海苔スナックで世界を目指す 〜タオケーノイのイティパットCEOインタビュー

海苔スナックで世界を目指す 〜タオケーノイのイティパットCEOインタビュー

公開日 2024.05.20

19歳の若者が20年前に創業したタオケーノイは、今やタイの海苔スナック市場でトップシェアを誇るまでになった。現在では、中国や米国、インドネシアなどの50カ国以上に輸出しており、代表的商品である「味付け揚げ海苔」や「焼き海苔」はタイお土産としても好評だ。今回はタオケーノイ・フード&マーケティングの創業者であるイティパット・ピーラデチャパン最高経営責任者(CEO)に同社の歴史や人材育成、国内外でのマーケティングなどについて聞いた。

(インタビューは4月1日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTHAIBIZ編集部)

タオケーノイのイティパットCEO(左)、mediator ガンタトーンCEO(右)
タオケーノイのイティパットCEO(左)、mediator ガンタトーンCEO(右)

自宅での手作りから、50カ国以上に輸出する海苔スナック会社へ

Q. タオケーノイのこれまでの歩みは

イティパットCEO:創業当時、タイでは一村一品(OTOP)商品の海苔フライがあったが、海苔スナックはあまりなかったため、チャンスだと考え、長期保存可能な海苔フライを研究開発し、商品化した。タオケーノイの商品は約1年間保存できるので、デパートやコンビニなどにも販路を拡大できた。転機は全国のセブンイレブンでも販売されるようになったことだ。当初は約4000店だったが、現在は1万3000店以上で販売されている。

商業規模に拡大する上での問題は、海苔スナックを製造する専用機械がないため、多くの人手が必要なことだった。当初は資金がなかったので、最初は自宅で6人で手作りしていた。現在はタイ製と外国製の機械を使用している。全自動機械はまだない。生産ラインは2つあり、加工ラインは主にタイ製の機械を使用し、包装ラインは欧州や他のアジア製の機械を使用している。

もう一つの課題は原材料の調達だ。中国や韓国、日本から海苔を輸入しなければならない。原料購入のため日本と韓国に頻繁に連絡し、徐々に信頼関係を築いてきた。

当社は自動化や研究開発、原料ネットワークの構築など着実に推進している。現在、韓国からの海苔輸出量が最も多い会社はタオケーノイだという。第2フェーズではシンガポールや香港、台湾などの海外市場にも進出し、現在では世界50カ国以上に商品を輸出できるようになった。

人材育成と企業文化の作り方

Q. どのように人材育成を行っているか

イティパットCEO:タオケーノイは人材育成にも力を入れてきた。社員は最初6人だったが、今では2000~3000人いる。人材管理には品質マネジメントの国際規格「ISO」や目標管理手法の「OKR (Objectives and Key Results)」などを導入した。人材育成においては、タイ生産性研究所(FTPI)の「タイ経営品質賞(Thailand Quality Award:TQA)」のフレームワーク、トヨタ生産方式をベースとするリーン生産方式、「Good to Great(Goodな企業からGreatな企業になる)」コンセプトを活用している。これらをサプライチェーンとタオケーノイの企業文化の構築にも適用している。当社は優れたリーダーの輩出、偉大な企業文化の創造を目指している。リーダーが成長すれば、会社も成長するからだ。

タオケーノイのイティパットCEO 02

Q. 企業文化の特徴は

イティパットCEO:ヘッドハンティングで優秀な人材を採用することもあるが、能力や熱意を持ち、会社を愛する社員の成長を促している。

当社の企業文化は、新しいことに挑戦し、状況に合わせて柔軟性を備え、ファクトに基づく話し合いで改善していく。前進するために一歩後退しなければならないこともあるが、そこから学んでいく。

Q. 持続可能な働き方とは

イティパットCEO:自分が嫌なことは誰に対してもしない。公平さはとても大事だ。持続可能な働き方とは「良い考え」、「良い言葉」、「良い行動」が基本になる。「良い考え」とはポジティブに考え、問題解決のための方法を考えることだ。「良い言葉」とは事実を伝えながら理解し合うためにコミュニケーションをとり、人を励ますことだ。「良い行動」とは、あきらめずに問題を解決し、うまくいくと信じれば、いい結果が出るということだ。

海苔スナックという食文化を世界中に広げたい

Q. タイ国内外での販売比率はどうなっているか。これからの市場拡大計画は

イティパットCEO:製品の約70%は輸出され、タイ国内販売は30%だ。 タオケーノイの工場はタイ国内のみで、海外ではパートナーの工場に生産委託している。

原料として使用している海苔は、栄養補助食品よりもスナックや食品を作るのに適している。当社は、海苔をスナックとして食べる食文化を創造し、世界に広げていくことを目指している。現在、海苔は世界全体で100カ国以上に輸出されているが、タオケーノイの商品の輸出先はまだ50カ国にのみであり、当社の輸出余地がまだまだある。

