国際送金の仕組みについて

ArayZ No.117 2021年9月発行

ArayZ No.117 2021年9月発行中国企業のASEAN進出動向

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国際送金の仕組みについて

公開日 2021.09.09

みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介

橋本 裕輝 |グローバルトランザクション営業部 調査役 バンコック駐在

国際送金サービスを取り扱っていると「なぜ満額着金せずに手数料が差し引かれてしまうことがあるのか」「当日中に着金せずに困っている」といったお問い合わせを頂戴することがあります。

今回はタイにある日系企業A社がベトナムから輸入した商品(Ⅹ)について送金ベースのお支払いを行う事例を通して、銀行による国際送金の仕組みをご説明します。


A社 先日、ベトナムの取引先に対して国際送金を行ったのですが、送金の途中で送金額から手数料が差し引かれてしまいました。

銀行の担当者からは「中継銀行手数料(または決済銀行手数料)です」とだけ言われたのですが、この中継銀行手数料とは何か教えてもらえませんか。ちなみに米ドル建ての送金です。

橋本 銀行による国際送金では仕向銀行(送金銀行)と被仕向銀行(受取銀行)との間で資金の受け渡し(=資金決済)を行う必要があります。一般的に被仕向銀行は仕向銀行から資金を受け取った後に受取人(貴社取引先)口座に資金を入金します。

国際送金における資金決済は送金相手がどの国であるかに関わらず、米ドルであれば米国にある銀行を介して行われます。

この仕向銀行と被仕向銀行間の決済を仲介する金融機関のことを中継銀行と呼びます。仕向銀行および被仕向銀行は、それぞれ中継銀行に手数料を支払うことで両者間の資金決済を行っているため、中継銀行手数料が発生します。

A社 国際送金における登場人物は仕向銀行と被仕向銀行だけではなく、中継銀行というプレーヤーもいるわけですね。もう少し詳しく国際送金の仕組み全体について教えてもらえますか。

橋本 銀行による国際送金の仕組みは各国の規制等によりいくつかの種類がありますが、その中でも代表的なSerial Paymentの仕組みをご紹介したいと思います。Serial Paymentでは仕向銀行と被仕向銀行との間で直接、送金データの授受は発生せず、全て中継銀行経由で送金データが授受される仕組みです。

例えば、M銀行の貴社口座からC銀行のD社口座へ米ドル送金を依頼した場合、図表1の流れで送金データが銀行間で授受されます。

A社 これまでベトナム向けの国際送金で何度か当日中の着金が間に合わず、取引先に説明しなければならなかったこともあるのですが、なぜこういった遅れが生じるのでしょうか。

橋本 国際送金のデータを銀行間で中継する際、仕向銀行の中継銀行、被仕向銀行の中継銀行でそれぞれ送金の処理や送金データのチェックを行います。中継銀行の作業に時間が掛かってしまった場合、結果的に被仕向銀行の受取人口座への入金が遅れる事例もあります。

A社 満額着金されずに、途中で手数料が差し引かれてしまい困ったことがあるのですが、なぜこういうことが起こるのでしょうか?

橋本 仕向銀行の中継銀行、被仕向銀行の中継銀行でそれぞれ送金処理手数料が発生します。仕向銀行の中継銀行手数料は送金手数料でカバーされていますが、被仕向銀行の中継銀行の手数料は一般的に送金の元本から控除して被仕向銀行の米ドル口座に入金される慣行のため、手数料が差し引かれて入金される事例があります。

A社 例えば海外への資本金送金、親子ローンの返済等、予定通りの時間・金額での入金が必要な場合はどうすればよいでしょうか。

橋本 予定通りの時間・金額での入金が必要な場合、仕向銀行と被仕向銀行との間で中継銀行の条件をあらかじめ確認し、中継銀行とも調整したうえで国際送金に取り組むことが必要です。

仕向銀行も被仕向銀行の中継銀行でいくらの手数料が発生するか、あらかじめ確認することは難しいです。一方で、仕向銀行と被仕向銀行が同じ銀行であれば、その調整をスムーズに進めることができます。

A社 国際送金に取り組む際は取引先の受取銀行を確認したうえで、中継銀行手数料や取引先の口座への入金のタイミングに注意する必要があるということがよくわかりました。ありがとうございました。


月間USD市場推移 Monthly Market

8月の為替相場動向

33バーツ近辺で取引開始。上旬はバンコクを中心に悪化する新型コロナウイルスの感染状況が嫌気され、ついに33バーツ台に到達。また、良好な結果となった米雇用統計もドル買いをサポートし、33バーツ半ばまで早いピッチで上昇した。中旬、米経済指標が予想を下回り、FRBの金融引き締め時期後ズレが意識される中、33バーツ前半で上値重い展開。下旬には、速いピッチだったドルバーツの上昇の反動に加えて、連日新規感染者数が2万人を超えていたところから増加ペースに落ち着きが見られたことで、ドルバーツは下落基調。約3年ぶり高値圏から調整し、下旬の重要イベントを前に約7月下旬以来の水準へ下落した。

9月の為替相場動向

ドルバーツの調整相場が続きそうではあるが、アジア新興国を襲うデルタ株による経済低迷の影響は大きく、下値は限定的か。9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で米金融緩和縮小に関するヒントが掴めれば、再び上昇する可能性も。


8月の為替相場動向

VND高に推移。月初は22,950近辺でスタートしたが、8月11日にベトナム中銀が為替介入方法の変更を発表。従前は6ヵ月先物で22,975をターゲットとする介入を実施していたが、SPOTでの介入に変更し、ターゲットレートを22,750と従前よりもVND高に設定したことでVND買いが優勢に。22,800割れまでVND高が進み、同レベルでクローズした。

9月の為替相場動向

レンジ相場を予想。8月に中銀介入レートがVND高に変更されたが、7月に米国との間で「ベトナムの自国通貨安誘導の是正」について合意した内容が政策に反映されているものと恖われることから、VND安への揺り戻しは限定的となるだろう。ただし、既に実勢レートが介入ターゲットである22,750に接近していることから、VND高への振れ幅も限られ、相場は一旦膠着する可能性が高いだろう。

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98 Sathorn Square Office Tower 32nd-35th Floor, North Sathorn Road, Silom, Bangrak, Bangkok 10500 Thailand

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