ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向
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公開日 2021.09.09
収まることを知らない新型コロナウイルスの脅威は、在タイ日系企業の事業運営にも多くの影響を与えております。
リモートワークやクラスター発生による工場での減産に加え、駐在員の帰任、ワクチン接種のための一時帰国等、日本人の引き揚げを加速させる企業がここ数カ月で増加しており、現地従業員中心の現場オペレーションやリモートによる管理体制の早急な構築を迫られています。
このような状況の急変時は、オペレーショナルリスクに加えて不正・コンプライアンスリスクが増加する傾向にあり、実際、不正事案が発覚したというご相談が急増しております。
本稿では、不正・コンプライアンスリスクの早期発見において重要な役割を持つ通報制度・プラットフォームを効果的に運用するポイントを解説していきます。
目次
PwCが隔年で発表している「不正経済犯罪実態調査」2020年度タイ版によると、在タイ回答企業の3社に1社で何らかの不正不祥事が発生しており、その内10%は100万米ドル以上、30%が10万米ドル以上の被害を受けたという結果になっております。
それら不正不祥事の発覚経路という切り口で見ると、社内外関係者による通告と通報制度が全体の30%と最も多くなっており、通報制度を効果的に運用することが不正不祥事リスクを早期発見する上で重要であることが見て取れます。
一方で、日系企業の皆様からは「なかなか通報が上がってこない」「不平不満のみで重要な情報がない」「とりあえず導入したけど形骸化してしまっている」といった、運用面における課題と苦労を伺う機会も多く、見た目以上に運用が難しいのも通報制度の特徴でもあります。
通報制度をより効果的かつ実践的に運用していくためには、主に3つの要件があります。
まずは、何よりも不正を容認しないという経営陣の姿勢を内外のステークホルダーに示すことが最も重要です。
現地語による企業倫理・行動規範の開示、折々での明確なメッセージの発信を通して従業員や取引先に自社のインテグリティを示すとともに、明確かつシンプルな通報ルールや判断基準を整備し、通報制度の周知活動、従業員の倫理トレーニングを通して、風通しの良い文化、声をあげることを推奨する文化を醸成していくことが求められます。
通報窓口の効果を最大限機能させるためには、誰もが気軽に簡単に安心して連絡できる仕組みでなければなりません。そのためのポイントとなるのが、通報チャネルの多様化、取引先など一部外部への窓口開放、通報窓口の外注、匿名性、セキュリティ、多言語対応です。
通報チャネルを例にとると、スマートフォンやタブレット端末に慣れ親しんだ世代等は、電話やメールよりも匿名でアクセス可能なウェブサイトやアプリ等の方が親しみやすいでしょうし、その逆も然りです。
また、通報先が社内の人間であることに抵抗がある従業員もいるため、第三者や匿名のプラットフォームを介するのも効果的です。
最後に重要なのは、通報内容に対して透明性が高く一貫した対応手続きを徹底することです。文化が醸成され、信頼できる通報チャネルが浸透するにつれ、精度の高い報告件数が増えることが想定されます。
通報内容をそれぞれのケースとして一元的に管理し、一貫性のある対応方針に基づき適切に対応することが必要です。
十分にケース管理が行われず、対応の要否を主観的に判断したり、通報者への適切なコミュニケーションを怠ってしまうことで、制度への信頼性、敷いては会社への信頼に傷が付いてしまいます。
通報制度は、運用の仕方一つで、企業価値の毀損を防ぎその価値を向上させることができる重要な仕組みとなると同時に、形式だけの遺物にもなりえます。大切なのは、明確な理念と仕組みの元、ステークホルダーの声(Voice of stakeholder)を効果的に取り込み、信頼関係を構築することなのです。
PwCタイ コンサルティング部門
ディレクター
吉川 英一
フォレンジック領域において日本国内外を含み計13年の経験を有し、2015年1月よりPwCタイに赴任。東南アジアにおける日本人フォレンジック専門家の第一人者として、不正調査、サイバーセキュリティ、データ分析、不正リスク管理体制の構築、半贈収賄コンプライアンス等の支援を多数指揮してきた。現在は、東南アジア域内における同サービスの日系企業向けの支援を管掌している。米国公認会計士。日本証券アナリスト協会検定会員。公認不正検査士。
Tel: +66 (0)2 844 1249(直通)
+66 (0)61 413 0774(携帯)
E-mail: [email protected]
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THAIBIZ編集部
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