カテゴリー: DX・AI
公開日 2024.02.19
TJRI(タイ日投資リサーチ)では1月31日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第22回として、工業団地開発大手のアマタ・コーポレーションに登場いただいた。同社は、1989年の創業以来、タイを中心に工業団地の開発を手がけ、現在は大メコン圏(Greater Mekong Subregion:GMS)に特化して事業を拡張している。田辺英一副最高経営責任者(副CEO)と須藤治最高マーケティング責任者代理が、同社が手がける工業団地の特徴と現在力を入れているスマートシティ開発、さらに日本企業の協業で期待する分野を説明した。
目次
1989年にアマタシティ・チョンブリーの開発を皮切りにタイ国内はチョンブリーとラヨーンで4ヶ所の工業団地を展開。さらに今後需要が見込まれるベトナム4ヶ所、ラオス2ヶ所の戦略的な立地でも工業団地の開発を手がけており、GMS域内においてワンストップで用地提供ができるのが当社の強みだ。アマタとは、サンスクリット語で「永遠」という意味を持ち、プロジェクト名になっているアマタシティは、「永遠の街」づくりがコンセプト。アマタの開発エリアの総面積は、145平方キロメートルにおよぶ。30ヵ国、合計1400以上のグローバル企業の工場が事業を展開しており、工業団地内だけで30万人以上の雇用を生み出している。
各エリアのアマタ工業団地の概要は以下の通り。
アマタシティ・チョンブリー・・・アマタ工業団地の中で最大規模(46.87平方キロメートル)、800以上の工場が入居し、最も完成された工業団地として認知されている。日系企業の集積地で、自動車サプライチェーンのハブ。南西部にスマートシティ「セカンド・ヨコハマ」、北部にインターナショナル・スマートシティ・ゾーンの開発を進行中。
アマタシティ・チョンブリー2・・・2023年より開発を開始。国道331号線沿いに位置し、アマタシティ・チョンブリー1やレムチャバン港、ラヨーンの工業団地の中間地点の好立地で注目されており、将来的に自動車産業のハブとなりえる。
アマタシティ・ラヨーン・・・1995年から開発を開始し、現在までに450社以上が進出。特に中国からの投資が増加しており、中国系企業(41%)が日系企業(27%)を上回っている。
アマタシティ・ラヨーン2・・・2022年より中国企業との合弁で開発を開始し、中国企業に特化した取り組みを展開している。
アマタシティ・ビエンホア・・・ベトナムが外資の受け入れを開始した直後の1994年から開発を開始。ホーチミン市に隣接したドンナイ省の高速道路沿いに位置し、ドンナイ省の中でも特に成功しているとされる工業団地。
アマタシティ・ロンタン・・・2015年に開発を開始。ロンタンに開港予定の新国際空港から10キロメートルの高速道路沿いに位置し、ホーチミンにも隣接。商業港であるカットライ港からも近く、輸出入の利便性もよい。将来的に工業及び商業地区として発展が見込まれる。
アマタシティ・ハロン・・・2018年に設立。港湾都市ハイフォンから中国との国境の町モンカイを結ぶ高速道路沿いに位置。輸出入の拠点となるラックフェン港にも隣接した戦略的立地。経済特区に指定されており、税制優遇あり。スマートシティ開発も計画している。
クアンチ工業団地・・・ベトナム中部のクアンチ省に住友商事、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)との合弁で2022年に設立した工業団地。今後、順次拡張予定。
アマタスマート&エコシティ・ナトゥイ/ナモー
ラオス北部の中国国境付近のナトゥイ及びナモーは、中国国境からビエンチャンを結ぶ中国ラオス高速鉄道の駅がある。今後鉄道網がタイまで伸張され、レムチャバンと結ばれれば、このエリアが投資の受け皿となり、中国とASEANのゲートウェイとして発展することが見込まれる。現在同時進行で開発中。
日本企業は、近年タイよりベトナムへの投資の方が若干多いが、中国はタイへの投資が顕著になっており、土地売買の件数だけで見ると、中国企業の割合が非常に大きい。背景の一つに、昨今の米中貿易摩擦により、輸出を主としている中国企業は、中国から出る必要があることだ。その中でASEANは非常に大きな投資先で、特にタイへの投資が増えている。輸出をメインにしているため、土地代が比較的安く、レムチャバン港に近いラヨーンが好まれている。また、業種もEV関連に限らず、エレクトロニクスや一般工業など多岐にわたる。中国企業だから質が悪いや失敗しているといった悪影響はない。ただ、日系企業とのつながりなどの相乗効果は、今のところはあまり見られず、今後の課題だと感じている。
日本企業によるタイへの新規投資はすでに出尽くしており、現在0から会社を立ち上げて運営することは少なく、拡張案件がほとんどだ。新規投資においては、人件費やランニングコスト、インフラ面を加味して、ベトナムがASEANの中では最も注目されている。一方で、タイはサプライチェーンや物流インフラが整っており、高い生産性などの利便性をすぐに享受できるのが強みで、まだ拡張の余地があるだろう。また、香港やシンガポールなどに地域統括本部を置いている企業が、今後製造現場に隣接したバンコクにその機能を求めるようになれば、われわれの工業団地は立地的にも利便性があり、価値も上がると考えている。
水道、電力、産業・スマートサービス、廃棄物管理など工業団地内に提供するユーティリティー関連の14以上の子会社をAMATA Uという会社に統合し、今後はより効率的な運営を目指している。
また、成熟段階の工業団地の次の発展を見据えて、アマタシティ・チョンブリーに隣接する形で現在2つのスマートシティを開発している。1つは、環境に配慮したスマートな都市づくりをコンセプトに横浜市の支援のもと開発中のセカンド・ヨコハマシティだ。2つ目は、チョンブリー工業団地の北部に開発しているインターナショナル・スマートシティ・ゾーン。その名の通り、日本や台北、中国、韓国、EUといった国(地域)をテーマとしたスマートシティと、最先端医療を提供するメディタウンやハイテク産業を集積した産業エリアも設ける予定だ。
アマタでは、現在注力しているスマートシティ開発で日本企業の協業パートナーを募集している。具体的には、AMATA Uとのユーティリティー関連事業(設備管理やセキュリティー管理、産業廃棄処理など)の協業パートナーとチョンブリーで開発中の2つのスマートシティ開発の協業パートナーだ。
セカンド・ヨコハマシティは、既存の商業エリアなどを含めたマスタープランを考えており、その上で新たな住宅施設などへの投資や合弁企業での開発をしていけるパートナーを求めている。一方、Japanese Smart Cityはこれからコンセプトを作り上げる段階にて、不動産開発のみならず都市管理やインフラに関わる部分で、日本企業からの提案を期待している。
何れにせよ、タイに限らずこのような立地優位性のある場所で大規模な土地を確保できているケースは稀であると自負しており、是非、皆さんと協力して行きたい。
TJRI編集部
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