

公開日 2025.12.09
THAIBIZオンラインでは、タイのビジネスにまつわるニュース記事を厳選して届けている。ここでは、各月に注目を集めたニュースを改めて編集部がピックアップした。この機会に、変化に富んだ1年となった2025年を振り返り、来年を展望してみていただきたい。
目次


「ディープシークとは何か」。1月29日付のロイター通信は、そんなタイトルで中国のスタートアップ企業ディープシークが最新の人工知能(AI)モデル「V3」を発表したニュースを伝えている。
V3は米国の最先端モデルと同等以上の性能を持ちながら、トレーニング費用が600万ドル(約9億円)未満というコスト効率の良さから世界で注目を集めている。また、一時アップル社のAppストアでチャットGPTを上回り無料アプリのトップに躍り出たことで、大手テック企業の株価に影響を与えた。
一方で、その成功について懐疑的な声も上がっている。スケールAIのアレキサンダー・ワン最高経営責任者(CEO)は、ディープシークがエヌビディアのH100チップを5万枚保有しており、これは米国の輸出規制に違反する可能性があると指摘。米国の市場調査会社バーンスタインのアナリストは、V3のトレーニング費用は発表よりも実際は高額であると主張している。
ディープシークは2023年に設立された中国・杭州を拠点とする企業で、筆頭株主はヘッジファンド「ハイフライヤー」の共同創業者でもあるリャン・ウェンフォン氏。同氏は中国の李強首相主催の非公開のシンポジウムに出席しており、国家戦略との関連も示唆されている。


タイ投資委員会(BOI)の2月13日発表によると、マツダの毛籠社長兼最高経営責任者(CEO)は、ペートンタン前首相との会談で、50億バーツ(約225億円)を追加投資すると発表した。
今後、タイを電動コンパクト小型スポーツ用多目的車(SUV)の製造拠点にする計画だという。また、この投資により日本やASEAN諸国市場への輸出に向けた生産も強化し、今後年間10万台の生産を目指す方針を示した。
マツダはタイで70年以上にわたり事業を展開しており、①国内販売と輸出向けの乗用車と商用車を生産するオートアライアンス・タイランド(AAT、1995年設立)、②エンジンと自動変速機を生産するマツダ・パワートレイン・マニファクチャリング・タイランド(MPMT、2015年設立)の2つの主要な製造拠点を持っている。
今回の追加投資を通じて、両方の生産ラインを強化し、 地元サプライヤーとの連携を高め、次世代電気自動車(EV)の製造を支えていくという。なお、同社はEVだけでなく、ハイブリッドやディーゼル、バイオ燃料などさまざまな技術を組み合わせ、地域や市場に最適なモビリティを選択できることが重要だとする「マルチソリューションアプローチ」のもと、段階的に電動化を進めている。


3月4日付のネーションによると、タイ政府は健康経済を次の成長分野として位置づけ、保健省が戦略的計画を発表した。ハーブ医薬品や健康食、医療ツーリズムなどのウェルネス産業に加え、医療機器製造やパーソナルヘルス・美容の強化、先進治療用医薬品センター設立に注力する。
政府は健康経済事務局を新設し、国内総生産(GDP)の約3.39%(約6,900億バーツ)の経済効果を見込む。タイ工業連盟(FTI)はサプリ、ハーブ、バイオテクノロジーなどの競争力強化を推進。タイの健康産業全体は約1兆バーツ(GDPの10%)規模で、GDP成長率5%目標に向けた重要分野とされる。


4月30日付のネーションおよびBOIの発表によると、2025年第1四半期の投資申請額は4,312億バーツで前年同期比97%増、申請件数も822件と20%増となった。デジタル(947億バーツ)、電子・電気機器(878億バーツ)、自動車・部品(235億バーツ)への投資額が特に高く、再エネや化学が続いた。
外国直接投資(FDI)は申請618件(43%増)、投資額2,676億バーツ(62%増)で、香港1,351億バーツ、中国473億バーツ、シンガポール380億バーツ、日本は251億バーツで4位。地域別では東部への投資が2,465億バーツと最大となった。BOIは環境対応やデジタル化を促す支援を強化している。


5月28日付のネーションによると、中国では在庫過剰を背景にEVの大幅値下げが進み、BYDは22車種を最大34%値下げした。吉利汽車(ジーリー)や零跑汽車(リープモーター)も追随し、BYDのコンパクトEV「海鷗(シーガル)」は、下取り支援とあわせて約25万3,000バーツという低価格で提供されているという。
一方、タイでは影響は限定的と見られており、課題として浮上しているのはアフターサービスだ。MGセールス・タイランドは、部品の入手難や修理対応の遅れに関する苦情が増えており、消費者の信頼に影響を与えていると指摘。FTIのスラポン副会長は、今後はアフターサービスや部品供給、技術者配置が競争力の分岐点になると述べている。


