THAIBIZ No.157 2025年1月発行日タイ企業が「前例なし」に挑む! 新・サーキュラー エコノミー構想
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公開日 2025.01.10
目次
タイで前例のない乾電池のリサイクル事業に挑む両社の、揺るぎない推進力の源は一体何なのか。この事業の行く末に、どのような未来を描いているのか。CP Allのタップテープ・ジラアディサウォン上級副社長と、Panasonic Energy(Thailand)の谷本卓也社長との対談インタビューを通じて、サーキュラーエコノミー構想実現への道筋を探る。
タップテープ氏:CP Allとパナソニック エナジーのパートナーシップは、1999年にセブンイレブンでパナソニック乾電池の販売を開始してから25年間にわたり、途切れることなく続いています。私は1997年にCP Allに入社しましたが、谷本氏と出会ったのは現職に着任した約3年前です。20年以上の歴史が土台にあることも手伝って、当初から良好な関係が築けていると思います。
谷本氏の印象は3年前から変わらず、友好的かつ誠実であることです。会話を重ねる中で、「ビジネスだけでなく、共に社会課題解決に取り組む」方向性で意見が一致し、全国に1万5,000店舗以上あるセブンイレブンを活用して何か取り組みができないかと協議を進めてきました。そうして生まれたのが、今回の乾電池回収リサイクル事業(以下、「リサイクル事業」)です。
谷本氏:当社も、私が着任するずっと前から長年にわたりCP Allと良好な関係を継続できていると認識しています。セブンイレブンでの販売開始は、パナソニック乾電池がタイの人々にとって身近な存在になるための貴重なステップの一つでした。
私が初めてCP Allとお仕事をさせていただいたのは、2005年のことです。タップテープ氏に対しては、「アイデアとバイタリティーに溢れる経営者」という印象を持っています。初めてお会いした時、会話の最中に熱心にメモを取りながらアイデアを収集されていたことを、今でもよく憶えています。あれから3年が経った今、リサイクル事業が実現し、確実に前進できていることを嬉しく思います。
タップテープ氏:CP Allは、持続可能な地域社会の創出を目的とした環境施策「7 Go Green」(図表1)を経営方針として掲げています。例えば、セブンイレブンの店舗に太陽光発電パネルを設置したり、エアコンの使用を最小限に抑えられる素材で店舗を建設したり、デリバリー用のバイクを電動化したりと、環境に負荷をかけないために様々な取り組みを行っています。
パナソニック エナジーには技術力とイノベーション、CP Allにはタイ最大の流通チャネルという強みがあります。リサイクル事業では互いの強みを活かして、両社が解決を目指す「環境問題」にアプローチできると考え、協業を決めました。
谷本氏:課題は多くありますが、その都度、両社で協力しながら解決することを意識しています。例えば、設置当初は認知度も低かったため、セブンイレブンに来店するお客様に、使用済みの乾電池を回収ボックスに入れてもらうこと自体が困難でした。一番多く入っていた物が、乾電池ではなくレシートだったこともあり、何とか回収率を上げようと、タップテープ氏とも協議を重ねました。
タップテープ氏:プロジェクトのレビューを行った結果、主な課題は①プロジェクトの認知度が低い、②設置場所が適切ではない、③物流コストが高いーの3点に集約されました。このうち、①と②は低い回収率の原因でもあるため、両社で議論し解決策を考えました。
①(プロジェクトの認知度)については、回収ボックスを目の引くデザインにするなどの工夫を行いました。さらに②(設置店舗)について、プロジェクト開始当初は、まずは環境意識が高い若者をターゲットとし、大学付近の店舗に設置しました。
しかし、結果として回収量が予想よりはるかに下回ってしまいました。大学は勉強する場所であり、日常生活を送る場所ではないため、使用済み乾電池の回収場所としては相性があまり良くなかったのでしょう。そのため、私たちは戦略を変えました。電池がよく売れる場所などのデータを元にして、改めて回収ボックス設置店舗の選定を行ったのです。
現在は、回収率や顧客情報等のデータを元に選定した1,000店舗以上に設置しており、バンコクのみならず72県を網羅しています。回収率も徐々に上がっています。この先は、回収ボックスの増加だけではなく、お客様の意識をどうリサイクルに向けるか、という観点からも改善を続けていきます。
谷本氏:リサイクル事業においては、「乾電池を使い終わったら回収ボックスに入れに行く」という行動をいかに習慣化できるかが重要だと考えています。そのためには、回収後の乾電池の行先や活用方法を知り、自身の行動がサーキュラーエコノミーの一部を担っていると認識していただくことが第一歩だと思います。
タップテープ氏:まずは、設置店舗を増やすことです。どの程度増加させるかは、回収率やリサイクル量のデータを元に検討していきます。また、若者を中心とした消費者の環境意識向上に向けた取り組みにも注力したいと思います。将来的には、回収した乾電池をリサイクルして新製品を作るなど、エコシステムとしてのスキーム確立を目指します。
谷本氏:回収ボックス設置店舗が31店舗だった2022年と比べ、約1,000店舗の設置に漕ぎつけた現在は、1店舗あたり毎月約80本の回収ができるようになり、回収率は確実に上がっています。タップテープ氏と力を合わせて設置店舗数を増やすことが、タイの人々のプロジェクトへの関心を高めることにも繋がり、世の中に環境意識の「うねり」を生み出すことができるはずです。そうして政府の関心度も押し上げられれば、最終的にタイ全土でのサーキュラーエコノミーの気運も上昇させられると信じています。
THAIBIZ No.157 2025年1月発行日タイ企業が「前例なし」に挑む! 新・サーキュラー エコノミー構想
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THAIBIZ編集部
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