
カテゴリー: 会計・法務
連載: 知らなきゃ損する!タイビジネス法務 - GVA / TNY法律事務所
公開日 2026.08.10
2026年10月1日から、タイで労働者福祉基金(以下「福祉基金」という)への拠出が開始される。従業員10人以上の事業所を対象とする強制加入の制度であり、多くの在タイ日系企業が対象となる。当初は2025年10月開始の予定であったが1年延期され、今般2026年10月1日からの開始が予定されている。本稿では、この新制度の内容を改めて整理する。
福祉基金は、労働者保護法第130条に基づき、従業員の離職後の生活を支えるために設けられる積立型の制度である。従業員が離職または死亡したとき、積立金・拠出金およびその運用益が払い戻される。社会保険とは別に用意される一時金の積立て、と理解するとわかりやすい。
対象は、従業員10人以上の事業所であり、その事業所の従業員は原則として基金の加入者となる。しかし、次のいずれかの措置を講じている事業所は加入を免れる。
したがって、企業には、①福祉基金へ加入する、②退職積立基金を導入する、③代替措置を設ける、という3つの選択肢がある。
拠出率は、以下のとおり段階的に定められている。
積立基金・代替措置では最低2%の拠出が求められるため、0.25%で足りる福祉基金への加入が、経済的負担は最も軽いといえる。
拠出額は、「賃金×拠出率」で計算されるが、この計算の基礎となる賃金に、社会保険と異なり上限が設けられていない点に注意を要する。社会保険では算定基礎となる賃金に上限があり(2026年から月1万7,500バーツ)、上限を超える部分には保険料がかからない。これに対し福祉基金にはこうした上限がなく、実際の賃金額に率を乗じて算出する可能性があるため、上限に関するルールについては今後の動向を見ていく必要がある。
納付の方法は、積立金を控除した月の翌月15日までに、所定の様式を用いて、事業所の所在地を管轄する県の労働福祉保護事務所へ納付するというものである。期限までに納付しない、または不足があるときは、未納額につき月5%の追徴金が課されるため注意が必要である。
以上のとおり、10人以上の従業員を雇用する在タイ企業は、2026年10月までに、福祉基金・積立基金・代替措置のいずれで対応するかを決め、準備を整えておく必要がある。負担の軽さを重視するなら福祉基金、退職金制度としての厚みを持たせたいなら積立基金または代替措置、と目的に応じて選び分けることになるだろう。

GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
弁護士
公文 大 氏
2021年に大阪市内の法律事務所に入所し、一般民事を含め、様々な法務サービスを提供。活動領域を国際的かつ企業法務サービスに重点を置くことを目指し、2025年1月からGVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.に参画(日本国内ではGVA国際法律事務所に弁護士として所属)。現在は、GVAグループの一員として、タイにおける企業法務(主に予防法務)を中心に、日系企業のタイでの事業展開を法務面から支える。
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