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公開日 2026.08.21
THAIBIZは8月6日、Kintoneと共催で、強い営業組織のつくり方をテーマにしたセミナーを、オンラインとオフラインのハイブリッドで開催。個人の能力への依存から抜け出し、組織として営業力を高めるためにはどうすればいいのか。本セミナーでは、建築仕上塗材メーカー・エスケー化研(タイランド)が取り組んできた採用基準の見直し、一人ひとりの強みを生かす育成、情報共有の仕組みづくりという3つの改革を軸に、具体的な取り組みと組織に生まれた変化を掘り下げた。さらに同社の改革を支えたKintoneの活用法など、実践的な内容が紹介された。

セミナーの中心となったのは、エスケー化研(タイランド)営業所長・國枝正章氏による実践事例だ。同社は、建築用塗料の販売だけでなく、設計提案から工事までを担当し、設計事務所やゼネコン、施工会社など、多くの関係者と連携しながら事業を進めている。
國枝氏がタイに赴任した2019年当時、課題として感じていたのが、「なぜ営業が育たないのか」「なぜ同じミスが繰り返されるのか」という点だった。当初は個人の能力不足に原因を求めていたが、同じ問題が何度も起きる中で、「変えるべきは人ではなく、会社が用意する環境や管理の仕組みではないか」と考えるようになったという。そこで見直したのが、採用、育成、情報共有の3つのポイントだ。

まず採用では、即戦力となる経験者を重視していた従来の考え方を見直した。前職での経験や実績だけではなく、第一印象や清潔感、考える力、基礎的な計算能力、自社の社風に合うかどうかを大切にするようにしたという。新卒や第二新卒も積極的に採用し、製品知識や営業スキルは入社後に身につけてもらえばよいとし、その後の伸びしろを重視する考え方へとシフトした。
さらに育成でも、苦手な部分を直して全員を平均点に近づけるのではなく、一人ひとりの強みを見つける方向へ変えた。人間関係づくりが得意な人、現場管理に強い人、デザイン感覚に優れた人。それぞれの得意分野を生かし、役割を組み合わせて「チームとして勝つ」組織を目指したと説明された。
もうひとつの大きな課題が、情報の属人化だった。ベテラン社員が重要顧客や過去の案件情報を抱え、新しく入った社員には十分な情報がない。担当者が休んだり退職したりすると、業務が止まり、引き継ぎにも時間がかかっていた。そこで同社では、個人の売上を重視するコミッション制を廃止し、「ひとりで成果を出す」のではなく、会社全体で目標を達成する考え方へ転換。成果を上げた社員には、目標に届いていないメンバーを支援する役割も求め、チームで成果を出す文化づくりを進めた。
さらにコロナ禍を機に、2022年から業務改善プラットフォームの「Kintone(キントーン)」を本格活用。「顧客、案件、営業活動、サンプル、見積もりなどの情報をつなぎ、『入力しなければ仕事が進まない仕組み』へと変えていった」と、活用のポイントについて説明。ベテランが抱えていた顧客情報も共有し、将来性のある顧客を若手へ割り当てることで、新入社員でも過去の経緯を確認しながら、早く仕事をキャッチアップできる環境を整えた。
こうした改革を進めた結果、2022年から2025年にかけて社員数は約1.5倍に、売上も約55%増という成長を遂げた。國枝氏は「採用、育成、情報共有を一体で見直し、その基盤としてKintoneが機能した」と振り返った。重要なのは、情報共有の仕組みを、上司が部下を管理するためではなく「入力すれば自分の仕事が楽になる」「過去の情報を探せる」など現場にとってのメリットにすることで、社内での定着を進めていった。今では社員から「ここを改善してほしい」「これもKintoneでできないか」と自発的な提案も出るようになったという。情報を個人ではなく会社の資産として蓄積・共有する仕組みが、若手社員の成長と自走する組織づくりを支えている。

セミナー後半では、キントーン(タイランド)の奥野寛史氏が最新の活用方法を紹介。Kintoneは、プログラミングの専門知識がなくても、顧客管理や品質管理、申請・承認、在庫管理など、自社の業務に合わせたアプリをつくれるノーコード・ローコードのプラットフォームだ。
現在はAI機能も拡充しているという。「アプリ作成AI」では、作りたい業務アプリの内容をチャットで伝えるだけで、その土台を作成でき、日本語だけでなく英語やタイ語にも対応する。さらにもうひとつ紹介されたのが「レコード一覧分析AI」だ。たとえば、タイ人営業スタッフがタイ語で入力した営業情報が蓄積されていれば、「今月の担当者ごとの営業活動を教えて」「注意が必要な案件は?」と日本語で質問するだけで、AIが蓄積された情報をもとに要約・分析する。「タイ語で記録された現場の情報を、日本人マネージャーが短時間でキャッチアップし、次の打ち手を考えられる」と、奥野氏はその効果について語った。

続いて、富士フイルムビジネスイノベーション(タイランド)の原啓祐氏が、Kintone活用のコツや業務改善の進め方を紹介。小さな業務から始め、成功体験を積みながら活用範囲を広げることの重要性について述べた。また、実際の活用事例を挙げながら、業務課題の整理やアプリ設計、社内への定着まで、現場の課題解決につなげるためのポイントを解説した。
セミナーの終盤には、MediatorのガンタトーンCEOを交えての組織づくりについてのディスカッションや参加者からの質疑応答、交流の時間も設けられ、参加者同士の活発な意見交換も行われた。これから日系企業が目指していきたい、タイ人社員の力を引き出し、自走する組織をつくるためのヒントが詰まったセミナーとなった。

参加者の声 「現場の課題と組織のあるべき姿、さらにKintoneを導入した後の変化をイメージできる内容でした」 「新しいことを導入する際、反対する社員への対応策を聞けてよかった」 「タイ人スタッフ側から改善の提案が出てくるまで意識向上ができれば、デジタル化はとても意義があるものだと改めて感じた」

THAIBIZ編集部
杉浦亜希子

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