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公開日 2022.11.10
これまでに多くのM&Aを実施してきたA社はかつて、家電やPC向けの部品を主力としていました。しかしM&Aを経て現在は自動車部品も手掛けるなど、もともと持ち合わせている自社技術と買収した企業の技術を組み合わせたり、買収した子会社同士の技術を組み合わせた製品の開発も事業の一つに加わりました。
こうした同社の新たな領域(自動車部品・車載部品等)での売り上げ拡大は、自社の既存技術だけでは達成が難しかったと考えられます。自社の持っていない技術をM&Aを通じて継続的に取り込むことで、ポートフォリオを拡大できた成功事例と言えます。
M&Aを行う目的には、自社の持っていない技術や製品の獲得以外にも、市場や顧客軸、いわゆる「商圏」を獲得するためという例も珍しくありません。自社で展開していない地域でのビジネスを迅速かつ的確に立ち上げるために、その地域に強い販路を持つメーカーを買収するケースや、従前から取引関係のある販売代理店と資本関係を深めるための買収などがあります。
省エネ性能などに強みを持ち、日本市場で高いシェアを確保していたB社は、さらなる成長を求めてM&A戦略を推し進めました。
その背景には「日本市場は人口の減少により成長余地が限られる」という考えがあり、海外市場の新規開拓を積極的に行ってきた新興国においては人口の増加に加えて、一人当たりGDPの拡大とともに普及率の上昇が見込まれること、また、北米や欧州においては普及率の上昇に加えて、製品の高付加価値化(機能向上、省エネ化など)が見込まれること等を期待し、アメリカへの進出を図ったのです。
この進出にあたり同社は当初、日本で培った技術を前面に押し出してシェアの拡大を目指していました。しかし、米国ではすでに別の技術(米国方式)が一般化しており、日本の技術一辺倒では十分なシェアの獲得に至らず。そこで、米国で一定の実績を持つ現地企業の買収に踏み切ったのです。
この買収を通じて、米国方式の製品と技術を一気に獲得。日本方式と米国方式の双方を手にすることにより、米国特有の利用シーンを深く理解し、2つの選択肢をユーザーに提示できるようになったことで、同社は顧客獲得の確度をも高められるようになりました。
それまで、同社自身の販売・サービス網は現地の大手企業に比べると限られたものでしたが、買収を通じて対象会社の販売・サービス網も活用できるようになり、顧客サービスの水準向上という結果をもたらすことにも繋がりました。市場を大きく捉えて「成長の限界」を取り払ったことが、同社の持続的な成長を可能にしたのです。
M&Aを通じて成長を加速させてきた企業の多くが、「M&Aそのものよりも、PMI (Post Merger Integration:M&A契約後の統合プロセス)のほうが重要である」と指摘しています。「買収の成否は、契約に至るまでが2割、買収後が8割」と唱える経営者もいます。つまり、買収プロセスの完了をゴールとせず、継続的なシナジー効果の創出を訴求していく必要があるのです。
M&Aによって企業買収を行ったC社は、契約締結後も大幅な人員削減などを実施せず、経営陣の刷新も行わないとしていました。その理由としては、買収当初は本社から人員を派遣して経営方針の浸透を図り、管理体制再構築のサポートはするものの、再建の完了とともに本社からの派遣人員を引き上げて、従来からの経営陣に任せようと考えていたからです。
つまりは、管理体制の整備を通じて従業員のモラルや規律をあるべき姿にする一方で、経営陣やブランドを存続させることで、従業員に安心感を与えるという狙いがあったのです。
「新しいグループの中での役割や目標を明確に示すことで、従業員のモチベーションは大きく向上した」とC社が話す通り、売上高人件費比率が高いと人員の削減に手を付けたくなりますが、そうしないことで従業員の士気・生産性向上へと繋がります。そうした意味で、買収後はリストラよりもPMIが重要なプロセスと言えるでしょう。
次回、部品メーカーが今後、新規事業の成功に向けて取り組んでいくべき5つの視点を述べさせていただきたいと思います。
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THAIBIZ編集部
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