中国スマート工場に学ぶ、AI時代の製造業の勝ち筋 〜NRI×アリババが明かす、タイ製造業のためのAI実装戦略

THAIBIZ No.173 2026年5月発行

THAIBIZ No.173 2026年5月発行いま、日本のスタートアップがタイに向かう理由

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中国スマート工場に学ぶ、AI時代の製造業の勝ち筋 〜NRI×アリババが明かす、タイ製造業のためのAI実装戦略

公開日 2026.05.11 Sponsored

中国のスマート工場は、品質・納期遵守・生産性・在庫効率まで同時に引き上げる総合的な実装力を備える。安価な中国製品の流入が加速するタイの製造現場は、今後どのように競争力を維持すべきか。

野村総合研究所(NRI)タイは3月13日、アリババ・ジャパン株式会社と共催でセミナー「AIの“次の一手”:世界標準の知見をタイ製造業の競争力へ」を開催した。世界最前線の人工知能(AI)事情と、タイの現場で今すぐ使えるヒントが提示された。同セミナーのハイライトを紹介し、タイ製造業の「次の一手」を探る。

中国企業のAI活用はなぜそこまで早いのか

アリババ・ジャパンのPrincipal of Technology、大和田健人氏

まずアリババ・ジャパンのPrincipal of Technology、大和田健人氏が登壇し、「世界最先端のスマート工場の44%以上が中国に集中している」という事実を示した上で、「通常は製造現場をどのようにIT化するかを考えるのに対し、中国はITが先に進化し、そこから製造現場を変えてきた」と中国の根本的なアプローチの違いを指摘した。

その象徴が中国独自のデジタルトランスフォーメーション(DX)フレームワーク「中台」だ。データと業務プロセスを中間層に集約し、現場はノーコードで柔軟にシステムを開発・改善できる仕組みで、AIによるリアルタイムな意思決定を可能にする。

同氏は「中国大手家電メーカー美的集団(Midea Group)のタイ工場では、このアプローチで受注から納品のリードタイムを43%短縮、クレームが32%減少、歩留まり率を4%改善した。また、中小規模の製造業でも1ヶ月で生産リードタイムを33%短縮した」といった事例を紹介し、「中国企業は国内で成功したモデルをそのままタイに持ち込んでいる」と説明した。

さらに「日本企業が100点を目指している間に、中国企業はまず合格点を取り、そこから100点へ改善していく。このスピードの差が今の競争格差だ」と述べ、日本の企業経営の“OSアップデート”の必要性を訴えた。

AI導入における「3つの誤解」を乗り越えた改革実現

NRIシンガポールのパートナー&ゼネラルマネージャー、寺坂和泰氏

続いてNRIシンガポールのパートナー&ゼネラルマネージャー、寺坂和泰氏が「米中のテクノロジーを現場で見てきた視点」からAI導入における誤解を解説した。

中国テックの最大の特徴は「社会実装の速さ」だ。完成された大きなパッケージを一括導入するのではなく、公開されたアルゴリズムと技術者のエコシステムを組み合わせ、数ヶ月で現場に実装し、使いながら改善する。「データそのものは国境を越えられないが、AIアルゴリズムは越えられる。中国で成功したアルゴリズムをタイに持ち込み、タイの現場データを学習させれば実践できる」と寺坂氏は強調する。

さらに企業がAI導入に踏み切れない背景には、次の3つの誤解があると説明。

①大量のきれいなデータが必要なわけではない:現在のAIは、散在する非構造化データの整理・ナレッジ化そのものを担える。データが整っていなくても今から始められる。

②プロンプトを磨けば実務価値が上がるわけではない:複雑な業務プロセスを一気にAIで効率化するには限界がある。タスクを分割し、それぞれの判断・実行を自律的に行う「エージェント型AI」の登場で、業務の深堀をしながらAI実装をするのが正しい進化のステップだ。

③高度なAI導入には長期開発期間・基盤整備が必要というわけではない:完璧なデータ基盤を待つ必要はない。まずは現場で使い、実践ログを蓄積・学習しながら基盤を育てる「使いながら高度化」が最短ルートだ。

NRIはこれらの課題に対応するため、安心・安全な環境で複数の最新AIモデルを利用できるAIプラットフォーム「NriseAI」を提供。企業独自のルールを組み込んだ「エンタープライズAI」として、社内外のデータ・システムと連動した効率化や意思決定の高度化を支援している(図表1)。

NriseAI

タイの現場にAIをどう根付かせるか

NRIタイのスパカーン・クロンシンサッブ氏

最後の講演に登壇したNRIタイのスパカーン・クロンシンサッブ氏は、タイ製造業が直面する課題について、「人件費は年5%以上上昇する一方、一人あたりの付加価値の向上は年0.5%にとどまる。この10倍のギャップを埋めるには、従来の延長線上の改善では間に合わない」と警鐘を鳴らした。

一方で、「タイはAIへの受容性が高い国だ。『AI利用は有益』と肯定的に捉える人の割合は約77%に上り、日本や米国を大きく上回る。製造現場でも①AI外観検査、②予兆保全、③生産スケジューリングの最適化、という3領域でAI活用が広がりつつある」と説明。

それでも組織レベルでAIを業務活用できている企業は約30%にとどまるという。主な障壁は「投資対効果(ROI)の不透明さ」「データの未整備」「AI人材と現場のリテラシー不足」の3点だ。

NRIが提唱するのは、「価値・実現可能性・普及」の3要素を一貫設計するアプローチだ。在庫管理の事例では、入出庫データから最適在庫量を赤・黄・緑などの色で可視化する在庫管理専用AI「Onebeat」を導入し、管理者の意思決定の負担を大幅に削減しながら現場への定着にも成功した(図表2)。

「まず簡易シミュレーションでROIを算出し、ボトルネックに集中投資することが成功の鍵」とスパカーン氏は締め括った。

AIの真の価値は「全体最適」にある

パネルディスカッションでは、「タイの現場にどのようにAIを定着させるか」「中国テックの圧倒的スピードの源泉は何か」について議論が交わされた。

「なぜ中国企業はテクノロジーの活用がそれほど早いのか」という問いに対し、大和田氏は「中国は『早く・安く・効果が出る』が大前提。ゼロから作らず、外部エコシステムを使い倒すマインドがある」と答えた。

寺坂氏は「AIはコスト削減・省人化のツールと捉えられがちだが、新たな付加価値や市場を発見するツールとして捉えることが重要だ」と強調。

スパカーン氏は現場定着のコツとして「現場と経営層では刺さるAIが違う。現場には『自分の仕事が楽になるツール』として、経営層には『サプライチェーン全体を最適化するマネジメントツール』として訴求するなど、相手に応じて伝え方を使い分けることが鍵だ」と語った。

AI活用で「早く・安く・効果を出す」

世界標準のAIアルゴリズムを持ち込み、身近な業務データと組み合わせれば、中小規模の工場でも短期間・低コストで成果は出せる。「データが整っていない」「予算がない」は、もはやAI導入を先送りする理由にはならない。タイの競争環境を勝ち抜くために、生産効率の向上と高付加価値化は「選択肢」ではなく「必須条件」である。

<製造現場へのAI導入のお問合せはこちら>

本セミナー発表資料やアーカイブ動画のご提供も可能です。 詳細のご説明やご相談も承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

NRI Consulting & Solutions(Thailand)Co., Ltd.
担当:橋本秀勝
E-mail:hidekatsu.hashimoto@nri.com
担当:スパカーン・クロンシンサッブ(Noey)
E-mail:supakarn.khrongsinsab@nri.com

THAIBIZ編集部
岡部真由美

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