6月8日付のタイ紙ターンセタキによると、5月の1世帯あたりの平均月間支出は2万1,037バーツとなった。インフレや都市生活コストの上昇を背景に前年同月比増。支出の6割は「生活サービス関連」で、住居費5,167バーツ(24.56%)、交通・通信費4,661バーツ(22.16%)、医療・パーソナルケア1,335バーツ(6.36%)が続いた。
「食費関連」は全体の約4割で、外食・テイクアウト食品3,508バーツ(16.67%)、肉類1,568バーツ(7.45%)、野菜・果物1,009バーツ(4.80%)が中心。総支出額の上位は、①住居費、②交通・通信費、③外食・テイクアウト食品、④肉類、⑤医療・パーソナルケアとなっている。


7月21日付のザ・スタンダードでは、タイの求人プラットフォーム「Jobsdb by SEEK」の調査を取り上げ、タイの労働市場における次の3つの構造変化の兆しを指摘している。
①雇用は柔軟な形態に:2025年前半、53%の企業が正社員の採用を予定。一方、パートタイム正社員は20%→42%、パートタイム契約社員は19%→28%と増加。②福利厚生・給与もアップデート:働きやすさを重視し、誕生日休暇や育児・介護休暇の拡充が約15%増加する見込み。また、85%が昇給、84%が平均2ヶ月分のボーナスを支給。③AIスキルが標準装備に:65%の企業が面接で候補者のAIスキルを評価、34%の企業は採用業務に導入していると回答した。


8月1日付のタイ紙クルンテープ・トゥラキットによると、タイ政府は今年8月7日以降の米国への輸出品に対する新関税率を19%で合意したと発表した。ASEAN諸国とほぼ同水準で、長期投資計画を持つ企業にとって見通しを立てやすくなる成果とされる。
同時にタイ側は、①豚肉、②大豆・とうもろこし、③航空機、④原油、⑤液化天然ガス(LNG)など、米国産品の一部輸入関税を0%にするよう提案。豚肉は消費量の1%未満に限定、大豆・とうもろこしは100〜200万トン規模で、航空機は10年かけて80〜90機を導入する計画だ。
また、国内産業の競争力を高めるため、政府は100億バーツの予算を承認。企業の資金繰り支援や技術改善など、雇用創出を条件にインフラ投資を推進する。


9月29日付のクルンテープ・トゥラキットによると、1〜8月の累計自動車販売台数は前年同期比0.1%増の39万9,945台で、今年初めてプラス成長に転じた。8月単月では4万7,622台(前年同月比5.4%増)と堅調で、年間目標60万台の達成も視野に入ってきた。
成長を支えたのはハイブリッド車(HEV)で、8月の販売は1万1,230台(前年同月比26%増)に達し、xEV市場の過半数を占めた。なかでもトヨタ自動車の「Yaris ATIV HEV」は発売1ヶ月足らずで3,700台超を販売した。今年1〜8月のブランド別では、トヨタ自動車が依然としてトップシェア(37.3%)を維持。販売全体では、商用車が12.3%増と好調だった。


10月27日付ターンセタキによると、レアアース(希土類)をめぐる米中の競争はASEANへ広がり、新たな戦略主戦場として浮上している。
世界シェア7割超を握る中国に対し、米国は26日、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアの4ヶ国と供給網構築の協定を締結。なかでもタイは2024年に1.3万トンを生産(前年比260%増)し、世界第6位の生産国へ急成長している。
中国はすでにマレーシアで1億ドル規模の製錬所建設を進めるなど、ASEANでの存在感を強化。一方、米国もタイとの協定により、加工や人材育成の協力を進める。同紙は今後の課題として、インフラ整備や環境基準、米中間の外交バランスを指摘している。


11月11日付のバンコク・ポストによると、2026年1月1日から、1,500バーツ以下の小口輸入品にも関税と付加価値税(VAT)が課される方針が決まり、電子商取引(EC)業界で対応が進んでいる。
タイEコマース協会のクンティラット会長は、この措置には「国内と海外の販売者の税負担を均等にする」「低価格輸入に依存してきた小規模販売者への負担増」という二つの側面があると指摘した。
従来、中国などからの低価格商品は免税で流入しており、関税・VATを負担していた国内メーカーや国内販売者(高価格帯輸入品を扱う事業者)は不利な競争環境に置かれていた。今回の課税により、この点での公平性は確保される。
一方で、低価格輸入に依存してきた小規模EC事業者にとっては仕入れコストの上昇につながり、価格転嫁か利益縮少かを迫られる。中国は関税ゼロ、VAT70%の軽減、年間2.6万元の個人免税枠など、「消費を促すインセンティブ型」を取っているが、タイは「税収確保と競争条件の平準化」を主眼としており、アプローチが大きく異なる。
業界団体からは、①インドネシアのような「低価格輸入品の販売禁止」モデルの検討、②ECプラットフォームと連動したデジタル税関システムの導入、③通関プロセスの透明化、などを求める声が挙がっている。


THAIBIZ編集部





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