ArayZ No.119 2021年11月発行コロナと観光業 in タイランド
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公開日 2021.11.09
本稿執筆現在(10月中旬)、タイ国内の一日の新規感染報告者数はピーク時から半減し、少しずつ落ち着きを取り戻してきました。そして、11月1日からはバンコクなどでもワクチン接種済みの旅行者の隔離検疫なしでの受け入れが計画されています。
しかし、これらの緩和はコロナ前に戻ることを意味するのではなく、サービス業態、ビジネス、働き方等の多様化やデジタル化等は引き続き加速していくと考えられます。
さらに言えば、今後いつ新たな危機が発生するか分からないという不確実性と企業は対峙していくことになるでしょう。このような大きな変化やさらなる危機を乗り越え、一見不利な状況を好転させ進化し続けるためには、強い弾性をもって回復することができるレジリエンスを高めていくことが重要となります。
危機対応という文脈におけるレジリエンスとは、変化する状況に対して十分な準備と柔軟性をもって適応し続け、そして、危機時の障害や混乱から迅速に回復することができる対処能力のことを指します。
この一年、オペレーション/サプライチェーン/ロジスティックス等の混乱による原材料の不足や生産コストの増加、工場でのクラスター発生に起因した労働力不足による減産、新しい働き方やデジタル化による追加投資や業務の混乱、そして財務・流動性の悪化等、世界各地で多くの企業が多大なインパクトを受けました。
このような危機状況下において、多くの企業が苦しい時間を過ごす一方で、そのマイナスの状況をプラスにして、迅速に回復・進化を遂げている企業もあります。
PwCが実施したグローバルクライシスサーベイ2021(以下「本調査」)によると、20%の回答者が「危機発生前より自社が好ましい状態にある」と回答しています。
本調査によると、危機下でレジリエンスをもって回復、進化したとされる企業を主に以下の三つの組織タイプと特徴に分類しています。
戦略的でデータを重視し、実経験からの教訓をデータに基づいて計画に反映し、それを遂行するための訓練をしっかり行うことでレジリエンスの構築をした組織。これらの組織は、事前にインシデント時の危機対応計画が策定され、緊急時および長期戦略に関する専任チームが指定されており、特に、財務面、オペレーション、ブランド領域でのレジリエンスを発揮。
危機に対する対応方針を十分に精査し、従業員のニーズにも十分に配慮をしていた組織。これらの組織は、従前より、インシデント発生後に自社の対応をレビューするプロセスが導入されており、特に、社内のモチベーション、多様性、企業文化の領域でレジリエンスを発揮。
テクノロジーを活用した革新的な対応により、日々変化する状況・環境下に適応してきた組織。これらの組織は、事前に危機対応計画が策定されており、業務のデジタル化が進んでおり、特に、テクノロジーや組織、オペレーション領域でのレジリエンスを発揮。
これらを見ていくと、今回の危機的状況下でポジティブな結果を出している企業には、戦術的な観点において共通点が見られます。リスクや危機の可能性を常に念頭に置き、平時よりインシデント発生を想定した危機対応準備を行い、全社的な戦略に落とし込んでいるという点です。具体的には次の3点になります。
⑴ 危機やその他事象に対して自社が取った行動・対応の徹底的な検証
⑵ 危機やその他事象を経験して得た気づきや教訓の長期的な企業戦略への組み込み
⑶ 不測の危機に対しての十分な準備と条件反射的対応力の強化
パンデミック、自然災害、サイバー攻撃、戦争など、それぞれの危機状況下での課題は必ずしも同じではないですが重要なのは、
1)危機はいつでも起こるということを理解し危機対応策を策定すること
2)リスクは動的に変化し、計画は常に改善される必要があるので自社の判断や行動を事後的にしっかり評価すること
3)そこからの学びを危機対応策に常時反映・実行する仕組みを構築すること
これらを実践することによって、いつ直面するか分からない危機に弾性をもって対応できるレジリエンス遺伝子を社内に保持し、いかなる状況下でもより強い企業に進化することができるのではないでしょうか。
本稿に関するご質問やPwCのCrisis preparedness assessmentやAfter Action Reviewサービスに関するお問い合わせは、著者までお気軽にご連絡ください。
PwCタイ コンサルティング部門
ディレクター
吉川 英一
リスク管理・フォレンジック領域において日本国内外を含み計13年の経験を有し、2015年1月よりPwCタイに赴任。東南アジアにおける日本人フォレンジック専門家の第一人者として、不正調査、サイバーセキュリティー、データ分析、不正リスク管理体制の構築、反贈収賄コンプライアンス等の支援を多数指揮してきた。現在は、東南アジア域内における同サービスの日系企業向けの支援を管掌している。米国公認会計士。日本証券アナリスト協会検定会員。公認不正検査士。
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THAIBIZ編集部
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