カテゴリー: 協創・進出, 食品・小売・サービス
公開日 2023.10.31
TJRI(タイ日投資リサーチ)では9月13日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第19回として、日本人にもっとも馴染みのあるタイの老舗ブランド「シンハービール」を展開するブンロード・グループ傘下のブンロード・トレーディングに登場いただいた。ブンロードグループは現在、既存の飲料事業の強化とともに、新規事業の開拓を目指しており、共に事業を拡大していくパートナーを探している。「ブンロード・トレーディング」と「シンハー・ワールドワイド・インターナショナル」の最高財務責任者(CFO)兼最高戦略責任者(CSO)であるヴォラパット・チャワナニクン氏がグループの事業概要、日本企業との提携の可能性などについて報告した。
目次
ヴォラパット氏:ブンロードグループは91年前に操業し、現在のプーリット・ピロムパクディーCEO(最高経営責任者)が4代目になる。グループ内には全部で217社があり、1万4000人以上の従業員がいる。 また、タイ国内に14の工場があり、食品・飲料製品やパッケージを生産している。主な事業は以下の6つだ。
1)食品・飲料事業:グループの中核事業であり、ビールではシンハービールとレオビールが主要製品。市場シェアは「レオ」、「シンハー」の両ブランド合わせて、国内トップ。また、ノンアルコール飲料では、ソーダの市場シェアが90%以上で、新製品の「シンハーレモンソーダ」が缶入りの無糖炭酸飲料市場でシェアトップ。このほか飲料水なども販売
2)パッケージ事業:子会社の「バンコクグラス」がガラス瓶、水筒、製品の包装などを生産
3)不動産事業:賃貸オフィス、コンドミニアム、国内外でホテルを展開
4)物流 :子会社の「Boonrawd Supply Chain」と「BevChain Logistics」で展開
5)飲食店と食品原料 : 8年前から日本のパートナーと「個室会席・北大路」というレストラン事業を展開
6)新規事業:ベンチャーキャピタル(VC)やエンターテイメント、太陽光発電など
ヴォラパット氏:国内外にさまざまなチャンネルを持っている。製品は伝統的小売りと近代的小売りを通じて、10万以上のタッチポイント(顧客接点)があり、2万6000軒以上のパブやバー、飲食店などにアクセスができる。また、世界50カ国以上に製品を輸出している。
ヴォラパット氏:2020年6月には亀田製菓との合弁会社である「シンハー・カメダ・タイランド」を設立し、米菓事業を拡大している。両社は協力して、生産能力を増強し、タイ以外にも顧客基盤を広げている。昨年の売上高は前年比22%増の24億ドル以上となった。将来、さらなる協力関係の強化を計画している。
また、アサヒビールとは10年以上の間、パートナーを組んでおり、タイ国内でのアサヒビールの製造・販売を行っている。そして、今年初めには東洋製罐と提携し、「カフェ・アマゾン」で、インスタントのアイスコーヒーと「Haru」ブランドというコールドブリュー(水出し)緑茶を発売した。東洋製罐が製品の生産を担当し、ブンロードとPTTオイル・アンド・リテール(PTTOR)が流通と販売を担当する。他の製品ではベトナム企業の「ヨットトーン」というナムプラー(魚醤)の生産・販売や、韓国企業の「Masita|という海苔スナックなども販売している。
ヴォラパット氏:ベンチャーキャピタルである「シンハー・ベンチャーズ」はさまざまな会社に投資している。その1つが「DouxMatox」というイスラエルの糖質低減テクノロジーの会社で、この会社が開発した砂糖は使用量を通常の半分に減らしても同じような甘味を感じることができる。これは砂糖の分子構造を変えることで、砂糖が舌によく付着し、甘味を感じやすくする技術を使っている。さらに、「Trax」というシンガポールの小売店向けのコンピュータービジョン・ソリューションの会社は商品棚の上にある商品の販売状況の情報を収集・分析する技術を持っている。また、数年前に世界最大の民泊仲介サイト「Airbnb」にも投資した。
ヴォラパット氏:われわれは、将来に向けてグループの事業を強化し、共に事業を拡大していくパートナーを探している。既存の川上・川下事業の拡大だけでなく、高い成長が見込める新規事業の展開も目指している。また、タイ市場に進出したい日本の商品も歓迎する。ブンロードグループの流通チャンネルを利用することができ、われわれはマーケティングの手伝いもできる。われわれはこれまでの日本企業との提携で豊富な経験がある。興味がある企業はぜひ声をかけてほしい。
ヴォラパット氏:シンハー・ベンチャーズを通じた投資や、企業の合併・買収(M&A)、合弁事業などあらゆる形の提携を求めている。具体的には次の通りだ。
(1)食品・飲料・食材における新製品の開発/生産/販売パートナー
・飲料
・食品とスナック(従来型と健康型も可能)
・プラントベースフード / 代替タンパク質
・調味料と食品原料
・タイに進出にしたい日本食レストランや商品など
(2)再生可能エネルギー関連のテクノロジーを持つ協業パートナー
・グリーン水素
・バイオガス
・太陽光発電
・カーボンクレジット
・バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)
(3)食品飲料事業に関するテクノロジーを持つパートナー
・人工知能(AI)/ 機械学習(ML)
・持続可能な包装 / 技術テクノロジー
・小売DX
(4)食品飲料事業におけるすべての工程での連携、持続可能性の確保、事業効率向上のためのテクノロジーを持つパートナー
・新製品開発プロセスを改善し、顧客のニーズを反映
・生産工程の最適化
・販売、配送工程の最適化
・アフターサービスと顧客のロイヤルティーの向上
・ビール製造から出る副産物に付加価値をつける技術
TJRI編集部
SHARE