ArayZ No.116 2021年8月発行タイ農業 振興への道筋
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2021.08.09
2021年1月1日から、ベトナムにおける会社運営上の基本法令である「企業法」の改正法Law No.59/2020/QH14(以下、改正法)が施行された。本稿では会社形態を問わず、改正がなされた点のうち実務上重要なものをいくつか紹介する。
ベトナムでは日本と同様、実務上の慣行として契約締結等の際には、その成立の真正を証するために社印が押印される。
旧法下では、使用する社印を当局に登録することが義務付けられており、登録した社印は国家企業登記ポータルサイト (National Business Registration Portal)上に公開され、同サイトから相手方の社印を確認することができた。
改正法では社印の登録義務がなくなったほか、デジタル署名を使用することが可能であることが明記された(改正法43条1項)。
企業にとっては社印の登録義務がなくなり、紛失時の再登録手続き等の負担が軽くなるため好ましい一方、相手方の使用する社印が簡単に確認できなくなったため、重要な契約については相手方の署名者が法定代表者であるかしっかり確認したり、法定代表者でない場合には委任状の提出を要求したりするなどして、相手方の社印や署名が権限を有するものによって適切になされたものであるか確認することが推奨される。
改正法では、複数選任されている法定代表者の権限分担が定款に明記されていない場合、対外的には、それぞれの法定代表者に会社を代表する全権があるものとして扱われる。また、企業に損害が生じた場合は、各法定代表者が連帯して責任を負うという規定が新設された(改正法12条2項)。
企業法上、最低1名の法定代表者の居住義務がある(改正法12条3項)関係から、実務上、ベトナム現地に1名、日本に1名、合計2名を法定代表者として設けている日系企業も多いと思われるが、定款で権限分担を明確に定めていない場合にはベトナム現地の法定代表者も全権を持った状態になるほか、日本側の法定代表者は関連する損害について連帯して責任を負うことになる。
そのため、内部的に法定代表者間で権限分担している場合には、定款の修正を含めた見直しが必要になると考えられる。コロナ禍で国際的な往来が容易でない面からも、複数の法定代表者が設定されている場合には、その権限分担の再確認が非常に重要であると思料される。
旧法では取締役(株式会社の場合)、監査役会の構成員もしくは監査役、または社長に関する情報に変更があった場合には、当局に報告することが義務付けられていたが、改正法ではこの報告義務が撤廃された。
旧法では、出資者・株主は、企業登録証明書(Enterprise Registration Certificate)が発行された日から90日以内に、全ての定款資本を出資する必要があった。
改正法でも原則は90日以内にすべての定款資本を出資する必要があるが、現物出資をする場合は例えば機械設備など出資対象資産の輸入・運搬、所有権移転にかかる行政手続きに要した期間は、払込期限に算入されないことになった(改正法47条2項、75条2項、113条1項)。
これにより、現物出資の場合に法定の払込期限を徒過してしまうリスクが低減され、法定の払込期限を順守しようとして無理なスケジュールを組むような事態を避けることが可能となる。
松谷 亮
One Asia Lawyers 日系大手のIT企業および化学・電子部品メーカーにて社内弁護士として合計5年間勤務後、2019年よりOne Asia Lawyersベトナム事務所へ入所。クロスボーダーの新規事業開発案件、取引相手との紛争処理案件、知的財産に関する契約交渉、紛争処理案件を数多く経験しており、IT・製造業の法務案件を専門とする。
山本 史
One Asia Lawyersベトナム事務所に駐在。ベトナム国内で10年以上の実務経験を有する。ネイティブレベルのベトナム語を駆使し、現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対して各種法的なサポートを行う。
ArayZ No.116 2021年8月発行タイ農業 振興への道筋
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THAIBIZ編集部
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