ホルムズ海峡封鎖 なぜタイの燃料不足は解消したのか?

THAIBIZ No.176 2026年8月発行

THAIBIZ No.176 2026年8月発行タイ企業が切り拓く、日本食の新時代

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ホルムズ海峡封鎖 なぜタイの燃料不足は解消したのか?

公開日 2026.08.10

ホルムズ海峡封鎖 なぜタイの燃料不足は解消したのか?

不思議なことが起こっている。3月から4月にかけて、地方都市ではディーゼルがガソリンスタンドから消え、ガソリンも品薄になった。

筆者も普段、自分で車を運転しているが、この時期はガソリンの残量がまだ8割残っているにもかかわらず、不安になって満タンまで給油していた。次に必要な時に給油できないかもしれない、という恐怖があったからだ。

イメージ画像:Magnific

このような状況になったのは、もちろんイランをめぐる軍事衝突によるホルムズ海峡封鎖の影響で、原油が輸入できなくなるとの懸念が広がったことが原因である。しかし、その後の状況には、どうも腑に落ちない点がある。

2月末以降、ホルムズ海峡では商船の通航が大幅に制限され、7月前半時点でも正常な状態には戻っていない。その間、時々「タンカーがホルムズ海峡を通過できた」と報じられることはあった。しかし、それは裏を返せば通過できないのが普通の状況だったことを意味する。

タイは原油消費量の約6割を中東に依存している。ホルムズ海峡が封鎖されれば、その大半が入ってこなくなるはずだ。しかし、4月のソンクランの頃から状況が改善し、価格は上昇したものの、ガソリンスタンドでディーゼルやガソリンが手に入らない、という状況は解消された。

本稿執筆時点で、4月までの月次貿易統計が発表されている。これによると、4月のタイの原油輸入量は約80万リットルで、イラン戦争が始まる前の1月(約50万リットル)と比べて約6割増加した。2月は約30万リットル、3月は1月とほぼ同じ約50万リットルだった。2月の減少は日数の少なさや中国正月の影響が考えられるものの、全体として原油の輸入量は減少しておらず、4月にはむしろ急増した。この結果は、4月に燃料供給が安定してきた状況とも符合している。

では、輸入量が急増した4月にタイはどこから原油を調達したのだろうか。

4月単月の輸入量を見ると、輸入先はアラブ首長国連邦(UAE)、米国、サウジアラビア、アンゴラ、マレーシアの順に多い。UAEからは1月と同程度の量の原油が輸入されている。米国、サウジアラビアは1月比で8割増となった。さらにアンゴラは1〜3月に輸入実績がなかったにもかかわらず、4月に突然第4位の輸入先となった。

ここで大きな疑問が残る。UAEやサウジアラビアにもホルムズ海峡の代替ルートは存在するものの、それだけで4月の輸入増加を十分説明できるのだろうか。この点こそが、冒頭で述べた「腑に落ちない」ポイントである。

一方、一時的に地方都市で枯渇したディーゼルについては、3月に2025年の通年のタイのディーゼル輸入量を上回る量がインドから輸入されている。さらに、3月から4月にかけてはマレーシアや台湾からもディーゼルが輸入されたようだ。この動きも、4月以降にディーゼル不足が解消されてきた状況と符合する。

なお、4月に原油輸入が急増した結果、消費量を上回る量が輸入され、一部は備蓄に回されている。依然として解明できない点は残るものの、少なくとも「ディーゼルやガソリンが買えない」という事態は、当面は起きそうにない。

つまり、貿易統計を見る限り、燃料不足は解消された。しかし、その燃料は一体どこを通ってタイへ届いたのか。この疑問に対する答えは、少なくとも現時点の貿易統計からは見えてこない。

2026年5〜6月の経済・政治関連トピック

タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の5月18日の発表によると、2026年第1四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比+2.8%となり、前期の同+2.5%からやや加速した。投資は公共投資が減速したものの、民間投資が同+10.1%と好調で、投資全体で2015年第1四半期以来の高水準となった。物品輸出は同+17.8%と伸びた一方、輸入が同+33.1%と輸出を上回り、貿易収支(FOBベース)は14四半期ぶりに赤字に転じている。2026年通年の成長率見通しは中東情勢を巡るリスクはあるものの、内需刺激策を背景に同+1.5~2.5%に据え置かれている(図表1)。


経済

タイ投資委員会(BOI)は5月6日の会合で、総額約9,580億バーツに上る6件の大型投資案件を承認した。このうち3件はデータセンターおよびデータホスティングサービス関連で、投資総額は約9,130億バーツに達する。最大案件はTikTok System(Thailand)による約8,420億バーツの投資で、バンコク都、サムットプラカーン県、チャチューンサオ県でサーバーを増設し、データ保存・処理インフラを拡充する。これにより、タイの地域デジタルインフラ拠点としての役割を強化する。また同社は、タイの起業家向けにデジタルリテラシーや電子商取引に関するカリキュラムの開発にも取り組む。

このほか、アラブ首長国連邦(UAE)のDAMAC Group傘下のSkyline Data Center and Cloud Services は、チャチューンサオ県で200メガワットまで対応できるデータセンターを整備するため、約460億バーツを投じる。シンガポールのBridge Data Centres IIO (Thailand)は、チョンブリー県で134メガワット対応のデータセンター事業に約246億バーツを投じる。残る3件は、再生可能エネルギー、循環経済、資源関連産業の案件である。

また同会合では、投資手続きを迅速化する「タイランド・ファスト・パス」の対象として、520億バーツ相当の9案件を追加した。これにより、第1弾の16案件と合わせた対象案件は計25件、投資総額は約2,230億バーツとなった。

さらにBOIは、大規模なデジタル・ハイテク投資の拡大に伴う電力需要に対応するため、エネルギー省およびエネルギー規制委員会(ERC)と、電力供給体制の強化やクリーンエネルギーへのアクセス改善について協議した。具体的には、再生可能エネルギーの直接電力購入契約(Direct PPA)の制度設計、再生可能エネルギー購入制度「Utility Green Tariff 2(UGT2)」の導入、外資企業による太陽光発電設備設置に関する規制緩和、独立系電力供給(IPS)の制度明確化等が議論された。


政治

タイ政府は5月19日の閣議で、4職種の技能労働者の基準賃金を新たに制定することを承認した。今回の対象職種は、フラックス入りワイヤ溶接およびMIG溶接の技術者、オフグリッド型太陽光発電システム設置技術者、産業ロボット整備士で、いずれも次世代産業に関わる職種である。定める基準賃金の日額は550~650バーツ。6月16日に官報掲載され、9月15日に施行される。施行後、基準賃金が制定されている職種の数は、既存の141職種と合わせて145職種となる。なお、基準賃金は職種や技能レベルによって金額が異なり、適用を受けるには、労働省技能開発局が定めた検定試験に合格し、認証を取得する必要がある。

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SBCS Co., Ltd.
Executive Vice President and Advisor

長谷場 純一郎 氏

奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。

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Mail : jhaseba@sbcs.co.th
URL : www.sbcs.co.th
SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

Website : https://www.sbcs.co.th/

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