ArayZ No.129 2022年9月発行キーワードは「協創」日タイ関係新時代
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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2022.09.10
大麻解禁。このニュースに驚いた人も少なくないだろう。2022年6月9日、タイ政府は大麻を禁止薬物のリストから除外し、タイはアジアで最初に大麻を解禁した国となった。そこで今回はタイの大麻規制について概観する。
タイにおいて、大麻は麻薬法の下で第5類麻薬に分類されており、長年にわたってその扱いが厳しく制限されていた。しかし、今回の規制緩和により大麻は同法の指定リストから外れ、もはや違法薬物ではなくなったことになる。もっとも、これはTHCが0・2%未満の大麻抽出物に限られる。
昨今の規制緩和により、THC含有率が基準値を超えるものを扱わない限り、タイで栽培された大麻については許可を要することなく所持・販売・使用できるようになった。現在多くのストアや飲食店において、大麻成分入りの商品が広く販売されているのはこの影響である。念を押すが、このように扱われるのはタイ国内で栽培された大麻のみである。タイ国外で栽培された大麻由来の製品については、仮にTHC基準値を超えていなくとも依然として麻薬扱いとなる。
ちなみに、大麻には色々な分類や表現があるが、規制上は「カンナビス」と「ヘンプ」の2つに区別されることが多い。カンナビスに分類される種は、一般的に幻覚作用や記憶への影響等をもたらす可能性のある向精神作用成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」含有率が高いことに対し、ヘンプに分類される種のTHC含有率は低い。後述する新法においても、この2つが区別されている(参考として、一般用語の「マリファナ」はTHC含有率が高いものを指す)。
一方、この大幅な自由化は新しい法律によって今後一定の規制に服することになると思われる。現在(22年8月15日時点)、国会では「Cannabis Hemp Act」という新しい法案が審議されているためである。同法の草案は以下のような規制内容を含み、大麻販売等はライセンスを得た場合にのみ可能になる予定である。
なお、同法施行前であっても大麻の誤用を防止するため、タイ保健省は公衆衛生法や伝統医薬法といった既存の枠組みの下で通達を出すことにより、一定の規制を課している。それによれば、例えば公共の場で大麻を吸引することは一種の迷惑行為として違法になり得る他、未成年や妊婦に対して大麻を販売する行為等も禁止される。これらは新法施行前の段階であっても、大麻の誤用拡大を防止するための当面の措置として位置付けられよう。
上記が規制の概観だが、本誌の読者が実務上直面しているのは職場での大麻製品の取り扱いだろう。規制緩和されたことで、大麻製品が職場に持ち込まれるケースも少なからず見られるところ、どのように対応すべきだろうか。
まず、就業時間中の大麻製品の使用を就業規則等によって禁止すること自体は可能だと思われる。しかし、現行法において基準値内の大麻製品はもはや違法薬物ではないため、重大な違反と捉えることは難しい。例えば、喫煙が規則上で禁止されている場合の「就業時間中の喫煙」と同程度の違反として位置付けられよう。
他方で不眠やうつ症状、痛みなどの緩和を目的に、医師の指示の下で大麻成分入りの医薬品が処方される場合があるため、このような医薬品の使用まで一律禁止とするのは行き過ぎである。医師の指示の下で大麻成分入の医薬品を使用することは違反とせず、「就業時間中に使用する場合は、事前に上長に医師の処方箋を示すこと」などとしておくといいだろう。
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士 藤江 大輔
2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所パートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。
URL: https://gvalaw.jp/global/3361
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THAIBIZ編集部
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