Q. 海外マーケティングの手法は

イティパットCEO:海苔は多くの国ではまだ目新しいものなので、消費者から注目されやすく、海苔スナック市場はブルー・オーシャンとされており、海苔スナックの先駆企業であるタオケーノイには優位性がある。当社は10年間で売上高が約1億ドルまで急成長してきた。

当社の商品を輸出している50カ国の中で、流通量が多く、当社ブランドの知名度が高い国を「スター国」と呼んでおり、これらの国には特別なフレーバーやパッケージを開発することでローカライズを行っている。例としては中国やアメリカ、インドネシアなどの売上高トップ5の国だ。中国では限定商品として、ココナッツ味の焼き海苔が販売されている。

顧客はタオケーノイの味に慣れ親しんでいる

Q. タイ人の消費行動とブランドポジショニングは

イティパットCEO:それぞれの国には独自の食文化がある。そこで、研究し、その国に合わせたマーケティングをする必要がある。例えば、タイ人はよくコンビニでスナックを買っているため、タオケーノイの商品もコンビニで販売する必要がある。

また、タイ人の購買力は中程度なので、価格設定が重要になる。価格とターゲットに合った価値を創造することは挑戦的なことだ。顧客にとって価格が高すぎればニッチ市場になる。一方、価格が安すぎれば大衆市場になってしまう。大衆市場にはすでにマーケットリーダーがいるため、大衆市場に新たに参入するには、優れた最新技術を持っている必要がある。また、価値を高めるには適切なブランドポジショニングが必要だ。

タイのスナックの平均価格は20バーツ前後だ。タオケーノイは大衆商品と高価格商品の中間に位置するため、5~50バーツで販売できる。20バーツ以上の商品は、増量したものやチャック付き包装などの特別なパッケージ商品だ。これらで売上高拡大に貢献できる。

タオケーノイのイティパットCEO 01

Q. 海苔スナックの市場の競合状況は

イティパットCEO:タイの海苔スナック市場において、タオケーノイは約60%のシェアを占めている。プレイヤーが多い市場は、消費者に選択肢が多く、競合相手のいない市場よりも市場全体が拡大する可能性が高い。ただ、お客様は毎日同じ商品を食べるわけではない。海苔スナックしかない当社は、新しい味の商品を発売するなど、常に研究開発をしていかなければならない。売れなかったらその商品を販売をやめればいい。

海苔スナック市場を開拓したタオケーノイはリーダーブランドとなっている。顧客のロイヤリティーを維持するために、マーケティングやブランド構築に力を入れている。食品は、他の商品に乗り換える可能性が高まる「スイッチング・コスト」が5~10バーツ(約21〜42円)程度と低いため、顧客は切り替えやすい。ただ、先行企業である当社は顧客に海苔スナックの味を認知させ、顧客はその味に慣れ親しんできたので、なかなか他のブランドに切り替えない。

グローバル展開を目指す日本企業のパートナーを歓迎

Q. 日本企業へのメッセージを

イティパットCEO:個人的に若い頃から日本のスナックや電化製品、あるいは哲学まで好きだった。日本企業には高いポテンシャルがあると信じており、日本企業との提携余地は大きいと思う。当社は世界市場への参入が可能で、パートナーと共にグローバルに展開できる可能性を持っているので、日本企業のパートナーを歓迎している。

Appendix – タオケーノイ収益データ

タオケーノイの収益データ
「タオケーノイの収益・輸出データ」THAIBIZ編集部作成

Profile

イティパット・ピーラデチャパン氏(Mr. Itthipat Peeradechapan)

Director / Chief Executive Officer, Taokaenoi Food & Marketing Public Company Limited

タイ商工会議所大学(UTCC)起業学科卒業。甘栗焼き販売店を経営していた。海苔スナック市場にチャンスを見出し、2004年に19歳でタオケーノイ社を設立。2015年にタオケーノイをタイ証券取引所(SET)に上場。現在、39歳。

More About イティパットCEO

・家族が経済的な問題に直面していたため、イティパット氏は試行錯誤を繰り返しながらさまざまなビジネスに挑戦し、19歳で海苔スナック「タオケーノイ」を立ち上げた。彼のストーリーは『トップ・シークレット 味付けのりの億万長者』として映画化され、アジア全域で有名になった。

・日本人のシェフと東京で「ヘンリーズ・バーガー」という和牛バーガー専門店を経営している。

・日本旅行が好きで、年に5~6回訪れている。

THAIBIZ編集部

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