タイが宇宙開発に本腰、多様な事業領域に広がる参画機会~日タイで宇宙産業フォーラム開催~

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タイが宇宙開発に本腰、多様な事業領域に広がる参画機会~日タイで宇宙産業フォーラム開催~

公開日 2026.04.27 Sponsored

タイ政府は近年、タイを「デジタル・宇宙経済ハブ」にする国家戦略の一部として、宇宙産業を次なる成長分野と位置づけている。宇宙開発に本腰を入れはじめた同国では、関連インフラや制度整備に関する具体的な検討が進められており、業界の垣根を超えた「商機」が広がっている。

日本は、タイの宇宙開発の第一歩から共に歩んできた経緯があり、両国の宇宙協力には数十年にわたる歴史がある。こうした基盤のうえで、2015年には、タイの地理空間情報を基盤とした社会の構築に向けた日タイ首脳共同声明が発表され、これを契機に産学官による連携、関係は一層強化された。近年では民間主導の宇宙開発も進み、社会実装を見据えた共同実証も積み重ねられるなど、両国の連携は段階的に深化している。

このような背景のもと、在タイ日本国大使館は3月16~17日、GISTDAとの共催で「宇宙産業フォーラム」を開催した。同フォーラムには、日タイの関係省庁や民間企業70社以上から計200人以上が参加。両国間連携のさらなる深化について議論が交わされ、タイの宇宙計画における官民連携の加速を象徴するイベントとなった。

タイ宇宙政策の柱は「衛星コンステレーション」と「宇宙港」

タイでは「国家宇宙マスタープラン(2023〜2037)」のもと、宇宙政策の強化が政府主導で推進されている。産業育成に向けた大きな柱として据えられているのが、①衛星コンステレーションと②宇宙港の整備だ。

①衛星コンステレーションは、低軌道上に多数の衛星ネットワークを構築する構想である。多数の衛星を配置することで自国の観測衛星ネットワークを整備し、作物生育や干ばつ予測といった「農業」、洪水や森林火災などの「災害管理」、不法漁業や海洋環境監視などの「海洋・安全保障」といった分野への活用が見込まれている。

②宇宙港(ロケットや宇宙機を打ち上げる施設)については、赤道付近に位置するタイは地球の自転速度を活用できるため、打ち上げ時の燃料効率の向上が期待されている。現在はGISTDAが中心となり、実現可能性調査の最終段階に突入している。

これらの構想に向けてタイの宇宙計画は今、大きな転換期を迎えており、民間連携の動きが大きく加速している。エコシステムの構築においては、衛星部品の開発から、システムやデータの利活用、施設の建設・運用に至るまで、多様な分野で日系企業の参画可能性も広がっていると言える。

今回開催された宇宙産業フォーラムでは、こうした官民連携の具体化に向けて、プレゼンテーションやディスカッションに加え、宇宙港候補地の視察など多角的なプログラムが展開された。会場や視察では活発な意見交換が交わされ、参加者同士の関係構築を促すネットワーキングの時間も充実するなど、新たな連携創出に向けた機運が高まっていた。

日タイ宇宙協力の発展に向けて開催されたフォーラム

同フォーラム1日目の開会挨拶では、在タイ日本国大使館の大鷹正人大使が登壇した。日タイの宇宙分野における協力について、「本年は、両国の宇宙機関であるGISTDAとJAXAの協力開始から40周年という大きな節目にあたり、2015年の日タイ首脳共同声明からも10年が経過した。これは、『宇宙技術を活用して持続可能な社会の実現を目指す』という両国の強いコミットメントを改めて示すものだ」と、これまでの歩みを概観した。

そのうえで、「現在、日タイ宇宙協力は新たな発展段階にあり、本フォーラムが新たなパートナーシップの創出と、意義ある協力関係の構築の場となることを期待している」と述べた。

在タイ日本国大使館の大鷹正人大使

次に、タイ高等教育・科学・研究・イノベーション省(MHESI)のパンパームサック・アールニ副次官は、「これまで宇宙産業を“未来の可能性”として語ってきたが、これからは実際の発展・拡大に向けた段階に入る」としたうえで、「タイは宇宙人材の育成や投資受け入れの準備が整っている。日本は重要なパートナーであり、今後の両国間の協力のさらなる発展が期待される」と述べた。

MHESIのパンパームサック・アールニ副次官

官民連携でエコシステムの構築を目指す

続いて、経済産業省製造産業局審議官の畑田浩之氏が、「国際秩序が不安定化している今だからこそ、志を同じくする国々が連携を強化することが重要だ」と述べ、長年にわたり緊密な関係を築いてきた日タイの協力の意義を強調した。

同氏は、日本からのフォーラム参加企業の一部を紹介したうえで、民間企業を支える政府の役割の重要性にも言及し、「この後、パンパームサック副次官らと日タイの宇宙産業連携に向けた議論を行う予定だ」と述べた。

