ArayZ No.129 2022年9月発行キーワードは「協創」日タイ関係新時代
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2022.09.10
ベトナムには現在、外国で就労するベトナム人労働者に対する送り出し分野の行政違反の処罰について定めるDecree No. 12/2022/ND-CP号(以下「政令12号」)があります。これには就職サービスや労働派遣サービスなどの労働関連サービス業、採用から労働契約解除までの一般労務、労働安全衛生、女性の雇用、外国人の雇用、未成年者の雇用など多岐に渡る場面に加えて、職場におけるセクシャルハラスメント(以下「職場でのセクハラ」)に対する罰則規定も含まれています。
さらに当地の報道によれば、関連当局は新たに職場でのセクハラに対する行動規範の改正草案を作成しています。今回は、改正草案における職場でのセクハラの定義及び罰則規定の概要と共に、日系企業におけるポイントをご紹介します。
改正草案では、職場でのセクハラを「他人に対する性的な性質を有する行為であり、相手が望まない、または承認しないもの」と定義し、「身体的セクハラ」「言語的セクハラ」「非言語的セクハラ」の3種類に分類しています。
「身体的セクハラ」には行動や身振り、性的な身体接触などが含まれ、「言語的セクハラ」は性的な内容を含む直接の発言や電話、電子的手段を通じた発言、本人がいる前またはその人に向けた衣服や身体についての言動、しつこく外出に誘うことなどが含まれます。そして「非言語的セクハラ」には、ジェスチャーや連続的なウインク、わいせつな資料の陳列などが含まれます。
改正草案による上記の定義は具体性を欠いており、どのようなジェスチャーであればセクハラに該当するのか、ウインクはどれくらい連続的であればセクハラに該当するのかなど、今後さらに検討の余地がある内容となっています。ただし、仮に改正草案の内容で職場でのセクハラに対する行動規範が成立したとしても、法令ではなく、あくまでも行動規範であるため強制力が無く、どの程度社内規定などに反映する必要があるかという点も不透明な状況です。
現行労働法では、職場におけるセクハラ対策を就業規則に盛り込まなければならないなど就業規則違反による懲戒対象はあるものの、刑法におけるわいせつ行為や性的犯罪に対する罰則を除いては特に罰則が存在していませんでした。しかし本政令により、刑事責任追及をするに至らない職場におけるセクハラ行為に対して1,500万〜3,000万VNDの罰金が設定されるなど新たな罰則が加わり、注意が必要です。
日本においてもセクハラの判断基準はよく議論の対象となりますが、ベトナムにおいてはセクハラに対する社会的な認識がまだまだ低く、新たに策定される職場でのセクハラに対する行動規範を参照し、社内でセミナー等を開いて定期的にセクハラに対する意識を啓蒙し、罰則の適用を受けることの無いよう対応していくことが推奨されます。
以上、今回は特に日系企業におけるポイントを少しだけ紹介させていただきました。職場でのセクハラに対する行動規範について正式な発表がされた際には、情報をアップデートさせていただきます。
松谷 亮
One Asia Lawyers 日系大手のIT企業および化学・電子部品メーカーにて社内弁護士として合計5年間勤務後、2019年よりOne Asia Lawyersベトナム事務所へ入所。クロスボーダーの新規事業開発案件、取引相手との紛争処理案件、知的財産に関する契約交渉、紛争処理案件を数多く経験しており、IT・製造業の法務案件を専門とする。
山本 史
One Asia Lawyersベトナム事務所に駐在。ベトナム国内で10年以上の実務経験を有する。ネイティブレベルのベトナム語を駆使し、現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対して各種法的なサポートを行う。
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THAIBIZ編集部
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