会計基準活用のススメ

カテゴリー： 会計・法務

連載： BizWings - 中小企業経営論

公開日 2024.11.11

タイに進出する日系企業の皆様にとって、現地での会計業務の適切な遂行は非常に重要な課題です。弊社では、そうした企業の皆様を支援するため、2023年から適用されているタイの会計基準「TFRS for NPAEs（中小非公開企業向けタイ財務報告基準）」の最新改訂版を日本語に翻訳し、販売を開始しました。バンコクの商業施設エムクォーティエ内にある紀伊国屋書店で取り扱っており、日系企業がタイの会計基準をより理解し、実務に活用できるような環境を提供しています。

日本語の情報不足によるリスクの高さ

「TFRS for NPAEs」は2011年から適用されていた基準ですが、2022年に大幅な改訂が行われ、2023年1月1日以降に始まる事業年度から適用されています。改訂内容には、会計処理の基準が一層明確化され、中小企業における財務報告の透明性と信頼性が強化される点が含まれています。

しかし、日系企業にとってこの改訂版を理解し、実務に落とし込むことは決して容易ではありません。タイ語による情報が主流であるため、特に日本語話者の経営者や会計担当者にとって、情報不足から来る戸惑いや誤解が発生する可能性がありました。

このような背景から、弊社では今回の翻訳を通じて「日系企業がタイでの会計業務を効率的かつ正確に行えるよう支援したい」と考えています。従来、改訂版の内容に関する日本語の情報提供が限られていたことから、会計の問題が発生した際に、企業は外部の会計事務所や社内の会計担当者に頼らざるを得ない状況が多く見受けられました。その結果、ルールの理解が曖昧なまま進められるケースがあり、誤った対応をしてしまうリスクが高まっていたように思います。

タイ語本文と日本語訳を併用し、会計実務をスムーズに

本書は、タイでの会計実務に従事する日系企業の皆様にとって、実務的な手引きとなることを目指しています。特に、タイ語本文と日本語訳を併用することで、タイ語話者の会計担当者や監査人とのスムーズなコミュニケーションが可能となります。これにより、会計処理に関する議論がより実質的かつ明確に行えるようになり、結果として経営判断の質も向上することでしょう。

また、会計処理に疑問が生じた場合には、本書を参考にしながら、基準に照らし合わせて正しい対応方法を検討できる点も重要です。これは、タイでのビジネス環境に精通した会計スタッフや顧問とともに、より効果的な意思決定を行うための基礎を築く手助けとなるでしょう。

私は日系企業の皆様がこの日本語訳の活用を通じ、タイの会計基準に親しみ、タイにおける会計業務の円滑な遂行を進められるようにできればと願っています。特に中小企業の経営者や会計担当者が、タイの会計基準を正確に理解し、自社の会計実務をスムーズに進められるようになることを目指して、今後もさらなるサポートを提供してまいります。

【免責事項】 本稿は情報提供を目的としたものであり、本稿の使用にあたって発生したいかなる損害について、直接的・間接的問わず、発行元、代表者および本稿作成の関与者は一切の責任を負いません。また、本稿記載の内容は本稿作成時点における調査・法令・情報に基づいたものであり、本稿作成時点以降に発生した事象を反映しておらず、その責任も負わないものとします。