ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向
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カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
公開日 2021.09.09
タイをはじめとするアジア各国で絶大な影響力を持つ財閥系コングロマリット。足元のコロナ禍、東南アジアを代表する企業の勢力図や経営方針はどのように変化しているのか、RCEPを見据えた域内での競争力向上をどのように実現させようとしているのかなど、本連載ではMUFGグループのシンクタンクである三菱UFJリサーチ&コンサルティングが解説していく。
第1回目はタイ財閥企業の全体像および特徴について取りまとめる。
まず周辺国との比較で見たタイ財閥の位置付けについて解説する(図表1)。
タイは歴史的にほとんどが華僑系の民間企業である。例えばタイ証券取引所(SET)に上場する企業の約75%がファミリービジネスであり、タイの国内総生産(GDP)の80%以上も占めるほど存在感を持っている。
歴史的にもタイと中国の繋がりは緊密で、13世紀のスコータイ王朝の時代より中国商人の往来や移住などが活発だった。
タイの華人系人口については、ASEANではインドネシアに次いで700万~1000万人存在すると推定され、タイの食品・小売りを主とする有力グループであるチャロン・ポカパン(CP)グループは、そのルーツを辿ると潮州系である。
同様に主要財閥は、大半の出身が中国南岸部に集中しているなどの特徴があり、中国の政財界との人脈が太い財閥も多い。
2点目は海外展開、特にASEAN域内への投資に積極的である点である。 タイ国内市場が飽和し、自社の競争力維持のためにもベトナムやインドネシアなど潜在市場への展開が、今後の伸びしろとして期待されている。
中でも2010年代に入り積極的に域内投資を手掛けてきたサイアムセメントグループ(SCG)は代表的な事例である。
SCGは19年、インドネシアのパッケージング企業であるPT Fajar Surya Wisesa Tbkの株式55%を6億6500万米ドルで買収し同国への事業強化を図った。17年に地場の建材企業を買収するなど、最も力を入れている国の一つであるベトナムには石油化学コンビナートを造成しており、22年稼働開始を目標に19年から22年にかけて約56億米ドルの投資を計画している。
また、タイ最大の小売財閥であるセントラルグループも、16年にベトナム小売り大手Big Cを11億4000万米ドルで買収するなど積極的な姿勢を見せている。
具体的なタイ財閥の顔ぶれについては、世界の上位公開企業2000社を順位付けしたForbes Global 2000が有益な情報源となる(図表2)。
今年5月に発表された21年版では、タイからランクインした企業は14社となった。
周辺国のASEAN財閥同様、金融系が約4割を占め構成比が高い点は共通しているが、国営の資源最大手のPTTがトップを維持し、王室系のSCGやタイ商業銀行(SCB)が上位にあり、またタイを代表する食品・小売大手のCPグループが躍進したことが特徴といえる。
本ランキング圏外の企業名などを見ても業種別にはさまざまであるが、タイが「アジアの食卓」という別名を持つだけあり、前述のCPグループをはじめベタグロなど農業、食品・飲料由来のコングロマリットが多く見られる点も特徴として挙げられる。
また、近年は「中進国の罠」からの脱却を図るタイ政府の産業高付加価値化の施策にリンクし、「Thailand 4.0」などの政策に連動した注力分野への投資も見られる。特にEV、デジタル、IoTなどの事業に参入する動きが多く見られるのも特徴である。
次回連載はこれらタイ財閥において不動のトップを維持しているPTTグループを中心に動向の整理を行う。
ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向
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MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director
池上 一希 氏
日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に入社、2018年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等に取り組む。
MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
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三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、 民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援など幅広い事業を展開しています。
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