ArayZ No.104 2020年8月発行タイ現地化4.0 - コロナ禍とその後を生き残る、生産性高い組織の作り方
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.08.10
日系企業で働く駐在員の中には社用車ドライバーが付く人も多い。自宅、オフィス、客先へと駆け回り、1日の終わりにドライバーが持つ用紙へ駐在員がサインする。そんな“紙”をベースとした勤怠管理を、簡単にデジタル化する製品が生まれた。
自動車のラッピング広告などモビリティ関連事業を手掛ける2017年創業の日系スタートアップ、Flare(神谷和輝CEO)がこの度開発したのが、スマートフォンのアプリを使ったクラウドドライバー管理サービス「FlareDash」だ。
今でも社用車ドライバーの勤怠管理はほとんど紙で行われている。ドライバーがノートに日々の勤務開始・終了時刻や走行距離を手書きで記入し、利用している駐在員が承認のサインをする。「FlareDash」はその一連の作業を簡単なスマートフォンの操作に置き換えることに成功した。
開発のきっかけは、神谷氏がある日系企業の駐在員から聞いたドライバーの不正だった。海外出張で不在なのに、サインを偽造され連日出勤したことになっていた。その駐在員のサインを真似る練習をした紙まで見つかったという。
「調べてみると、日系、外資、ローカル問わず、ほぼすべての企業が社用車ドライバーの管理を紙で行っていました。さらに近隣国にも同様の問題があることが分かり、市場が大きいのではないかと、開発を進めることにしました」(神谷CEO)。
いち早く導入したのが、Flareと業務提携を結んでいる豊田通商(タイランド)。昨年末から100人以上の社用車ドライバー全員の勤怠管理を「FlareDash」で行っている。
「日本人にとって勤怠管理は目に見えない部分です。紙で行っていると、ドライバーに管理が委ねられており、毎月総務に提出する時に数字をごまかしたりと、不正の温床になりかねません。今はもう誰も紙を使っておらず、100%移行することができました」(大場清義社長)。
FlareDash」で提供されるのはドライバー用の打刻アプリと管理者用の勤怠管理ダッシュボード、そして通話アプリLINEによる勤怠通知の3つ。
スマートフォンのGPSと連動させ、事前に設定された駐在員の自宅付近に到着すると、ドライバーはアプリで勤怠を打刻でき、駐在員にはLINEで通知される。ドライバーはアプリを開き、押すだけ。駐在員は介在することがない。不正防止のため、出張時など自宅以外では、駐在員が持つパスワードを入力しないと打刻できない仕組みだ。
厳格な管理にドライバーから大きな反発があるかと思われたが、実際は「むしろ駐在員とドライバーの関係は良くなりました。駐在員も疲れていたりすると、サインをその日にしない場合があります。しかし、ドライバーにとっては収入に直結する大事な作業。後回しにされては、あまり良い気はしません」(大場社長)。
会社側としても、ドライバーの給与計算工数を大幅に削減できた。従来は毎月、紙に書かれた走行距離、時間などを一つずつエクセルに入力して算出していた。手作業なため手間が掛かる上、数字の見間違いなどミスも生じやすい。新型コロナウイルスが世界中に広がる中、ドライバー全員から紙を集めなければならず、感染のリスクも生まれる。
管理者ダッシュボードには自動的に勤務時間や走行ルート、距離が反映される。給与計算ソフトと連携させれば作業はすぐに終わる。「総務の作業時間もかなり低減できました」(大場社長)。これはドライバー派遣会社にとってもメリットは大きい。これまではドライバーを増やした分、紙から集計する作業も増えていた。「FlareDashならドライバーが増えても総務のコストはほとんど変わらず、利益が上がりやすくなります」(神谷CEO)。
高齢のドライバーもいるため、誰でも使いやすいよう操作性や表示の見やすさにもこだわった。既存の車両管理システムのように、新たに車載機器を取り付ける必要もない。
Flareは17年にまず自動車のラッピング広告プラットフォームを開始。登録台数は数万台にのぼった。昨年には「FlareDash」のベースとなる、スマートフォンで自動車の運転動態とドライバーの挙動を分析する「FlareAnalytics」を開発した。今回の「FlareDash」も「FlareAnalytics」と併用することができ、急ブレーキ、急発進の頻度などから各ドライバーの運転動態を点数化できる。
また、古いスマートフォン向けに、LINEによる勤怠通知と打刻時の位置情報が利用できる簡易版「FlareDash Lite」も提供している。
タイでは豊田通商(タイランド)以外にも複数の大手日系企業が導入を検討。インドネシアやミャンマー、カンボジアなどの日系企業、ドライバー派遣会社からも引き合いがあり、近隣国への展開も力を入れる。
スマートフォンの普及も後押しとなった。大場社長は「数年前までスマートフォンを持っているドライバーはまだ珍しかった。今ではほとんどのドライバーがGPS付きのスマートフォンを使用しています」と変化を実感。
神谷CEOも「デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が最近よく使われますが、ドライバー管理はこれまでデジタル化されていませんでした。社用車の稼働率などを改善しようにもデータがなかったのです。そこをデジタル化できれば、包括的な改善に結び付けることができます」と語る。
また社用車ドライバーだけではなく、物流トラックドライバー、営業・配達車ドライバーなどの勤怠管理としても応用でき、既に導入している企業もある。
これまでのサービスを通して、技術、データを蓄積しており、神谷CEOは「自動車保険など新たなサービスも開発していきたい」と意気込む。大場社長も「彼は目の付け所がユニークで鋭い。今、データがどんどん貯まって、大きな財産になっています。それをいかに新しいビジネスに結び付けていくかが次のステップ」と評する。
今後も、デジタル技術を通じて社会課題の解決を目指していく。
Flare(Thailand) Co.,Ltd.
Tel:02-163-4354
E-mail: [email protected]
496-502 Amarin Building, 9th Floor. Unit No.2, 2.1 Phloen Chit Rd, Lumphini, Pathum Wan District, Bangkok
https://ja.flare-dash.com/
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THAIBIZ編集部
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