の学生が「興味がある」と回答。企業によっては約9割に達するなど、学生側の関心の高さもうかがえる結果となり、企業・学生双方にとって将来につながる貴重な出会いの場となった。 

AI人材育成講座は、今後中級講座へと発展していく。中級講座の成果発表会は10~11月に開催予定で、講座を受講した理系学生の採用に関心のある日系企業のオブザーバー参加を募る予定だ

AI人材としてのポテンシャルを持つ優秀な学生との接点を早期の段階から構築しておくことは、今後のタイにおける競争力強化にも直結していくだろう。

次のステップとなる中級講座を9月から開催

初級講座に続き、9月からは中級講座がスタートする。中級では、講義と実践を通じてAI活用への理解をさらに深め、最終日には成果発表会を予定している。

<中級講座・講義日程>

■ キングモンクット工科大学(KMITL)

  • DAY 1: 2026年9月19日(土)午前(Session 1~2/Lecture)
  • DAY 2: 2026年9月26日(土)午前~午後(Session 3~6/Practice)
  • DAY 3: 2026年10月3日(土)午前~午後(Session 7~10/Practice)
  • DAY 4: 2026年10月17日(土)午前(Session 11~12/★成果発表会)

■ カセサート大学(KU)

  • DAY 1: 2026年11月20日(金)午前(Session 1~2/Lecture)
  • DAY 2: 2026年11月21日(土)午前~午後(Session 3~6/Practice)
  • DAY 3: 2026年11月22日(日)午前~午後(Session 7~10/Practice)
  • DAY 4: 2026年11月28日(土)午前(Session 11~12/★成果発表会)

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THAIBIZ編集部
白井恵里子

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