ArayZ No.132 2022年12月発行タイ財閥最新動向 - 変貌を遂げるアジアのコングロマリット
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2022.12.10
2022年10月21日、Financial Action Task Force(FATF:金融活動作業部会)は、ミャンマーをブラック・リスト(FATF勧告19の1「Enhanced Due Diligence(EDD:強化された顧客管理)」の適用)に指定しました。
FATFは、マネロン対策の国際基準策定・履行を担う多国間枠組みとして設立された機関で、加盟国は37ヵ国・地域と2地域機関となっています。FATFは、国際基準の遵守が不十分な国・地域を特定し、改善状況をモニターするため、「行動要請対象の高リスク国・地域(いわゆるブラック・リスト)」、「強化モニタリング対象国・地域(いわゆるグレイ・リスト)」を公表しています。
ミャンマーについては2021年2月の緊急事態宣言以降、FATFに対し、対策の進捗に関する報告書を提出してきたものの、FATF側からは期限を過ぎてもアクションプランの大半の項目の履行がなく、進捗が見られないと判断され、迅速な履行が要求されている状況にありました。
その後、顕著な進展を見せていない、或いは取組への政治的意思が欠如していると判断されたことから、ブラック・リスト国に指定されました。
FATFは、高リスクと特定された全ての国・地域に関して、強化された顧客管理を適用することを加盟国・地域に要請し、かつ全ての国・地域に強く求めています。そして、極めて深刻な場合には、各国・地域は、高リスク国・地域から生じる資金洗浄、テロ資金供与及び拡散金融のリスクから国際金融システムを保護するため、対抗措置の適用を要請されています(現状は北朝鮮・イランのみ)。
FATF勧告19(高リスク国)に指定された場合は、金融機関は、FATFに従って、特定の国の自然人、法人および金融機関との取引において厳格な顧客管理を行うことを求められ、また、適用される厳格な顧客管理の種類は、当該リスクに対して効果的かつ整合的なものでなければならず、各国は、FATFによって求められた場合には、適切な対抗措置を講じることが可能であると規定されています。
今般のミャンマーのブラックリスト入りは、EDD適用の要請であり、「対抗措置の適用の要請(EDDに加えて加盟国・地域にミャンマーにおける支店または駐在員事務所の設置の禁止又は留意を要請する等)」には至っていません。
FATFはミャンマーに対してEDDの適用として以下の観点で顧客管理対策の強化を要請しています。
上記の要請に加えて、ミャンマーへの行動要請には、「強化された顧客管理措置を適用する際は、各国は人道支援や合法的なNPOの活動と送金に対する資金の流れを途絶しないことを確保すべきである」との記載も付記されています。
今回の措置により、直ちに外貨取引ができなくなるわけではありませんが、FATFやその加盟国によるミャンマーとの取引に対する監視強化や、ミャンマー国内の金融会社への監視強化、米国による経済制裁の動向などに影響が出る可能性があるため、今後の動向に注意が必要となります。
佐野 和樹
One Asia Lawyers パートナー弁護士(日本法) ミャンマー・マレーシア統括
2013年からタイで、主に進出支援・登記申請代行・リーガルサポート等を行う「M&A Advisory Co., Ltd.」で3年間勤務。16年よりOne Asia Lawyersの設立に参画し、ミャンマー事務所・マレーシア事務所にて執務を行う。19年にミャンマー人と結婚し、現在はミャンマー在住。ミャンマー・マレーシア統括責任者として、アジア法務全般のアドバイスを提供している。
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THAIBIZ編集部
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