ArayZ No.119 2021年11月発行コロナと観光業 in タイランド
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カテゴリー: 特集
公開日 2021.11.09
コロナ前、観光業は世界的に隆盛していた。
新興国の中間所得層の拡大、格安航空会社(LCC)や民泊サービスの普及などによって、国際観光客数は年々伸び続けて2019年に15億人に迫った。日本でも訪日外国人旅行者が7年連続で過去最高を更新し、19年は3188万人まで伸びた。
一部の観光地では、キャパシティ以上の観光客が訪れ地域住民に悪影響を与える、オーバーツーリズムが問題視されていた。
観光業は交通機関やホテルだけでなく、飲食店や娯楽施設、小売り、通訳やガイドなどのサービス業まで関連業種が多岐にわたり、産業としてすそ野が広い。そのため、観光消費は地域経済への波及効果が高い。
日本もコロナ前は20年に訪日外国人観光客4000万人、30年には同6000万人という目標を掲げていた。
それが新型コロナウイルスの感染拡大によって状況は激変してしまった。19年末から中国で報告されると徐々に各国に感染が広がり、20年3月11日に世界保健機関(WHO)が09年の新型インフルエンザ以来となるパンデミック(世界的な大流行)として表明し、同24日には大会史上初となる東京オリンピックの開催延期が発表された。
国内への流入を防ぐため世界各国で入国制限が実施され、かつてのような手軽な海外旅行は不可能になった。
旅客輸送実績を表す指標で旅客数に輸送距離をかけた世界の有償旅客キロ数は、世界各地で感染が広がった20年の第2半期から大きく落ち込み、特に国内線に比べて国際線への影響は大きかった(図表1・2)。
国際観光客数も20年は約4億人まで激減した。
過去のリーマンショックやアメリカ同時多発テロなどの際でも落ち込み幅は20%までで、なおかつ半年から1年半ほどで従来の水準に回復した。それら過去の危機と比べても、新型コロナウイルスの影響の大きさ及び長さは突出している(図表3)。
国際航空運送協会(IATA)は今年10月、新型コロナウイルスによる航空業界の損害額が21年だけでも520億米ドル(約5兆8000億円)、全体では2010億米ドル(約22兆円)にのぼるとの試算を発表した。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は今年6月、20年から21年にかけて新型コロナウイルスが世界の観光業に与えた損失額は4兆米ドル(約450兆円)に達する可能性を明かした。20年だけで見ても、2・4兆米ドル(約274兆円)に及ぶという。
世界中で多大な犠牲を払いながらも、幸いなことに通常より早いペースで新型コロナウイルスのワクチンが完成。多くの国でワクチン接種が進み、国際的な人の往来再開に向けて規制の緩和などに動き出した。
ただ、新たな感染拡大の波などへの警戒も怠れない。国連世界観光機関(UNWTO)によるアンケートやIATAの見通しを見ても、コロナ前の水準に回復するには数年かかるというのが大方の見方だ。
観光業はGDPの20%ほどを占め、タイ経済を支えてきた重要な柱。様々な人気旅行先ランキングの上位には必ずと言っていいほど登場し、2019年の訪タイ外国人旅行者は約4000万人と、世界中から観光客が訪れた。
しかし、コロナ禍で訪タイ外国人旅行者は20年に前年比約80%減の670万人にまで減少。渡航制限下の昨年4月から今年3月までの1年間で見れば、約3万人にまで落ち込んでいる。人気観光地でシャッターを下ろした多くの店舗を見たタイ在住者も多いだろう。まさに観光業はかつてない危機にさらされた。
タイには中国のシノバック製ワクチンが今年2月24日に届けられ、3月から一般のワクチン接種が始まった。インバウンド需要を取り戻そうと、7月にはワクチン接種完了者には検疫隔離を免除するサンドボックス制度もプーケットなどでスタート。4ヵ月間で5万人以上の外国人旅行者が訪れた。
10月下旬時点でタイのワクチン接種完了者の割合は40%ほど。それでも、11月からは条件付きながら入国時の隔離免除も開始する。21年以降本格的な観光業の回復が期待される。
ArayZ No.119 2021年11月発行コロナと観光業 in タイランド
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THAIBIZ編集部
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