B.Grimm Groupの変遷と今後の展開

THAIBIZ No.149 2024年5月発行

THAIBIZ No.149 2024年5月発行総合商社の成長戦略

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B.Grimm Groupの変遷と今後の展開

公開日 2024.05.10

タイ国内のみならず、海外でも多大な影響力を見せる財閥系コングロマリット。在タイ日系企業やタイ進出を検討する日系企業にとって、その動向は見逃せない。本稿では、エネルギー事業を主としたタイ有数のコングロマリットであるB.Grimmの変遷や、その成長を支えた先駆者精神について解説する。

基本的な企業情報

B.Grimm Groupの基礎情報
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成  (※1)売上が確認できた企業情報を基にMURC概算

B.Grimm Groupはタイでも有数の老舗のコングロマリットである。創業は、ラーマ5世の治世の時代であった1878年である。タイにおける最初の近代医療に沿った薬局「サイアム・ディスペンサリー」の開業が始まりだった。創業者はドイツ人のベルンハルト・グリムとオーストリア人のエルヴィン・ミュラーである。初期にB.Grimmに参画したリンク家が株式を保有しており、現在の経営の実権は、3代目のハラルド・リンクが握っている。

グリーン・ボンド発行の署名式

現在では祖業から離れ、ヘルスケアや建築、工業インフラ、不動産、Eコマース、運輸と幅広い事業を展開しているが、一般のタイ人が想起する同社の主力事業はエネルギー事業である。

エネルギー事業はB.Grimm Power社を中心として、グループ全体の8割の売上を占めている。次いで工業・インフラ事業が約1割であり、ポートフォリオのバランスとして特定分野にやや偏重していることもこの企業の特徴であるといえよう。歴史的背景からドイツ企業との強い関係を保有していることから、独企業にとってタイへの橋頭保としての役割を担っており、現在でもドイツのシーメンス、KSB、Merckなどの大企業とは協業関係にある。

B.Grimmの成功は、大胆な事業拡大とタイ経済の構造変化に伴う事業ポートフォリオの組み換えによる賜物といえる。

まず同社は政府との関係を歴史的に重要視してきた。祖業は薬局事業であるものの、王室や政府からの依頼とあれば、ノウハウのない事業にも新規参入し積極的な投資を厭わなかった。

1994年には、同社として知見の薄いインフラ整備に、シーメンス社と共にタイ初の高架鉄道BTSの建設とインフラ整備に参画したが、その2年後には発電所を買収し、エネルギー事業にも参入。タイにおける経済成長とともに、重工業のみならずエネルギー事情の整備が軸となることを見据えて中核事業をB.Grimm Powerに切り替え、現在のB.Grimmの事業の根幹を築いてきた。

セマングムの発電所

現在中核のエネルギー事業では、1990年代よりタイ国内大手の工業団地デベロッパー・アマタ社と協業し10ヵ所の発電所を開発するなど、タイ工業のバックボーンを一手に担う成長を見せた。2010年代にはレムチャバン港、ウタパオ空港、マプタプットガス田近郊などにも熱併給発電所を展開し、また同時期に海外展開を活発化させ、B.Grimmはタイ有数のエネルギー事業者として名を馳せることとなった。

B.Grimmの今後の展開〜3つのマイルストーン〜

B.Grimm事業ポートフォリオ
出所:同社HPよりMURC作成

今後の方向性として、同社は3つのマイルストーンを掲げている。一つ目は祖業への原点回帰であり、薬局事業を担うB.Grimm Pharmaの投資を本格化させることである。具体的には、B.Grimm Pharmaは2030年までに薬局シェアナンバーワンを目指すとしており、450万人へのエンゲージを目標としている。

次に、工業・インフラ事業とエネルギー事業の協働である。具体的にはビルインフラや工場インフラのデジタル化、メンテナンス事業への拡大、EV充電ステーションの展開を掲げており、さらにはB.Grimm Powerとのシナジーを高め、太陽光発電システムのターンキー敷設なども計画している。

三つ目は、後述する脱炭素施策の強化であり、2050年ネットゼロ・エミッションを予定している。再生可能エネルギー分野を強化することでB.Grimm Powerの2030年までの発電容量1万MW達成を目指している。

ASEAN有数の脱炭素推進企業

同社の脱炭素施策については特筆すべきものがある。例えば2015年時点では、同社の電力構成比は化石燃料由来が85%と高い依存度であったが、この10年で再生可能エネルギーへの投資を加速させている。

特に同社は、世界の気候変動対策への寄与として再エネの世界的普及が最重要であるとしており、近年は再生可能エネルギー分野における海外展開を加速している。その手段も多様化しており、自前での参画として日本(岐阜県)での20MW規模の太陽光発電と、韓国での20MWの陸上風力発電を計画。またM&Aの活用事例として、韓国でSaemangeum Sebit PowerとKOPOS Co., Ltd.を、欧州ではイタリアにてRES Company Siciliaなど、再エネ事業者に対して買収を行っている。

直近では東南アジアおよび東アジアへの投資が続いているが、シリウォン副社長は報道に対して「地域をえり好みするわけではなく、今後はアメリカとオーストラリアの洋上風力への投資に向けてのスタディを行う」としており、文字通り全方位攻勢を仕掛けると評価されている。

また、ファイナンス面での工夫もみられる。同社は2018年にタイ初のグリーン・ボンドを発行し、50億バーツの調達を公表。発行はアジア開発銀行の協賛のもと、英国の国際NGOであるクライメート・ボンド・イニシアチブ(CBI)によって承認された債権として発行された。当時のパリーヤナートCEOは「B.Grimmの豊富なエネルギー事業経験が評価された。

当社は気候変動および環境への意識を高めている。資源の有効活用と環境問題への対策として初の試みであるグリーン・ボンドにて調達する50億バーツは、再生可能エネルギーの充足に向けて活用する」とコメントを残した。調達したグリーン・ボンドも含めて同社は、2019年にはベトナムにて発電規模257MWを誇る東南アジア最大のソーラーファームを開発しており、注目を集めている。

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MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director

池上 一希 氏

日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に入社、2018年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等に取り組む。

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Consultant

池内 勇人 氏

製造業全般の現場管理サポート、業務効率化サポートや新工場立ち上げなどを経験。2021年にMURCタイに入社、タイをはじめ周辺国へのビジネス展開支援、市場調査、企業ベンチマークなどの業務を担う。

MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.

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三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、 民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援など幅広い事業を展開しています。

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