【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年3月号

ArayZ No.76 2018年4月発行

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【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年3月号

公開日 2018.04.20

タイ経済・月間レポート(2018年3月号)

輸出と観光業は1月のタイ景気の主要な牽引役

2018年1月のタイ経済は引き続き拡大基調になりました。その主な牽引役は輸出と観光の外需でした。外需の拡大は製造業の生産増をもたらし、民間消費も全部門で拡大しました。一方で、民間投資は前月から僅かな改善にとどまりました。
2018年2月の消費者物価の上昇率は、前年同月比0.42%上昇しました。原油価格は上昇したものの、生鮮食品価格は下落傾向で、前月から伸びが減速しました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は同0.63%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。
ここ数年、タイの自動車輸出は世界経済停滞が要因で縮小を続けていました。しかしながら、2018年のタイの自動車輸出は様々なプラス要因で拡大傾向に転じると予想します。その主なプラス要因は、世界経済が回復し、輸出相手国からの自動車需要が上がると見込まれることです。
タイからの自動車輸入量が拡大すると見込まれる重要な地域はオセアニア、フィリピン、インドネシア、中国です。また、サウジアラビアの自動車市場にも明るい傾向が見られます。法律により、今年6月以降サウジアラビアに滞在する女性は自動車を所有・運転することが許可されることとなり、タイ製自動車の輸入台数が増加する可能性が高いと予想されます。従って、カシコンリサーチセンターは様々なプラス要因により、2018年のタイ自動車輸出が前年比2.0~4.0%増加し、116万~119万台にのぼると予測します。

2018年1月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2018年1月の重要な経済指標によると、タイ経済は緩やかな拡大基調を続けています。その主な牽引役は輸出と観光の外需でした。また、民間消費が全部門で拡大したほか、製造部門も成長を続けました。公共支出も拡大したが、民間投資は前月から僅かな改善にとどまりました。

1月の民間消費は前年同月比6・1%上昇し、前月の同7・5%増から減速しました。耐久財への支出が減速しました。一方で、非耐久財は僅かながらプラスに転じました。非農家世帯の所得が徐々に回復している一方、農産物価格の下落で農家世帯の所得は引き続き落ち込みました。

一方で、民間投資は前年同月比1・2%上昇し、7ヵ月連続でプラス成長となりました。建設部門への投資が緩やかに上昇しているため、建材の販売も段階的に拡大しました。機械・設備への投資は前月並みでした。

1月の輸出は、前年同月比16・7%上昇しました。原油価格の上昇で石油関連製品の輸出額が伸びました。自動車・部品では、特にタイヤの輸出が増えています。電子製品は特にハードディスク駆動装置(HDD)の輸出がこれまでの設備増強の結果で伸びています。また、農産物の輸出も好調でした。それに加え、今年の中国正月が2月になったため、1月中に前倒しで貿易活動が活発になっていました。

工業生産に関しては、前年同月比3・4%増となり、3月連続でプラス成長となりました。商用車とディーゼル・エンジンの生産が伸びました。また、化学製品はCLMV諸国や日本向けの需要が伸びているポリエチレン樹脂の生産が増えました。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比10・9%増の355万人となり、前月に引き続き拡大しました。

中国人向けの違法ツアー摘発で前年に中国人旅行者が落ち込んでいたことへの反動に加え、世界経済の拡大に伴いほぼ全ての国からの観光客が増えました。

2018年2月のタイのインフレ率

商務省が発表した2018年2月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0・42%上昇し、8ヵ月連続で上昇しました。原油価格は上昇したものの、生鮮食品価格が下落傾向で、前月から伸びが減速しました。

品目別にみると、非食品部門が前年同月比0・74%上昇しました。昨年9月の物品税制改正の影響を受け、たばこ・酒が同6・0%上昇しました。住宅も1・3%上昇しました。一方で、食品・飲料部門は同0・16%下落しました。6ヵ月ぶりの落ち込みとなりましたが、総菜類と外食はそれぞれ同1・26%、0・96%上昇しました。

一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・63%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。

2018年3月の外為相場

注目された米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は市場の予想通り0・25%の利上げを決定しました。

FOMC後に公表された政策金利見通しで今年の利上げ回数が3回に維持され、年内の利上げペース加速を見込んでいた投資家がドル売りに働きました。パウエル議長の会見が想定ほど利上げに前向きではなかったとの見方も円買いを誘いました。

また、パウエル議長は会見で2019年以降の金利引き上げ見通しについて、「正直に言うと先行きについては不透明」と述べました。米ドルの利上げペースは加速しないとの見方を織り込んで、ドル安円高基調が継続することが予想されます。

2018年のタイ自動車輸出は様々なプラス要因で拡大傾向に転じる見通し

ここ数年、タイの自動車輸出は世界経済停滞が要因で縮小を続けていました。とりわけ、主要な輸出市場である中東が輸入を大幅に減らした影響を受けました。中東向け輸出が落ち込んだ理由は、世界の原油価格が低い水準で推移していたため、中東地域の経済に下押し圧力がかかっていたことです。タイの2017年自動車輸出も前年比4・1%縮小し、114万台になりました。しかしながら、2018年のタイの自動車輸出は様々なプラス要因で拡大傾向に転じると予想します。

2018年のタイ自動車輸出のプラス要因に関しては、世界経済が回復し、輸出相手国からの自動車需要が上がると見込まれます。それに加え、増加しつつある世界のハイブリッド車の需要に応じ、タイにおいても自動車メーカー各社が新モデルのハイブリッド車を発売する予定があるため、タイの自動車輸出を支持する見通しです。

一方で、マイナス要因に関してはタイへの連続的な資本流入によるバーツ相場の高まりがタイの自動車輸出に影響する懸念があります。また、ベトナムの最新輸入関連法令により、ベトナム向けの輸出に下押し圧力がかかっています。今年初めからASEAN自由貿易協定に基づきASEAN加盟国からの自動車輸入税は撤廃されることになっていましたが、ベトナム政府は自動車輸入制限条件である政令116号(116/2017/NDーCP)を2018年1月に施行しました。

この政令の要旨は、輸入自動車に対し毎回手当たり次第に品質検査を実施し、さらに通過の際には認証を課すというものです。このためベトナムへの自動車輸出はより複雑化し手続きに時間がかかり、また輸入コストが高まることから、タイの自動車輸出にマイナス影響を与えると予想します。

2018年にタイからの自動車輸入量が拡大すると見込まれる重要な地域はオセアニアです。現在オセアニアにおけるピックアップ・トラックのマーケットシェアではタイ製ピックアップ・トラックが75%以上を獲得しています。オセアニア地域のほかサウジアラビアの自動車市場にも明るい傾向が見られます。法律により、今年6月以降サウジアラビアに滞在する女性は自動車を所有・運転することが許可されることとなり、タイ製自動車の輸入台数が増加する可能性が高いと予想されます。また、フィリピン、インドネシア、中国の各市場に対しタイから新型車を連続的に投入する予定のため、タイの自動車輸出にとっては明るい見通しが広がることが予想されます。

結論として、カシコンリサーチセンターは、様々なプラス要因により、2018年のタイ自動車輸出が前年比2・0~4・0%増加し、116万~119万台にのぼると予測します。

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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THAIBIZ編集部

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