最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中
カテゴリー: イベントレポート
公開日 2026.08.05
サイアムクボタは、日本の農業機械大手クボタとタイ最大手財閥サイアム・セメント・グループ(SCG)の合弁により設立され、タイの農業機械化を長年牽引してきた企業だ。トラクター、コンバインともに国内シェアトップクラスを誇り、クボタグループの海外拠点の中でも米国に次ぐ規模を持つ一大拠点でもある。
タイビズは6月29日、日タイ企業間の協業や新規事業の機会を探る「THAIBIZオンサイトビジット」第20回として、サイアムクボタの特別見学会を開催。アマタシティ・チョンブリー工業団地にある同社の工場を訪問した。
目次
イベントは、生産開発部門マネジャーのサタヤナリット氏による「本日はサイアムクボタが導入した技術や生産方式をご覧ください」というウェルカムスピーチで幕を開けた。続いて、コンバインハーベスター生産部門シニアマネジャーのナンタウット氏が登壇し、同社の事業概要を紹介した。アマタシティ工場で生産されるトラクターやコンバインのラインナップ、それぞれの馬力や装備について説明。トラクターについては出荷までに200項目以上の検査による品質の担保を、コンバインについてはメインフレームの溶接から塗装に至る製造プロセスが図解とともに解説された。
続いて説明されたのが、生産現場の改善活動だ。同社の生産方式の柱である「自働化(JIDOKA)」の取り組みが解説された。その一環として紹介されたのが、「無人搬送車(Automated Guided Vehicle/以下、AGV)」や、人工知能(AI)の一分野である「コンピュータービジョン(AIカメラ)」の活用である。たとえば、ブレーキ検査やライトの点灯確認を、人手による作業から自動検査へ切り替えることで効率化を図るだけでなく、トラクター下で作業するスタッフを検知する安全ソリューションとしても機能している。
さらに省人化と効率化を実現しただけでなく、騒音レベルの低減や省エネルギーといった副次的効果も生まれていると総括し、見学前のプレゼンテーションを締めくくった。

続く工場見学では、コンバインとトラクターの生産ラインを視察。プレゼンテーションで紹介された「AGV」や「コンピュータービジョン」が、実際の製造現場でどう機能しているかを見ることができ、同工場における自働化が進む様子がうかがえた。
たとえば、AIカメラによる油漏れ検知や、欠品を防ぐための部品チェック、AGVによる大型部品の搬送など、コンバイン・トラクターの両ラインで自働化が進み、効率化と安全性が図られている。こうした改善の多くが、現場の声から生まれた「社内開発のデジタルトランスフォーメーション(DX)」であるという点に、参加者の多くが関心を寄せていた。
コンバインエリアの見学では、最新のさとうきび専用のモデルを紹介。タイではさとうきびの野焼きが大気汚染の一因とされており、「焼かずに生のまま収穫できるコンバインとして開発した。タイの社会課題解決につながることを望んでいる」と、同社のサステナビリティを見据えた取り組みが語られた。
最後に物流エリアを訪れ、2023年から進めているオートメーション化の取り組みも紹介された。手作業だった頃との比較資料が提示され、作業ミスや事故防止に効果を上げていることが示された。

工場見学の後には、サイアムクボタ社長の谷和典氏、上級副社長のワラポーン氏に加え、製造本部長の福本圭吾氏、ヴィラサック氏を交えた質疑応答の時間が設けられた。参加者からは、改善活動のノウハウから農業分野でのテクノロジー活用まで幅広いテーマの質問が寄せられ、活発なやり取りが交わされた。
Q. 現場主導の改善活動は、他の海外拠点とも共有されているか
A. 各拠点の現地スタッフの教育を重視し、3〜4ヶ月に一度、タイ国内の工場同士で改善事例を共有する機会を設けています。また、海外生産拠点との交流もあり、当社が開発したコンピュータービジョン技術は米国拠点でも採用されています。
Q. 農業人口の減少という課題について
A. 日本の農業人口はここ数年で大きく減少し、現在は就労人口の約2%程度にとどまっています。一方、タイの農業従事者は就労人口の約30%を占めるが、高齢化の流れは日本の後を追う形で進行。機械化や衛星画像分析、栽培ノウハウの導入を通じて、生産性を高めることが重要で、米など対象作物においては生産性を1.5〜2倍以上に引き上げた実績もあります。
Q. 製品出荷後の自動運転への取り組みについて
A. 農業機械の自動運転は、技術的にはある程度確立しています。実装方法は販売時に組み込むか、後付けタイプの2パターンがあり、現状弊社で採用しているのはGPSを使って走行する後付けタイプ。今後、高齢化・労働力減少が進めば、自動運転へのニーズはさらに高まると見ています。

最後に、司会を務めたMediator CEOのガンタトーンより、タイ人スタッフとの信頼関係や組織づくりの秘訣について質問があった。同社の谷社長は「現場から多くのアイデアが上がってくるのが当社の強み。提案があれば、“まずやってみよう”というスタンスを大事にしている」と回答。月2回、マネジメント層が議題を決めずに自由に意見交換する場を設けているという取り組みについても紹介した。
この日の見学会には、製造業のほかにも、IT関連企業や教育研究機関など幅広い分野からの参加があった。イベント最後には名刺交換・ネットワーキングの時間も設けられ、業種の垣根を越えた交流とともに、タイの農業の未来を考える1日となった。

参加者の声 「企業内改善の風土がしっかりでき上がっていて、素晴らしいと感じました」 「普段見ることができない製造ラインを見学でき、お会いすることのない方々ともご挨拶できて大変有意義な時間でした」

THAIBIZ編集部
杉浦亜希子

“現場発”の自働化で推進する、最先端のものづくり 〜サイアムクボタ工場特別見学〜
イベントレポート ー 2026.08.05

ニトリ、東南ア各国30店へ 似鳥会長、「暮らし豊かに」
ニュース ー 2026.07.31

日ASEANの経済成長戦略を加速する 〜官民連携の枠組み「DISG」、共同宣言を採択〜
ASEAN・中国・インドSponsered ー 2026.07.24

月島HD、タイにR&D拠点 ~EPC中心から転換、地場も開拓
ニュース ー 2026.07.24

タイ26位、伸び悩む競争力 〜AI時代の高度人材育成が急務
ニュース ー 2026.07.17

「マツダが74億バーツ投資、MHEV生産強化」「AI診断等が牽引、拡大する医療テック市場」
ニュース ー 2026.07.15