経済産業省製造産業局審議官の畑田浩之氏

開会挨拶の最後には、GISTDAのパコーン・アーパーパン長官が登壇し、GISTDAが重点的に推進している衛星コンステレーションや実現可能性調査の最終段階にある宇宙港構想への期待を示すとともに、「日本政府や民間の皆さんと協力し、具体的な宇宙産業エコシステムの構築を目指したい」と意欲をみせた。

GISTDAのパコーン・アーパーパン長官

経済産業省・総務省・外務省による3つの視点

続くプレゼンテーションセッションでは、畑田氏が再び登壇し、日本政府における宇宙政策の体制や、そのパーパス・ミッションについて説明した。

「1955年のペンシルロケットから始まった日本の宇宙産業は、70年の歴史を有している」としたうえで、「近年では、輸送、衛星、衛星データ、LEO(Low Earth Orbit:地球低軌道)、探査、OOS(On-Orbit Service:軌道上サービス)といった6つのセグメントにわたり、新たに出現した100社以上のスタートアップを含む数多くの企業が活動している」と報告。

「これは、タイ政府がどのような宇宙産業政策を掲げることになったとしても、日本は協力できることを意味している」と強調した。

さらに同氏は、「経済産業省は、こうした民間の取り組みを加速させるため、あらゆる経済施策を一体的に講じていく。タイの社会課題解決に日タイで取り組むこと、新たな価値を日本が提供すること、そして、それらを実現するための産業基盤の強化—これら3つの領域に注力している」と説明した。

特にインパクトの大きい施策として、同氏は日本政府の民間支援ツールの一つである「宇宙戦略基金」も紹介。同基金では10年間で1兆円の予算を確保しており、衛星データの活用、衛星の量産・開発、衛星打ち上げといった複数事業を推進していることを明らかにした。

次に、総務省国際戦略局国際展開課 課長補佐の山本明央氏が登壇し、非地上系ネットワーク(NTN)の重要性と日本国内での進展を説明するとともに、「周波数政策に関する情報共有や個別プロジェクトをベースとした議論など、タイとの協力・連携を進めたい」と呼びかけた。

続いて、外務省経済局官民連携推進室長の大山信幸氏が「高市政権が重視する17の戦略分野において、宇宙分野での日本企業の海外展開支援が明確に打ち出されている」と報告。さらに、長年にわたりタイの発展に貢献してきた日本企業の歩みを踏まえ、日タイ双方の利益の実現に向けた協力に期待を示した。

フォーラム1日目の様子

日本が世界第3位の宇宙大国として果たせる役割

GISDTAのダムロンギット・ニアムアド副長官は、これまでの日本による宇宙協力に感謝の意を示した上で、「実証レベルで終わることなく、タイのローカルニーズに沿った形で“実現”していくことが重要だ」と述べ、日本の経験や技術への強い期待を強調した。

最後に、宇宙エバンジェリストであり、一般社団法人スペースポートジャパン創業理事兼CEO、一般社団法人SPACETIDE共同創業者でもある青木英剛氏が、民間側の唯一のプレゼンターとして登壇。「日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の宇宙大国(政府宇宙予算ベース)であり、これまで宇宙事業に関わりのなかった東証一部上場企業が続々と宇宙業界に参入している点が大きな特徴だ」と説明し、日本の宇宙分野におけるポテンシャルを示した。

プレゼンテーションに続く午後の部では、衛星コンステレーションおよび宇宙港の構想について、専門家らによる深い議論が行われた。

打ち上げ候補地やGISTDAの施設を視察

同フォーラム2日目には、水平打ち上げ候補地であるウタパオ空港、海軍基地エリアに位置する垂直打ち上げ候補地のナムサイビーチ、GISTDAの「国立衛星組立・統合・試験センター」や「宇宙技術研究センター(S-TREC)」などを巡る視察プログラムが実施された。

ナムサイビーチでは、タイ国防省傘下の研究開発機関「Defense Technology Institute(国防技術研究所)」の職員から、同エリアでの打ち上げテスト実施状況に関する説明があり、参加者からの質問などにも受け答えていた。

ナムサイビーチの視察
宇宙技術研究センター(S-TREC)の視察

非宇宙産業界にも広がる新たな商機

2日間にわたり、講演と視察、そして充実したネットワーキングの機会を組み合わせた本フォーラムには、産業界から衛星・ロケット開発事業者をはじめ、自動車、建設、食品など多岐にわたる分野の企業が参加した。参加企業はいずれもタイの宇宙計画への参画機会に高い関心を寄せており、新たな宇宙経済創出の可能性を垣間見せた。

今後さらに加速していくとみられるタイの宇宙開発において、日本企業にとっての商機への期待が高まっている。

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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