
連載: タイ発日系製造業チームで挑むGX
公開日 2026.08.10 Sponsored
本連載では、在タイ日系製造業の中小企業が結集し、タイの食品製造業におけるグリーントランスフォーメーション(GX)の実装に挑むプロジェクト「RaiWay(ライウェイ)」に参画する各社の技術や参画メリットを紹介しながら、一社単独ではなく「チームで挑むGX」の可能性とその行方を追ってきた。
最終回では、RaiWayを牽引するエンジニアリング商社YN2-Tech(Thailand)Co., Ltd.(以下、YN2-Tech)の中村亮太社長に、RaiWay誕生の経緯や現在地、そして同氏がRaiWayに託す思いについて話を聞いた。
目次

タイでは農業・食品加工が主要産業の一つですが、加工過程で発生する廃棄物の削減、資源の有効活用、輸送コストの削減、温室効果ガス(GHG)排出量の削減が重要なテーマとなっています。例えばパイナップルでは、原材料の約60%が廃棄物になるという現状があり、これらを価値ある素材や製品へと転換することが求められています。
こうした課題意識のもと昨年、タイを中心とした農業・食品加工分野におけるGXの実装を目指し、日系製造業の技術を集結させる共創型プロジェクトRaiWayを立ち上げました。「Rai」は食料や自然資源の源、「Way」は新たな価値を創造する技術の道を意味しています。タイの農産物の付加価値を最大化すると同時に、農業分野が抱える収益性や生産性の課題を解決したいという思いも込められています。
単独企業ではなく各社の専門技術を結集し、最適なソリューションを組み合わせながら、現場で実装できるGXの実現を目指しています。
当社および親会社である中村機工が、これまで培ってきた日本・タイをはじめとするアジアのネットワークを活用し、RaiWayの理念に共感する企業・団体へ参画を呼びかけています。その結果、食品加工機械メーカー、脱水機メーカー、濃縮・乾燥装置メーカー、3Dプリンターメーカー、GHG排出量測定ソリューション企業など計8社(2026年6月時点)に加え、タイの大学・高専・研究機関も参画しています。
代表例として、本連載に登場したスエヒロEPM、川口精機、旭光電機などがあり、それぞれ大型搾油機や2軸エクストルーダー、スクリュープレス脱水機、電力使用量の可視化ソリューション「wattXplorer(ワットエクスプローラ)」などを提供しています。
当初は、日本の優れた機械や技術をタイへ紹介することが中心でした。しかし実際に提案を進める中で、多くの顧客が求めているのは個別の機械や技術ではなく、現地での実証実験技術選定からプロセス設計、さらには異なる設備同士の連携までを含めた包括的な提案であることが分かりました。また、それらを単一の事業者が一括して提供・管理することへのニーズも高いことが見えてきました。
こうしたニーズを受けて生まれたのが、「エンジニアリング・コーディネーション」というコンセプトです。各分野の専門企業が持つ技術や設備を組み合わせ、顧客にとって最適なソリューションを企画から実証実験、周辺設備の導入支援までワンストップで提供することを目指しています。
現在のRaiWayは、このコンセプトのもと、廃棄物や二酸化炭素(CO2)の排出削減から、素材化、製品化までを一連の流れとして示す実証型プロジェクトへと進化しています。
その結果、単体の技術では実現できなかった新たな価値創出が可能になりつつあります。例えば、パイナップル残さを脱水・濃縮・乾燥し、3Dプリンター用素材として活用することで、食品廃棄物を付加価値の高い製品へ転換する道筋が見えてきました。また、CO2排出量測定を組み合わせることで、環境価値を定量的に評価できるようになっています。

日本企業は品質や安全性、技術の完成度を重視する一方、タイ市場ではスピードやコスト、メンテナンス性、そして現場での分かりやすさが重視されることを実感しました。そのため、技術の高さを訴求するだけでなく、サンプルやデモ、現場での説明を通じて、導入効果を具体的かつ分かりやすく示すことを意識しています。
また、食品関連タイ企業やタイ人の皆さんの人間力や技術力、環境意識の高さにも日々驚かされます。特に農業・食品加工はタイの基幹産業であり、現場には高い熱量と、豊富な知見や経験が蓄積されています。日本企業が学ぶべき点も数多くあり、技術を持ち込むだけではなく、現地の知恵やニーズを深く理解しながら共に価値を創る姿勢が求められていると感じています。
単なるエンジニアリング商社として「機械を販売する」「開発支援をする」だけの発想では、タイの市場や地域社会から真に信頼される存在にはなれません。重要なのは、地域社会に根差し、タイが抱える課題の解決に本気で向き合うことです。そのためには、私たちの価値観をアップデートするだけでなく、現地を深く理解するタイ人が主体的に動ける体制の構築が欠かせません。
こうした考えのもと、当社では社内の意識改革に加え、必要に応じて組織体制や人員配置の見直しにも取り組んできました。また、RaiWayへの参画企業の募集や当社の採用活動においても、こうした価値観に共感し、長期的な視点でタイ社会に貢献したいと考える企業や人材との出会いを大切にしています。
その結果、当社の新しい企業文化が育まれています。タイ人メンバーが「自分ごと」として業務に取り組むことで、長期的な視点での改革が進み、会社全体の成長にもつながっていると感じています。
RaiWayを単なる展示やデモンストレーションの場ではなく、タイの農業・食品加工事業者が実際に活用できるGX実装プラットフォームへと発展させ、将来的にはタイでの新規株式公開(IPO)を目指しています。その実現に向け、 昨年立ち上げた新工場を活用し、実証実験からサンプル評価、共同開発、設備導入、さらにはCO2削減効果の可視化までを一貫して支援できる体制の構築に注力していきます。

日本はシステム構築力や精密な技術に強みを持つ一方、タイは柔軟な対応力や多様な原材料、周辺国との距離感に強みがあります。両者の強みを掛け合わせることで、机上のアイデアにとどまらず、実際の事業現場で活用できるGXソリューションを生み出せると信じています。
最終的には、タイの農業・食品加工産業において、廃棄物が単なるコストではなく新たな価値を生み出す資源として認識される社会の実現を目指しています。そして、タイで構築したこのモデルをASEANやグローバル・サウス諸国へ展開し、持続可能な産業づくりに貢献していきたいと考えています。

YN2-Tech (Thailand)Co., Ltd.
「新たに挑戦する、ものづくり企業の全方位支援」をビジョンに掲げるエンジニアリング商社。設計支援、工作機械、IoT関連、樹脂成形品、治具全般、省力化機器、3Dソリューションなど多様な製品を取り扱うほか、販路拡大やプロモーション展開など幅広いサービスを展開。
Website:https://yn2-tech.com
E-mail:info@yn2.co.th

THAIBIZ編集部
白井恵里子


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