デザインと組織の力で挑む、紙パッケージの新たな価値創造 〜サイアム・トッパン・パッケージング 河田悟社長

THAIBIZ No.173 2026年5月発行

THAIBIZ No.173 2026年5月発行いま、日本のスタートアップがタイに向かう理由

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デザインと組織の力で挑む、紙パッケージの新たな価値創造 〜サイアム・トッパン・パッケージング 河田悟社長

公開日 2026.05.11

パッケージは単なる「包む資材」なのか。印刷大手の凸版印刷とサイアム・セメント・グループ(SCG)の合弁として設立されたサイアム・トッパン・パッケージング。同社は紙パッケージの設計・製造にとどまらず、顧客の“困りごと”を起点とした提案を通じて、その役割を広げてきた。デザインによる付加価値の創出、ローカル人材が自走する組織づくりを軸に、紙パッケージの新たな価値に挑む同社の取り組みについて、河田悟社長に話を聞いた。

(インタビューは3月18日、聞き手:THAIBIZ編集部)

 サイアム・トッパン・パッケージングの河田悟社長

紙パッケージメーカーとしての出発

Q. タイで事業を始めたきっかけは

河田社長:1990年に製紙事業を展開していたSCGから、紙を活用したパッケージ事業の技術支援要請があり、凸版印刷がその技術提供を行ったことがきっかけでした。その後、2000年に出資比率を変更、凸版印刷が51%、SCGが49%を出資し、紙パッケージの設計・製造を手がけています。

Q. SCGとの現在までの関係は

河田社長:当時、パッケージを含む印刷分野は外資がメジャーを持つことができない業種でしたが、SCGの支援もあり、2000年に制度が見直され、凸版印刷が主導する形で事業を展開できるようになりました。その経緯もあり、SCGには非常に感謝しています。現在も月次定例会で経営層同士が顔を合わせるなど、長く密接なパートナーシップを続けています。

「つくる」から「解決する」へ広がる役割

Q. 事業はどのように変化しているか

河田社長:紙パッケージの製造が主軸である点は変わりませんが、現在は設計や提案まで含めた事業へと広がっています。単に「つくる」のではなく、顧客の製品価値をどう高めるか、という視点で、設計・サンプル作成・量産までを一貫して対応しています。顧客はグローバル企業やローカル企業が中心で、日系企業は3割程度です。多様な企業との取引を通じて、ニーズに応じた提案力を強化してきました。

Q. その中で重視している考え方は

河田社長:顧客の“困りごと”を起点に提案することを重視しています。例えば「開けにくい」「詰めにくい」といった顧客の現場の課題に対して、設計段階から改善提案を行い、使いやすさや作業効率の向上につなげています。

多くの場合、顧客から基本設計は提示されますが、そこに“最後のひと手間”の工夫を加えるのが当社の役割です。パッケージそのものだけでなく、「どう使われるか」まで含めて設計することが、当社の強みだと考えています。

デザインが変えるパッケージの可能性

Q. サービスの強みはどこにあるか

河田社長:デザインから提案できる点です。社内にデザイナーを抱え、構造からグラフィックまで含めて、「どう見せ、どう使ってもらうか」を設計しています。仕様通りに製造するのではなく、使いやすさやその先の表現まで踏み込んだ提案を行うことを常に意識しています。

また、こうした強みを形にするため、販売用とは別に自社でコンセプトからパッケージを企画・制作。毎年ワールドスター・パッケージング・アワードに応募し、2020年からほぼ毎年受賞しています。

2024年のワールドスター・パッケージング・アワードで受賞した、リユースをコンセプトにした作品
写真提供:サイアム・トッパン・パッケージング

Q. 紙パッケージの価値をどのように捉えているか

河田社長:紙パッケージは最終的に捨てるもので、「ゴミ」だと言ってしまえばそれまでかもしれません。しかし、本当にそれだけでしょうか。例えば、パッケージが双六(すごろく)に形を変えたり、ランタンや小物入れなどのインテリアに再利用できれば、紙パッケージを捨てずに手元に残したくなります。

このように、紙パッケージは「デザインの力」で役割を広げることができ、サステナブルな世界を作り出せる領域だと考えています。

LEDを入れるとランタンとして再利用できる枕ケース
写真提供:サイアム・トッパン・パッケージング

自走する組織をつくるアドバイザー型経営

Q. 日本人駐在員の役割をどのように捉えているか

河田社長:当社では、日本人は「アドバイザー」という位置づけです。いずれ帰任する以上、日本人がいないと回らない組織では意味がありません。現地のメンバーだけで自走できる状態をつくることが極めて重要だと考えています。そのため、指示を出すのではなく、方向性を示し、必要に応じて軌道修正を行う役割に徹しています。

Q. 組織の一体感をどのように高めているか

河田社長:従業員は約650人、派遣社員も含めると約900人規模になります。これだけの規模では、一体感は自然には生まれません。実際、赴任当初は営業と製造の間に距離がありました。そこで、5年前から毎週金曜日に営業・製造・品質・生産管理の各部門マネジャーが集まる場を設け、関係改善に取り組んできました。マネジャー間の関係が変わると、組織全体も変わります。現在もこの会議は継続しており、品質や納期の改善にもつながっています。

加えて、HR主導で月1回の社内イベントを実施し、部門や立場、国を越えたコミュニケーションの機会をつくっています。

Q. 人材育成面の取り組みは

河田社長:2008年からタイ人社員を日本に派遣する「トレーニー制度」を継続しています。製造技術者を毎年3名送り出し、3年間、日本の現場で経験を積ませています。スキルに加え、仕事への向き合い方や規律意識も高まり、その姿勢が帰任後に周囲へ波及することで、組織全体に良い循環が生まれています。こうした取り組みもあり、今年はタイ人事管理協会(PMAT)が主催する「PEOPLE MANAGEMENT AWARD 2025」で金賞を受賞しました。

タイ市場動向と次の成長戦略

Q. 現在の市場環境について

河田社長:ペット業界は伸びており、関連するパッケージ需要も拡大しています。実際、当社の売上の約10%をペットケア関連が占めています。一方で、人口構造や消費の変化を踏まえると、従来と同じ事業だけで成長し続けるのは難しくなっています。

その中で、当社としては紙パッケージを軸にしながら、その前後の工程にも踏み込んでいきたいと考えています。例えば、充填や梱包まで含めて支援する「トータルパッケージングサービス」などです。

Q. 今後の事業における展望は

河田社長:まずは、既存事業だけでは長期的な成長は難しいという危機感をチームと共有することが重要です。その上で、これまで培ってきた組織力とデザインの提案力を生かしながら、顧客の課題にどこまで応えられるかが、今後の鍵になると考えています。

Interviewee Profile

SIAM TOPPAN PACKAGING CO., LTD.
河田悟 社長

凸版印刷入社後、4年間のイギリス駐在を含む30年、エレクトロニクス関連事業に従事。その後事業再編に携わり、2016年に来タイ、現職。約10年にわたりタイ拠点の経営を担う。

>>本連載「在タイ日系企業経営者インタビュー」の記事一覧はこちら

THAIBIZ編集部
和島美緒

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