公開日 2024.11.29
今年8月中旬以降にタイの各地で発生した洪水は、北部に住む人々の生活に大きな打撃を与えました。土砂崩れなどによる死傷者が出たほか、水が引いた今もなお、住居を失った人々の生活は脅かされ、破壊されたインフラは復興途上です。
そんな中、多くの在タイ日系企業が洪水被災地支援に対する高い貢献意欲を持っていることが、バンコク日本人商工会議所(JCC)による調査で明らかになりました。JCCが10月に行った「JCC会員企業によるタイ北部洪水支援状況の調査」では、回答した93社のうち述べ77社より、「義援金・物資を合わせて総額約3,000万バーツを提供、および提供予定」(※)であることが分かりました。
THAIBIZは10月21日、タイ北部洪水被災地支援金の協力企業の募集を開始。10日間という短い募集期間であったにも関わらず、Toyota Tsusho (Thailand) Co., Ltd. (以下、「豊田通商タイランド」)、Dentsu Soken (Thailand) Limited (以下、「電通総研タイランド」)、ZENSHO (Thailand) Co., Ltd. (以下、「ZENSHOタイランド」)の3社より計35万バーツの支援金が集まりました。
この支援金は国連難民高等弁務官事務所(以下、「UNHCR」)の救援物資として、今回30年ぶりの大洪水に見舞われ今なお苦しい状況が続いているチェンライ県の被災地支援に充てられました。本記事では、在タイ日本国大使館同席のもと11月18日に行った、UNHCRへの支援金贈呈式の様子を報告いたします。
(※)JCC 活動報告「JCC会員企業によるタイ北部洪水支援の状況を調査」(2024年10月17日)
https://www.jcc.or.th/activity/detail/322
贈呈式冒頭では、UNHCRタイランド マルチカントリーオフィスの民間連携オフィサーを務めるアルニー・アッチャクンウィスット氏が、洪水被災地支援への協力に対し感謝の意を述べられました。
続いて、民間連携オフィサーの櫻井有希子氏が、「今現在、紛争や迫害により故郷を追われた難民は世界に約1億2,000万人いる。近年ではウクライナ、ガザ、レバノンと、各地で紛争が勃発し、国連としても対応の難しさを痛感している」とした上で、「UNHCRでは祖国から逃れてきた人たちが国に戻ることができるように、もしくは避難先でなるべく以前と同じような生活ができるように支援を行っている」と説明しました。
櫻井氏によれば、タイでは、1975年からUNHCRの活動がスタート。現在は都市部に10万人弱の難民がおり、UNHCRは彼らの生活基盤を整えるサポートを行っています。さらにタイには、山岳部を中心に50万人以上の無国籍者が存在しています。無国籍者は「庇護されない立場」にあるため、難民と同様に支援が必要だという認識から、UNHCRは無国籍者の支援にも取り組んでいるといいます。
同氏は、チェンライ県の被災地支援活動について「今回のタイ北部大洪水では、UNHCRが支援する移民や無国籍者も大きな被害を受けたことから、緊急支援のプロジェクトを立ち上げた」と経緯を説明。最後に「在タイ日本企業は数が多いため、接点作りに課題感があったが、今回THAIBIZのご協力のもと日本企業と繋がれたことは大きい。皆様のご支援に心より感謝申し上げるとともに、今回が『最初で最後』とならないよう、日本のビジネス界との連携機会を今後も模索し続け、共に国際課題を解決したい」と、継続的な支援協力を呼びかけました。
贈呈式の後は、和やかな雰囲気でフォトセッションが行われました。豊田通商タイランドの前田滋樹社長は「このような機会をいただけて光栄だ。これで最後にせず、これからもタイ社会に貢献したい」と温かい表情でコメントしました。
電通総研タイランドの柄沢賢一社長は「タイの皆さんのご協力があってこそタイでビジネスが展開できているため、タイで困っている人の支援機会があれば今後も参加したい」と、ZENSHOタイランドの西島智義社長は「ZENSHOでは『世界から飢餓と貧困を撲滅する』をポリシーとしているため、タイ社会に対しても何かできないかと考えていた。今回、支援の機会をいただけたことに感謝している」と、それぞれ感想を述べられました。
UNHCRタイランドの活動レポートによれば、チェンライ県の被災地支援活動において、UNHCRは被災住民に水、乾燥食品、照明器具、衛生キットなどを含む1,000個の支援キットを配布。今回の支援金は、この支援キットとして同地域の復興支援に充てられました。
贈呈式での対話は、「日タイの協創は、タイ社会のみならず国際社会への価値創造にも繋がる」ことを改めて認識する機会となりました。THAIBIZは今後も日タイ企業の架け橋として、社会貢献活動にも積極的に取り組んでまいります。
THAIBIZ編集部
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