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公開日 2026.05.15
タイでは電気自動車(EV)普及奨励策「EV3.0」の終了を受け、国内でEVの買い控えが広がる中、市場の停滞感を拭おうと中国自動車メーカーが再び攻勢を強めている。首都バンコク近郊できょう25日開幕する自動車展示・販売会「第47回バンコク国際モーターショー」では、中国系ブランドが新車を相次ぎ投入する。中東情勢の悪化に伴う原油高を背景に、中国EV最大手・比亜迪(BYD)の車両をタイで販売するレバー・オートモーティブはNNAとの単独インタビューで「EV需要は確実に高まる」との見方を示した。

タイでは政府が2022年にEV3.0を開始して以降、中国車メーカーが相次いで参入し、EV市場は爆発的に拡大した。中国系EVの台頭に伴い、新車販売に占める日系のシェアは22年の85.4%から25年は69.3%へと縮小している。
一方で、26年2月に新規登録されたEVは前年同月比6.4%減の4,830台(バス・トラック除く)だった。前月比では88.6%減となり、EV3.0の対象車両の登録期限が1月末だったことによる反動を受けて大幅減となった。同月末まで値引きをしていた中国系ブランドのうち、BYDの登録台数は前月比99.3%減のわずか86台にとどまった。
EV市場に不透明感があるものの、中東情勢の悪化を受けた原油価格の上昇は、電動車の豊富なラインアップを持つ中国勢に追い風ともいえる。レバー・オートモーティブのプラターンウォン最高経営責任者(CEO)はNNAに対し、「石油価格の先行きに不透明感が強まれば、(BYDのEV)需要は確実に押し上げられる」とコメントした。一方で、「問題はそれほど単純ではない」とも指摘。原油高は世界のサプライチェーン(供給網)にも影響を及ぼす可能性があり、「EVの需要は増えるが供給面では逆方向の圧力(制約)も強まる。各メーカーの対応力が試される」と言及した。

BYDは今回のモーターショーで新たに4車種を投入し、ラインアップの強化に動く。うち小型EV「ATTO1(アットワン)」の価格は42万9,900バーツ(約210万円)から。2グレードを用意し、上位版も45万9,900バーツと日本円にして200万円台前半に抑えた。
アットワンはBYDが近年投入したモデルの中では最安値となる。25年12月にバンコクで開催された自動車展示・販売会「第42回タイ国際モーターエキスポ2025」で値引きした小型車「ドルフィン」の44万9,900バーツを下回り、普及価格帯のEVとして今後の主力モデルに位置付ける狙いとみられる。

BYDのラインアップはこのほか、◇EVのコンパクトスポーツタイプ多目的車(SUV)「ATTO2(アットツー)」=62万9,900~65万9,900バーツ◇プラグインハイブリッド車(PHV)のSUV「シーライオン5 DM―i」=75万9,900~79万9,900バーツ◇EVセダン「シール6」=89万9,900~94万9,900バーツ――となる。
BYDは中国国内の激しい価格競争下で苦戦を強いられており、成長を求め海外市場に活路を見いだしている。乗用車と商用車を合わせたBYD全体の25年の販売台数は7.7%増の460万2,436台だった。21年以降の年間販売台数の前年比を見ると、21年が73.3%増、22年が2.5倍、23年が61.9%増、24年が41.3%増で、他社のシェアを「圧倒的な低価格」で奪う形で急成長を遂げてきた。だが、25年の増減率は1桁台に落ち込み、BYDの成長が曲がり角を迎えたことを示しているともいえる。

タイは東南アジアのEV市場の先行指標の1つとされる。BYDにとってもタイでどこまで販売を伸ばせるかは、今後の海外開拓の焦点となりそうだ。

中国メーカーから新車ラッシュ
23日のプレスデーに会場を巡ると、中国メーカーは新型車発表に熱弁を振るっていた。中国勢はEVの新型モデルを相次ぎ投入することで、EV3.0の終了に伴う市場の停滞感を払拭したい考えだ。EVに加え、ハイブリッド車(HV)やPHVなど商品ラインアップを広げる動きも目立った。

タイで「MG(名爵)」ブランド車を販売するMGセールス(タイランド)は23日、多目的車(MPV)の新型EV「MGマクサス9 V+」と小型EV「MG4」の新モデルを発表した。同社の徐崟社長はEV、HV、内燃機関車(ICEV)の3種類のパワートレインを並行展開する戦略を掲げ、商品ラインアップの拡充を進める方針を示した。26年のタイでの販売目標は3万台、シェア5%の獲得を掲げ、長期的にはタイ市場で販売上位3ブランド入りを目指す。
奇瑞汽車(チェリー)は小型EV「チェリーQ」を中国国外で初めて披露した。

チェリーQは1回の充電で最大420キロメートル走行でき、21種類の先進運転支援システム(ADAS)を搭載する。価格は40万~50万バーツになる見通しで、モーターショー期間中(3月25日~4月5日)は2万バーツの値引きを実施する。

奇瑞汽車のタイ法人、オモダ&Jaecoo(タイランド)のビル・チャン副社長は、タイ市場で電動車のラインアップ拡充を進める方針を明らかにした。26年第2四半期(4~6月)には初のレンジエクステンダー式EV(REV)を投入する予定で、第3四半期(7~9月)以降には新たなEVモデル、第4四半期(10~12月)にはPHVの投入を計画する。
同社はタイでEV生産拠点の整備も進めており、現地生産モデルの納車は4月から始める予定。価格面では、SUVのEV「OMODA C5 EV MAX+」の予約をモーターショー期間中に62万9,000バーツ台の特別価格で受け付ける。4月6日以降は64万9,000バーツ台とする予定だ。「JAECOO5 EV MAX+」も同期間中は57万9,000バーツ台の特別価格とし、その後は60万バーツ台に引き上げる見通し。
長城汽車(GWM)のタイ法人、長城汽車タイランドは、SUV「欧拉(ORA)5」のEVとHVの価格を公表した。EVは62万9,000バーツから、HVは70万9,000バーツからに設定し、両モデルとも「プロ」と「ウルトラ」の2グレードを展開する。
長城汽車タイランドのウティコン副社長(マーケティング担当)はNNAなどに対し、ORA5にHVを設定した理由について「このクラスではHVの人気が依然として高い」と説明した。タイではSUV需要が拡大しており、市場全体の約40%を占める最大セグメントとなっているという。
今回公表した価格はEVとHVを合わせて計1,000台までの販売に適用する。納車は5月から始める予定。EVモデルの価格は、EV3.0に続く電動車普及政策「EV3.5」に基づく承認を前提とした予想価格として示した。
(本特集はSirawit Kerdsinchai、Wilairatana Ajariyaporn、Nuttanun Kaewkam、日高希南、帆足有未、丹下詩織が担当しました)
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