「現地化が進まない」本当の理由とは 〜組織診断で変わる、在タイ日系企業の変革アプローチ

THAIBIZ No.173 2026年5月発行

THAIBIZ No.173 2026年5月発行いま、日本のスタートアップがタイに向かう理由

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「現地化が進まない」本当の理由とは 〜組織診断で変わる、在タイ日系企業の変革アプローチ

公開日 2026.05.11 Sponsored

タイ市場は成熟局面に入り、在タイ日系企業には規模拡大だけでなく「持続性」と「自律性」を備えた組織づくりが求められる時代となった。しかし、「優秀な若手ほど辞めていく」「指示待ちのまま幹部が育たない」といった組織の壁にぶつかりながら、何から手を付けるべきか見えない企業は多い。

組織・人事のコンサルティングファーム、リンクアンドモチベーション(タイランド)代表の田中峻氏による解説をもとに、在タイ日系企業に共通する組織課題の構造と、データ起点の変革アプローチを探る。

タイ市場の変化と拠点経営の現在地

田中 峻 氏
Link and Motivation(Thailand)Co., Ltd. 代表取締役社長

2011年株式会社リンクアンドモチベーション入社。2020年より中堅・ベンチャー企業および大手企業向けクラウド部門のグループマネジャーを歴任。2023年に大手企業向けクラウド部門、2024年に同コンサルティング部門のカンパニー長を経て、2025年より現職。

日本企業のタイ進出の歴史は古く、1960年代から賃金上昇や労働力不足により海外へ生産拠点を移行する企業が増えはじめた。その動きは1985年のプラザ合意以降に加速し、タイは日系製造業の一大集積地となった。

しかし、進出から半世紀以上が経過した今、タイのGDP成長率は低迷し、「何もしなくても市場全体が勝手に伸びる」時代は終わった。日本とタイの賃金格差も縮小し、安い労働力を前提としたビジネスモデルそのものが限界を迎えている。

「こうした事業環境の成熟化に伴い、在タイ日系企業の内部では、これまでにない深刻な組織の課題が浮き彫りになっている。『40歳以上のベテラン層は辞めないが、30代の優秀な若手層が次々と辞めていく』『タイ人スタッフに課題の改善を求めても、上辺だけの意見しか出てこない』『日本人駐在員が指示を出さないと現場が動かない』これらの組織課題に直面している在タイ日系企業の経営者・管理職は少なくない」と田中氏は指摘する。

日本人駐在員にとって、タイは親日国で住みやすく、欧米などと比較しても「最高の職場環境」と称されてきた。そのため、「組織課題にメスを入れなくても事業が回り、自分の駐在期間(3〜5年)はとりあえず現状維持でやり過ごすという時代が長く続いた」と同氏は続ける。

しかし、そうした現状維持のツケは今、組織の停滞や優秀層の流出という形で重くのしかかっている。現状の延長線上には未来がないと気づきながらも、どこから手を付ければよいか分からない。それが、多くの在タイ日系企業が直面している現在地ではないだろうか。

現地化が進まない在タイ日系企業の共通点

多くの在タイ日系企業では、駐在員を減らし現地化を進める動きが加速している。しかし、「いざ権限委譲しようにも、任せられるタイ人幹部が育っていない」と頭を抱える経営者は後を絶たない。なぜ日系企業では現地化が進まないのか。田中氏によると、そこには日系企業が構造的に抱える4つの共通点があるという(図表1)。

出所:田中氏への取材内容をもとにTHAIBIZ編集部が作成

①駐在員の赴任・帰任サイクルが組織をリセットする

一般的に駐在員の任期は3〜5年。人材育成には最低でも5年はかかるため、多くの駐在員は「自分の任期中には成果が出ない」と考え、育成を後回しにしてしまう。優秀な駐在員ほど、自ら現場の仕事を巻き取ってしまう傾向もある。

一方、タイ人スタッフ側も「どうせ数年でトップが変わり、方針もリセットされる。強い意志を持って提案しても仕方がない」と諦めているケースが多い。双方が「どうせ変わる」と思っているこのすれ違いこそが、組織の成長を止めている最大の要因の一つだ。

②オペレーション重視の組織文化が育成の土台を奪う

在タイ日系企業の中心を担う製造業では、品質・安全・コストの維持が最優先課題であり、現場のタイ人スタッフには長年「マニュアル通りの正確なオペレーション」が求められてきた。これは製造業として当然の合理的判断だった。

しかし、その結果として「現行モデルを変えることはよしとされない」風土が組織に根付いていった。今の日本人が感じる「タイ人は言われたことしかやらない」という印象は、過去の日本人が「言われたことしかやらせなかった」結果として生み出された文化的蓄積といえる。急に「生産性を上げろ」「課題を自ら解決しろ」と求めても、仮説を立てる訓練を受けていない現場が動けないのは、個人の問題というよりは構造の問題である。

③「アットホームで優しい」企業風土が優秀層を流出させる

日系企業の多くは、アットホームで人を辞めさせない企業風土を持っている。一方で、評価は横並びになりがちである。安定を求める層には魅力的であり、離職率を低く保つ点では強みになるが、裏を返せば「挑戦する環境がない」「成果を出しても正当に評価されない」ことを意味する。結果として、成長意欲の高いハイパフォーマーから見切りをつけられ、他社へ流出する原因となっている。

④マネジメント経験の不足と言語の壁が「情報の断絶」を生む

日本でマネジメント経験がないまま、タイで役職に就く駐在員も多く、さらに言語の壁が立ちはだかる。通訳を介した複雑な指示や育成が「面倒だ」と感じ、結果的に日本人が自ら実務を抱え込むことも少なくない。上からの指示を現場に落とすことはできても、現場の状況やタイ人の本音を吸い上げることができないマネジメント不全が、組織の停滞を招いている。

THAIBIZ編集部
岡部真由美

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