カテゴリー: ニュース
公開日 2024.05.20
5月15日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、タイで再生可能エネルギー事業などを手掛けるカンクン・エンジニアリング(GUNKUL)は、3年前に参入した大麻(カンナビス、ヘンプ)事業について、セター政権による大麻の麻薬リストへの再掲載方針の表明を受けて政策の明確化を見守るため、同事業への約20億バーツの新規投資計画を凍結する方針を明らかにした。カンクンは子会社の「GKヘンプ・グループ」を通じて、これまでに生産設備建設など大麻事業に5億バーツを投資してきた。
カンクンのソパチャ会長は、「当局は大麻を購入できる年齢を制限、特定の地域のみでの販売に限定することで、大麻の医療目的、娯楽目的の使用方法を明確化する規制を導入すべきだ」と強調した。カンナビスには多くの治療に使われるカンナビジオール(CBD)が含まれている。
大麻政策をめぐっては、プラユット前政権が2022年に大麻成分をさまざまな用途に活用することで大麻関連産業の発展を期待して大麻を麻薬リストから削除、栽培などを自由化した。しかし、法制度があいまいだったことから180度の方針転換を求める動きにつながっている。
カンクンは先に、ナコンラチャシマ県の風力発電所がある200ライ(1ライ=1600平方メートル)の土地に大麻農園と加工施設を開設し、カンナビスを日量1.1トン生産する計画を発表していた。カンクンの大麻事業の売上高は昨年が400万バーツで、2024年には1億バーツになると予想していた。今年第1四半期の売上高は1000万バーツだった。
ソパチャ会長は、カンクンはCBDオイルを医薬品、食品、化粧品の成分として利用することを目指していたが、政府はCBD成分の利用をごく少量しか認めていないことから、製品開発を阻害していると批判。ただ、カンクンの売上高の99%はエネルギーなどの中核事業からで、タイ政府の大麻政策の変更は業績には影響はないとの見通しを示した。さらに、政府方針の逆戻りは大麻製品の小売業者の投資中止や廃業につながる可能性はあるものの、「もし、政府が大麻管理法を施行できたら大麻エコノミーを構築、チャンスに変えられるだろう」と訴えた。
17日付バンコク・ポスト(3面)によると、大麻賛成グループは16日、タイ保健省で、大麻を麻薬リストに再掲載する政策はカンナビス成分を使った伝統的医療への一般市民のアクセスを阻害するとして、同政策を取りやめるよう求めるデモを行った。この日集まった約50の大麻賛成グループは大麻再禁止方針に反対する一方で、保健省に対して新たな大麻規正法を導入することを求めた。カンナビス・フューチャー・ネットワークのプラシチャイ事務局長は、保健省は最終決定前に大麻への賛成、反対意見を調査する委員会を設置すべきだと主張。大麻を危険だと決めつける前にその証拠を精査すべきだと訴えた。
インラック政権がコメ担保融資制度に伴い買い取ったものの、依然、在庫として大量に残っている低品質米の売却をめぐる報道が続いている。5月16日付のバンコク・ポスト(ビジネス2面)によると、タイのプームタム商務相は今月初め、コメの輸出業者など民間企業や関係政府機関の代表者やメディアとともに東北部スリン県にある2つのコメ倉庫を訪れ、10年以上も在庫として保管されているコメが食用可能な品質なのかを判定するサンプルテストを行った。この古米在庫は14万6000袋、合計1万5000トンに達する。
アナリストや活動家らは、プームタム商務相に対しこの古米にはアフラトキシン(カビ毒)や化学物質が含まれている可能性があり、消費者の健康に害があると警告している。学者らは、在庫一掃まで最長3年間保管されている日本の事例では湿度と気温(13度)を厳しく管理しているが、タイの倉庫ではそうではないと指摘。一方、商務相は両倉庫のコメは慎重に保管され、ひんぱんに臭化メチルで燻蒸消毒しており、倉庫自体も鳥や雨水の侵入を防ぐよう完全に密閉されていると主張。しかし、売却反対派は、この古米には臭化メチルなどが残存している可能性があり、健康被害があるとの日本の専門家の研究に言及している。
一方、この古米入札売却は、この在庫米が安全であり、政府収入につながることで、インラック氏の帰国を支援するという政治的動機があるのではとの批判もある。インラック政権のコメ担保融資制度は2011~2014年まで実施され、タイの歴史上、最大のコメ市場への介入となった。インラック氏は、同制度の一環である政府間の不正売買を止められなかったとして、同氏に最高裁が禁固5年の判決を言い渡す直前の2017年にタイから逃亡した。 10年以上も放置されていたこの在庫米について、突然、売却の動きがでてきたのは、明らかにインラック氏の帰国、復権の地ならし的な政治的動機がありそうだ。
THAIBIZ編集部
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