カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.08.30
目次
バンコク駐在員事務所 所長 山口陽平(やまぐち ようへい)
ビール系飲料で日本トップシェアを誇るアサヒビール。看板商品の『アサヒスーパードライ』は、タイのビール市場でシェア7割を誇る大手財閥・ブンロート社との提携で2002年から現地生産と販売を行っている。昨年からタイのコンビニエンスストア最大手であるセブンイレブンでの取り扱いを拡大、限定パッケージ商品を販売したほか、きめ細かい泡を付けるグローバルタワーの開発やタイ人が好む卓上用サーバーを積極的に展開するなどの戦略が功を奏し、15年の販売実績は前年比125%、16年1〜4月期は前年比119%を記録した。
順風満帆に見える『アサヒスーパードライ』のタイ市場展開だが、合弁会社を設立した進出当時は結果が振るわず、08年にライセ ンス製造・販売へと形態を変更している。また、タイには時間帯による酒類の販売規制や禁酒日などがあり、13年、15年には酒税が引き上げとなるなど、決して市場そのものが順調だったわけでもない。
所長を務める山口陽平氏が赴任した12年当時、タイ国内の市場在庫は製造後1ヵ月〜6ヵ月程度とバラつきがあったため、『スーパードライ』のクリアな味を実現する軸である〝鮮度〞に着目。「適正在庫」「冷蔵管理」「小容量樽の導入」など、品質の強化に力を注いだことでフレッシュローテーションが進み、より鮮度の高いビールの提供が実現した。
「ブンロート社の商品ポートフォリオは、エコノミーの『リオ』、スタンダードの『シンハー』、プレミアムの『アサヒスーパードライ』 と、カニバリゼーションというよりもむしろ相互補完関係が成立しているという考えです。高価格で鮮度やクオリティを重視する 『アサヒスーパードライ』が、エコノミービールと同じ売り方をしても仕方ありません。〝プレミアム〞、〝都会的〞というブランドイメージを消費者に理解してもらうため、バンコク首都圏に特化したマーケティング活動に切替えたことで、都市部の数字は飛躍的に向上しています」。
山口氏は入社から10年間、港区や新宿区といった東京の激戦区で営業を担当。社内公募で手を挙げた「グローバル・チャレンジャーズ・プログラム」制度で、半年間にわたりタイでフィールドワークを行い立案したビジネスプランを経営陣に提案、その後、駐在という形で再来タイを果たす。
「研修時はタイ人の食生活や飲酒文化・飲用習慣を知るため、たくさんの方にマーケティング調査に協力してもらいました。今の駐在は、この恩をタイに返したいという希望が叶ったかたちです」。
『アサヒスーパードライ』のブランディングポイントとして、山口氏が掲げるのは「プレミアム」、「クオリティ」、そして「シルバー」の3点だ。タイは酒類の広告規制が厳しく、CMや看板広告で商品そのものを映すことができない。加えて、商品ラベルに使用できる文言なども規制されているため、イメージカラーである 「シルバー」から商品を連想してもらい、認知度を上げる〝プル型〞の手法を取っている。コンペティターは緑の『ハイネケン』。山口氏は、「韓国や香港ではマーケットシェアが逆転しました。タイの 富裕層をターゲットに、商品のポテンシャルを最大限に引き出すことでタイでもハイネケンを追い抜いていきたい」と意気込む。
Bang Bua Thongの配送センター。 常時20℃前後で全SKU冷蔵保管・管理している
アサヒビール株式会社
東京都墨田区吾妻橋1-23-1
+81-(0)3-5608-5111
Asahi Breweries, Ltd.
12th Floor, Room No.1213 Qhouse Asoke Building,
66 Sukhumvit 21, North Klongtoey, Wattana, Bangkok 10110
02-264-3348
www.asahibeer.co.jp
THAIBIZ編集部
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