カテゴリー: ニュース, ASEAN・中国・インド
公開日 2024.11.04
バンコク中心部に乗り入れる自家用車から「渋滞税(Congestion Fee)」を徴収するというタイ運輸省の計画がさまざまな議論を呼んでいる。徴収した料金はバンコク首都圏の都市鉄道の運賃を一律20バーツの固定制にするための財源にするという。10月20日付バンコク・ポスト(1面)によると、バンコク都のチャチャート知事は渋滞税は新しいコンセプトではなく、英ロンドンやシンガポールで導入されているとした上で、このアイデアは公共機関の利用拡大と交通量の多いエリアでの自家用車の運転を抑制する効果があるとして支持する考えを明らかにした。ただ、このシステムを効果的に機能させるためには、信頼できる都市鉄道やバスサービスなど公共交通ネットワークを整備することが先決だと強調した。
一方、10月27日付バンコク・ポスト(1面)によると、最大野党の国民党は、都市部の渋滞を緩和するためには包括的な公共交通ネットワークの整備を最優先すべきだと訴え、政府提案の渋滞税に反対する姿勢を明らかにした。同党のスラチェット議員は、渋滞税は交通渋滞の緩和に役立つ可能性はあるが、都市鉄道の駅まで到達するためのバイクタクシー利用など現在の都市交通システム(Feeder System)は人々を自家用車から公共交通機関の利用に移行させるには非効率だと指摘。「政府は主に中所得者層が利用する都市鉄道に焦点を合わせているが、低所得者層は公共バスに依存している。優先順位が間違っている」と批判した。
さらに、10月27日バンコク・ポスト(1面)の特別リポートによると、運輸省傘下の輸送交通政策企画事務局(OTP)のパンヤー局長は今後2年間で外部コンサルタントを選定し実現可能性調査を完了させる方針を明らかにした。調査対象はクロントーイ、パヤタイなどの地域を含む107平方キロメートルのエリアで、45~50バーツの渋滞税を徴収した場合、自家用車の利用を減らせるメリットがあるかを評価するという。そして同記事は、人々は都市鉄道だけに依存するわけではなく、自宅から公共交通機関までの「ファーストマイル/ラストマイル」ではバイクタクシーやタクシーを利用しており、政府は渋滞税をこうしたFeeder Systemの開発に充当すべきだなどの意見を紹介。さらに、ラッシュアワー時の都市鉄道の車内の混雑ぶりや天候も、人々が公共交通機関を利用するかどうかを決める重要な要素になっているとの認識も示した。
東芝と島根大学発のバッテリーテック・スタートアップのナチュラニクスは10月31日、バンコクで電動バイクタクシー向けバッテリー・サブスクリプションサービスの実証実験を9月30日に開始したと発表した。発表によると、タイのような高温環境下ではバッテリー劣化が課題となっているとした上で、実証実験では高温環境下でも長寿命性を持つ東芝製リチウムイオン電池「SCiBセル」を使用し、電動バイクタクシーの長期安定運用および利用料金低減を目指すという。さらにナチュラニクスのパック化技術や充電技術は内部抵抗を減らすことで発熱を抑えることができ、バッテリーの長寿命化と高出力化、さらには6分という超急速充電も可能という。
ナチュラニクスは2輪などの車両運行管理者を通じて、顧客である電動バイクのドライバーにサブスクリプションモデルでバッテリーを貸与、導入コストを軽減できるという。2025年度の商業サービス開始を予定。さらに同年度には、タイに子会社を設立して、SCiBセルを搭載したバッテリーパックの量産を行い、電動バイク・三輪車、フォークリフト、ゴルフカートなどにもバッテリー供給をしていく計画だ。
首都高速道路株式会社は10月22日、タイ現地法人「首都高インターナショナル・タイランド(SIT)」の設立を記念し、同社のインフラ支援事業を紹介するセミナーをバンコク市内で開催した。開会あいさつで登壇した首都高速道路の寺山徹社長は、2011年にバンコク駐在員事務所を設置して以来、タイの政府機関や民間企業、大学と技術協力に関する覚書(MOU)を締結し、技術協力や人的交流などを行ってきたが、本格的な事業展開のために今年6月にSITを設立したと報告。具体的には同グループ18社が培ってきた高速道路の質の高い施工技術や点検などの維持管理技術、サービスエリアの運営ノウハウなどを提供、タイでのさまざまな課題解決を支援するとともに、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の他の国の課題解決に取り組んでいくと抱負を述べた。
一方、タイのチャヤタン運輸次官は来賓あいさつで、タイ高速道路公社(EXAT)が2010年に首都高速道路と知識や技術の交換に関するMOUを締結したほか、タイ運輸省高速道路局も首都高とのMOUに基づき、高速道路の料金徴収システムや交通管理、橋梁・道路メンテナンスなどのノウハウを蓄積してきたと説明。「過去、現在、そして未来に向けた両国の協力が持続可能な発展につながると確信している」と訴えた。
11月1日付バンコク・ポスト(4面)は、資金難に伴う事業縮小により、電気自動車(EV)工場を含む2つの工場で合計約2600人の従業員が解雇されると報じた。英語で「Young Factory Workers」という名称のフェイスブックによると、チャチュンサオ県のEVメーカーが10月25日付の書簡で、12月1日付けで600人を解雇すると発表した。同記事では社名を公表していないが、発表では受注の減少とコスト上昇が解雇の理由としている。一方、10月30日、サムットプラカン県にあるバンプー工業団地のフェイスブックは、マリゴット・ジュエリーの宝飾工場の従業員2000人が1月1日付で解雇されると伝えた。タイ工業連盟(FTI)によると、今年上半期に投資総額で少なくとも94億バーツに相当する360以上の工場が閉鎖された結果、過去2年間の平均を上回る1万人以上が解雇されたという。
THAIBIZ編集部
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