公開日 2023.05.30
タイのエネルギー省は5月17~19日、国営タイ石油会社(PTT)、PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)、タイ発電公社(EGAT)、イベント企画会社DMGイベンツと共同で「フューチャー・エナジー・アジア(FEA)」と「フューチャー・モビリティー・アジア(FMM)」の2つの展示イベントをクイーンシリキット国際会議場(QSNCC)で開催した。FEAは今回が5回目、FMMは昨年に続き2回目で、事前予想来場者数は約70カ国から1万8000人以上。世界のエネルギー転換に対するアジアの貢献やモビリティーの現在と未来などをテーマに約350人の企業トップ、政策当局者、技術専門家による講演やディスカッションが行われ、特に脱炭素と温室効果ガス排出ゼロ(ネットゼロ)に向けた取り組みを強調するイベントともなった。
FEAでは世界のトップ企業によるクリーンエネルギーやネットゼロ達成に向けたイノベーションと製品が展示・紹介され、エネルギー転換のさまざまな技術的なセッションも行われた。展示会場では、「再生可能エネルギー」「液化天然ガス(LNG)・ガス・CO2回収・貯留(CCS)」「水素・アンモニア」「発電・グリッド近代化」の4つの分野別に出展各社が自社技術を披露した。
一方、FMAでは未来のクリーンモビリティをコンセプトとするソリューション、イノベーションが紹介された。具体的には、2輪および4輪の電動車(EV)、電動バス、関連ソフトウェア、自動走行技術、自律飛行が可能なAAV(autonomous aerial vehicle)など。このうち、ベトナム複合企業ビングループ傘下のビンファストが自社製EV3車を出展、タイ国内販売開始を目指していることが明らかになった。
17日に行われた開会式ではまず、タイ・エネルギー省のウィーラパット副次官が登壇。「今回のFEAとFMAはタイが2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素)、2065年までに温室効果ガス排出量ゼロの目標を達成を支援するのが狙いだ。また、エネルギーと自動車業界の連携ネットワークを構築し、①エネルギー安全保障を確保②安価なエネルギーへのアクセス確保③環境の持続可能性の実現-という3つのチャレンジを克服するためのイベントだ」と強調。さらに、「東南アジアの自動車市場は2030年には世界第4位の規模になる見込みで、一方、東南アジアのエネルギー需要は3倍になると予想されている。こうした状況に備え、タイを東南アジア地域のエネルギーと自動車のハブにするために全力で取り組む」とアピールした。
また、運営団体のDMGイベンツのクリストファー・ハドソン社長は「ネットゼロへの道は、従来の化石燃料を再生可能エネルギーに置き換えるだけではない。エネルギーシステムを再考し、エネルギーの効率やアクセス向上とともに、新しい技術も導入する」と述べた。
続いて、PTTの下流事業担当のプラソン上級副社長はタイを地域の液化天然ガス(LNG)の取引のハブにすることを改めて主張。「低炭素経済への移行は、環境問題だけでなく、経済的なチャンスでもある。クリーンエネルギーの導入は経済成長や新規雇用につながり、エネルギー安全保障を強化できる。PTTグループの電力会社グローバル・パワー・シナジー(GPSC)では再生可能発電量を現在の2769メガワット(MW)から2030年に1万2000MWのにする目標がある。台湾やインドなど世界各地で、風力発電・太陽光発電事業への投資に力を入れていく。さらに、タイのクリーンエネルギー産業を強化するために、例えば、蓄電池のバリューチェーン強化をビジネスとする合弁会社ヌウォヴォ・プラス(Nuovo Plus)やEVのバリューチェーン全体をカバーするアルン・プラス(Arun Plus)などを設立した」と報告した。
さらに、PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)の経営戦略部門担当のタナシット上級副社長は、「2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)以降、地球の平均気温の上昇を1.5度までに抑えるため温室効果ガスの排出量を削減する目標を設定した。世界は低炭素社会へと向かっており、地球温暖化の重要性は誰もが知っている。しかし、S&Pグローバルの調査によると、現状シナリオのままでは2.4度上昇する可能性が高い。このため、二酸化炭素(CO2)排出削減を加速する必要があり、再生可能エネルギーへの転換が重要だ。われわれは2050年までのネットゼロ実現を目標に掲げ、天然ガスの比率を上げるとともに、新しいエネルギーへの投資機会を探っている。そして、将来世代に良い環境を維持するために、温室効果ガス排出を削減するイノベーションや技術なども活用する」と訴えた。
また、タイ発電公社(EGAT)のプラスートサック副総裁(戦略担当)は「2050年までのカーボンニュートラル達成を目指している。一方でエネルギー安全保障もわれわれのミッションであり、これを実現するため、高度なイノベーションと技術による発電と送電網を整備する。一方、エネルギー転換を支援するさまざまなプロジェクトを展開している。例えば、ダム湖での浮体式太陽光発電や、EV充電ステーション、ランパン県にあるメーモ発電所での二酸化炭素(CO2)回収・再利用・貯留(CCUS)プロジェクなどだ。気候変動の影響を低減するため、各セクターの協力が必要だ。われわれもあらゆる分野から、共にカーボンニュートラルを目指すパートナーの協力を歓迎する」と強調した。
TJRI編集部
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