ArayZ No.99 2020年3月発行タイ個人情報保護法
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.03.05
熊本 奈々子●くまもと ななこ
今年の9月で創立107周年を迎えるタイ国日本人会。これまで縁の下の力持ちとして、日系人社会を支えてきたが、高度情報化・デジタル化の波が押し寄せ、大きな変革を迫られている。
「在留邦人が日本人会に求めるニーズが多様化・変化しています。同時に先人が親日国のタイで築いてきた遺産・歴史を守り、信頼を裏切らないよう、百年後にも存続している組織づくりを進めています」と、熊本奈々子氏。
実務を取り仕切る事務局長を務めるが、「予測不可能な時代になったので、何もしないことがリスク」と常にアンテナを高く張り、危機意識を持つ。「在留邦人の数は増えていますが、会員数は伸び悩んでいます。快適で安全な生活を送るための情報なのか、会員同士の交流の場なのか。求められているものが何かを探るために試行錯誤を重ねています」と、同会の存在意義を問い直す。
2018年5月の就任以来、マーケティング志向の事業戦略を描いてきた。外部オブザーバーを登用した「企画推進部」の設立や、LINEや広告媒体を活用した情報発信を皮切りに、在タイ日本大使館・国際協力機構(JⅠCA)といった公的・政府機関などとの連携を強化。法人向けの新サービスや優待店の拡充ほか、会報誌やウェブサイトを会員の目線に合わせて刷新した。
「理事と共に組織改革をどう進めるか頭を悩ませる日々です」と本音をポロリと漏らすが、芽が出始めていることを実感。タイ社会には、日タイ友好関係の促進やボランティア活動などを通じて貢献していく考えだ。
もともと海外志向が強かったという熊本氏。幼少期に外資系企業に勤めていた父親に帯同して米国のニュージャージー州で初めて海外生活を経験した。高校時代にはオレゴン州に1年間留学したが、「小さい保守的な街で日本人は私一人でした」とアジア人であることを自覚。アジアに目が向き始めた大学時代に初めてタイと出会った。「バンコクのスラム街に関心がありましたが、ホームステイ先が富裕層の家庭で貧しい環境とは無縁でした」と貧富の差に衝撃を受けた。
卒業後は大手自動車メーカーに入社し、市場調査などを行うアジア大洋州部の商品企画室に配属された。3年が経ち、「海外で働きたい」という願いが改めて強くなったタイミングに良縁が舞い込んできた。
「アジアのデトロイト」として自動車生産の一大拠点となっていた地域本社であるタイに赴任することになり、新車発表やモーターショー、世界初の二足歩行ロボットや燃料電池車などの先進技術の広報・ブランディングを担当。他のアジア諸国での需要を喚起する訴求活動にも関与した。
赴任するまで管理職の経験がなかったため、「現地化を推進する中、経験のない自分がタイ人スタッフとチームワークをどうやって築くかなどの課題に直面しました。ただ、同じ目線で話し合うことにより、3年半の駐在期間中に心を分かち合えるまでの関係に発展しました」と充実した時期を過ごした。
日本へ帰国後、一旦会社を離職し、中国内陸部で生活した後、再チャレンジ制度で復職しキャリアを継続。40歳で再度転機が訪れ長く勤務した同社を退職、16年にタイ移住を決意。タイ料理教室に通う傍ら、タイ人元同僚と有機玄米農家を支援するボランティア・プロジェクトを立ち上げた。「肩書・モノなどの有形資産よりも、人脈・コト作りといった無形資産の重要性を2年間のキャリアブレイク中に認識しました」と吹っ切れた新しい自分を発見したと振り返る。
現在、多忙な日々を送る熊本氏だが、今後は時間を有効に活用して、傾聴力・心理学など自分自身に必要な知識を取り込むだけでなく、お茶や着付けなど日本の伝統文化を見つめ直す機会を作りたいと意欲を示す。
人生思った通りに進むことがほとんどないと苦笑するが、「楽しみながらやっていきたい」と気負いはない。知的好奇心と情熱を持ち続けながら、自分自身を磨くことを忘れない。
タイ国日本人会
Japanese Association in Thailand
1st Fl. Sathorn Thani Bldg. II, 92/2 North Sathorn Rd., Bangkok 10500
http://www.jat.or.th/
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