「現地化が進まない」本当の理由とは 〜組織診断で変わる、在タイ日系企業の変革アプローチ

THAIBIZ No.173 2026年5月発行

THAIBIZ No.173 2026年5月発行いま、日本のスタートアップがタイに向かう理由

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「現地化が進まない」本当の理由とは 〜組織診断で変わる、在タイ日系企業の変革アプローチ

公開日 2026.05.11 Sponsored

診断で「何から手を付けるか」を特定

では実際にタイではどのようなデータの特徴があるのだろうか。同社が実施した「東南アジア圏の従業員エンゲージメントに関する調査結果(2024年データ分析)」によると、タイ人従業員の期待度の1位は「内部統合(職場で目標・計画が共有され、一体感が醸成されていること)」(平均3.90)、2位は「組織風土(社内で連携や意思疎通が図れており、一体感が醸成されていること)」(平均3.86)、3位は「支援行動(上司がメンバーの業務や成長の支援を行っていること)」(平均3.84)だ。

タイ人従業員が最も重視しているのは、給与や制度ではなく、「チームとして一体感を持って働けるか」「上司が自分の成長を支えてくれるか」という職場環境の質であることがデータで示されている。

一方で、満足度の順位と照らし合わせると、「会社基盤」「施設環境」「制度待遇」は期待度が高い一方で満足度が低く、いずれも「弱み(高期待・低満足)」の象限に位置する傾向がある。この結果は、タイ人従業員が会社の安定性や環境要因に課題意識があることを示しているという。

さらに注目すべき点がある。タイの調査では「外部適応(職場に対する顧客や関連部署のニーズを把握し、適切に対応している)」と「変革活動(職場をとりまく環境の変化を捉え、未来のための取組みをしている)」が強みの象限に出やすく、タイ人従業員は本来、顧客志向が高く変化への意識も強い。「言われたことしかやらない」という印象は、組織構造や育成機会の欠如が生み出した後天的な状態であり、タイ人固有の特性ではないことがデータからも裏付けられる。

また、「理念戦略」や「事業内容」「継承活動」への期待度は相対的に低い傾向があるが、全領域の期待度の差は0.21と小さく、「無関心」というより「一体感や上司のサポートといった身近な職場環境をより優先している」と考えるのが妥当である。いずれにせよ、同じタイ人従業員でも各組織が抱える課題は一様ではない。

タイ全体の傾向はデータとして有益だが、自社固有の課題を把握せずに施策を打つことは的外れになりかねない。だからこそ、田中氏は「まず診断ありき」を一貫して強調する。データで課題を特定して初めて、「何から手を付けるべきか」という迷いが消え、論理的な変革の道筋が見えてくる。

任期を超えて残る資産「タイ人が自走する日系企業」へ

「真の課題(優先順位)」がデータで特定できたら、次は変革の実行フェーズだ。しかし田中氏が最終的に目指すゴールは、単なる組織改善ではない。「駐在員が帰任した後も、組織が自走し続ける状態を作って渡すことだ。それこそが、駐在員が残すべき最大の資産だ」という。そのために必要なポイントを、同氏は次の5つに整理する(図表4)。

出所:田中氏への取材内容をもとにTHAIBIZ編集部が作成

① 採用:入りたい人ではなく、入って欲しい人を口説く

自社に入りたいと思ってくれている人材を採用するのではなく、「この人になら、組織を任せたい」と思える優秀な人材を口説く採用が求められる。そのためには、採用を現場の問題として扱うのではなく、経営課題として捉え、経営陣が主体となって取り組むことが重要だ。

②育成:単発研修ではなく、実践を伴うトレーニングを通じた育成

駐在員の任期を超えた視点を組織に根付かせるには、タイ人が自ら考え、合意した計画や仕組みを実行していくことが重要だ。日本人が描いた計画を実行させるのではなく、タイ人自身が「自社をどうしていくか」を考えるプロセスそのものが、日本人が去った後も組織を動かし続ける確固たる資産となる。

実際に同社が支援する日系企業では、これまで給与計算や採用実務などオペレーション業務しか担っていなかったタイ人の人事担当者が、自ら「自社の3ヵ年組織計画」を立案し、日本人経営者に直接提案するまでに成長した事例もある。

③制度:就業年数ではなく、成果で評価される仕組づくり

タイでは、一度給与を上げると下げることが難しく、高騰する人件費が経営を圧迫しているという相談が多い。また、会社に数十年所属している役職者が、挑戦を拒み、変化にブレーキをかけているという声も少なくない。

就業年数ではなく、顧客成果に繋がったかどうかで人材が評価され、報酬を得るような制度設計を構築し、時には序列の逆転をも視野に入れた組織づくりが重要だ。

④風土:働きやすさではなく、働きがいのある風土醸成

前述の調査結果では、タイの従業員が会社に求めるものとして、「職場の良好な人間関係」や「安定した会社基盤」の重要度が高いというスコアが出ている。

タイの組織は、何もしなければ、安心・安全・安定な、働きやすい職場にはなるが、逆に言えば、内向きで挑戦を躊躇する組織になりやすいとも言える。現地の自走を促すには、社内の人間関係より顧客志向で、現状維持より時には殻を破る挑戦ができる風土の醸成が重要課題となる。

⑤引き継ぎ:変革を無駄にしない、組織記憶の継承

そしてこれらを実現するために、最後に必要となるピースが、引き継ぎだ。日本企業は3〜5年という任期により、変革が進みづらい構造にある。引き継ぎ期間が1週間ほどのケースもあり、大半の時間が顧客の挨拶回りに割かれ、組織の状態が次の赴任者に伝わらないことも少なくない。

結果として、新任者はそこから1年近くかけて組織の状況を把握することとなる。そもそも3〜5年という限られた任期のうち約1年を組織の状況把握に使うのは、あまりに非効率だ。組織診断の活用等も視野に入れた、効果的な引き継ぎが重要だ。

在タイ日系企業の「次なる使命」

近年、新興国企業の台頭などにより在タイ日系企業のプレゼンスは相対的に低下しつつある。しかし、田中氏は「『やっぱり働くなら日系企業がよい。素敵な組織が多く、働きがいがある』というブランドを再建することは十分に可能だ。ただ生活のためだけに働くのではなく、タイの人々にとって『働くこと自体が楽しい、喜びに変わる』という新しい就労観をタイ社会に創りたい。そのためにはチームジャパンとして、在タイ日系企業全体でそのような魅力的な職場を創り出していかなければならない。それが、タイにおける日系企業の次なる使命だと私は信じている」と展望を語る。

データに基づいた精緻な組織診断から現地化に向けた組織変革の実行まで、一気通貫での支援を強みとする同社。「何から手を付ければよいか」。その問いへの答えは、まず自社の組織を「診る」ことから始まる。


Link and Motivation(Thailand)Co., Ltd.

「モチベーション」や「エンゲージメント」をテーマにした組織課題を総合的に解決する日本発のグローバルコンサルティングファーム。2025年1月、タイを含むアジア4ヵ国に拠点を同時設立。日本で9年連続シェアNo.1の従業員エンゲージメント向上支援クラウド「モチベーションクラウド エンゲージメント」を活用し、在タイ日系企業の組織診断から、制度運用、リーダー・人事育成、風土改革までを一気通貫で伴走支援している。
Website:https://www.lmi.ne.jp
お問い合せフォーム:https://x.gd/HFl7K

THAIBIZ編集部
岡部真由美

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